第四話 少年の過去
「『魔力なし』の息子を持った父親か……なんという恥知らず。」
「よくここに出て来れたな。」
その後父親は当時中流貴族であるにも関わらず
たった一人息子が貴族の世界ではありえない『魔力なし』という烙印を背中に押され後ろ指を刺さた
「なんでこんなことに!取引していた貴族にも距離を取られ階級が下の者まで私のことを侮蔑した目で見てくる!このままだとこの私が孤立してしまう!何そこで隠れて私のことをいる……お前のせいでこんなことに!」
その指の矛先が自分に直接向けられるには時間がかからなかった
家族から今後一切の絶縁を切り出れ七歳まで住んでいた家を跡を追うように追い出され流れるままに用意された中心街から遠く離れた城壁の端に佇む小屋に五年間暮らしていた
今では年に数回に手切金のように送ってくるお金で日々の生活を送ってくるのが日常になった
椅子に座りながら昔の思い出に浸っているとお腹が鳴き始めた
「……お腹減ったな。そろそろご飯を作らないと。」
台所から食材を買うために街に出る前から前もって作っていたトマトときのこが入り混じったスープを薪を取り出しロウソクと一緒につけた火で温めた鍋で温める
グツグツと沸騰した鍋から平べったい器に湯気がのぼるほどに温かい赤いトマトのスープが移される
その器とパンを机に置き一つだけの木の椅子に居座る
ふと備え付けてあった棚の隙間から何か薄いものが窓から入っていた風に身を委ねながらヒラヒラと落ちていく
「……こんなところにあったのか。何処かへ無くしたと思ってからもう捨てたと思っていた。」
それは全てがなくなった五年前に隠してあったであろう所々折り目がついた写真に目が移る
写真には追放された少年の家を背景には二人の少年と少女で挟まれた自分が映っていた
「魔力が有れば、『魔力なし』でさえなければこんなことにならなかったのに……!」
あれから五年経った今でも溢れた涙を拭きながら思っている
写真を見ながら椅子に座り昼間の出来事を思い出しながら皿に盛り付けたパンに染み込ませながら口に入れる
しかし口の中で出血しているのか少し虫を食べたみたいに苦かった
そんないつもになった日常を静かに謳歌している時だった
「ッ……眩しっ!」
そんな時突然開けていた窓から発光する
少年は目を光から庇うために持っていた赤色が染み付いたパンを放し両手で顔を隠しながら無意識に足の痛みも忘れ嫌な予感が背中から襲ってきた
『収穫祭』に放たれるきれいな花火にしては眩しすぎるその光と爆発音は街を囲む壁に反射し響かせていた
「なんなんだあの光は、あれは……いやそんなはずはない。でもまさかっ……」
僕は到底起きようがないと思っていた反面
そんな日常的な『光』ではなく非日常的な深夜を照らす『閃光』ならただ一つだけ思い当たるものがあった
その考えが合っていたとしたなら少年は二つの選択肢に唐突にせまらたがすぐに押し入れに置いてあった鞘に収められいた長年持っていた鉄製の剣を取り出す
その剣はしっかりと手入れしてあったので鞘から片手を握りしめ刃を出し光り輝き鋭さを秘めていた
「早く行かないとっ……手遅れになってしまうっ!」
まだ金属の光沢が残っていることを確認した後
壁の外まで届くような光と黒い煙が立ち上る街へ続く川沿いを怪我をした足を庇いながら颯爽と走っていく
少年の飛び出す姿を背中から見ていた小屋の中にはまだ温かいトマトのスープが置かれた机の下に落ちた写真は無意識に少年の急いでいた足で踏み潰され足跡の輪郭が三人の顔を潰していた
ロウソクのロウが溶け火がかすかに付いていたが月の光も雲に隠れ見えなくなり辺りを暗闇に包んだ
写真は風に吹かれて宙に浮き誰にも見つけることはできなかった