第九話 大人の悩み
少年たちがすんでいる街『フライン』から山を越え谷を越え遠く離れた土地の中心……静寂に寝静まった民家とまだ盛んに賑わう繁華街が照らす
しかし一際目立つのは中心に建てられた壁のさらに中心部に城がそびえ立つ……人はその城を『王城』と呼ぶ
王城を中心とした王都の一部にその男はいた
「やっと先の交戦の処理も終わりそろそろ帰れそうですな。オルれシアン元帥閣下?」
書斎に籠り部下と共に夜が暮れるまで『ノスト帝国』の小規模ないざこざが詰め込まれている書類の処理をしていた私の元にドアから顔を出して来るのは以来昔からの友でありヨル嬢の父親であるマルクが前もって約束を酌み交わしていた集まりのために尋ねてきた
「元帥閣下なんていうのはやめろ。公共の場なからいざ知らずここには私たち以外誰もいないんだ。……しかしもうこんな時間か……気づかなかったな。」
私は書類をある程度まとめ整えながら書類などを保管している棚の中に魔法で鍵をかけてから
私が座っていた前にある来客用の椅子の上にあらかじめ用意していた酒と瓶を並べる
マルクと私は四つあった椅子の一つに沈むように腰掛け お互い顔を見るために対面に座る
「……」
私たちはそばに置いた高級な酒を堪能しお互いの近況状況にまで話が広がった
私は腕を前に出し手を組みながらマルクに前から思っていた質問を投げかける
「それでどうするんだ?お前の娘の件は?……あれから数ヶ月だぞ。そろそろ返事をもらわないとこっちも困るんだがな。」
貴族の婚姻はお互いの貴族の身分や財力が影響する手っ取り早い手でありそれだけ責任が伴う
それ自体ほとんどが政治体制や派閥などを考えて『親』が決めるのが基本になる
特に上級貴族になるとその意味の重みも増すものだ
……酒が入った状態で決めたものになったのは否めない
「……それがあんまり乗り気じゃないみたいでね。どうすればいいか悩んでいるんだよ。年齢的なこともあるから積極的に進めているんだが本当どうすりゃいいんだ……」
酒の盃の瓶も置き顔の両端が少しばかり赤くなりながら頭を抱え込む
「お前も娘のことになると手出しできないということか……」
「やっぱり父親となると子供に弱くなる。本当に感情深くなる。」
まるで覚悟を決めているかのように真っ直ぐ私の目を生真面目な顔でこちらを見つめる
「そうか……お前の娘ならうちの息子を制御できると思ったのだがな。」
「おいおい。自分の息子に向かって『制御』ってどうゆうことだよ。……確かに良くない噂は聞いたことはないわけじゃないが俺だちも良くやっていたからな」
「そう……かもしれんな……いやそうなんだろう。」
子供を持つような年齢になるまで経験という経験はしていた
今では軍の最高指揮官『元帥』という立場になり 帝国による被害以外でもさまざまな敵と困難と状況に耐えていた
時にはお互いに相打ちになるような戦いをした猛者も片手では数えくれないくらい大勢いた
――ちょっとした偵察遠征だった
連れてきた人数も少なくすぐ戻るつもりで編成した
ある日……突如発生した大型の魔物に数人の編成だったわれわれは苦戦していた
だがある『チカラ』によってその戦闘は終結した
「これで終わりか……大したことないんだな。」
魔物の上に剣を刺しながらこちらを見ている『息子』の姿を見た時私は信じられないという気持ちになりながらこう思った
私のすぐ足元に同じくらい……成長するとそれ以上の『化け物』がいたことにはなるかもしれないと
もし……もし……
「……おい。 少し酔っているんじゃないのか?それに口調も可笑しいし。……寝た……のか?おい、おい。勘弁してくれよな。この散らかった酒の後片付けは一体誰がすると思っているんだ?」
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――第二四部隊はこの場所『フライン』を占領し、この庭に展開されている大規模魔法陣から魔導兵器である『ゴーレム』で川のように周辺の村や町を襲撃する予定だったというのに……
この部屋に響く爆発音と共に魔力がなくなる気配が伝わってくる
すでに部下が現状を確認するために屋敷の周りを闊歩しているが……意味はないだろう
部下が焦った様子でこう発言する
「本部に通達……我々第五小隊にきゅ、救援を!」
「残っている『ゴーレム』を早く出撃させろ!小砲型でも大砲型でもいい!一体何が迫っているんだ!襲撃者の正体も人数もわからない状況で……本部からの報告はどうなっている!」
「……準備を急がせています!各部隊にこの状況を伝え奇襲作戦を中止し『魔法使い』も襲撃地点に集令させております!本部からは未だに連絡はありません……」
「……もうよい。本部からの連絡などどうでも良くなった。」
「はい?」
「来る……!」
背後から感じる振動によって備え付けられていた花瓶が割れ地面に流れた水が輪のように広がる
そこにいたのは破壊された窓から侵入した全身典型的な貴族の服だったがその異様に漆黒と血によって染められたその姿は昔幼い頃に母に読み聞かせてもらった童話に出てくる『魔王』のようだった