第十話 ノアの物語
「作戦は順調かい?」
唐突に質問したその言葉は街の中心地にそびえ立つこの街で一番高い屋敷の中に二人の軍人が机の上にこの辺りの地形一面が載っている地図を広げながら窓から外を眺めている
「勿論です。住民及び『魔法使い』の無力化は完了。魔導人形である『バルキリアス』は各方面に四体ずつ配置してあるので万事抜かりはありません。」
「ということはあのエルフも到着しているのかい?」
「ええ。研究するために速急に帰らせろとの一点張りでしたが……今回も『バルキリアス』たちに背中を引っ張ってもらいました。」
「押さえつける彼女たちも大変だねー。……この『転移魔法陣』は全て彼が設置したモノだから最後までいてもらわないと。」
「コホンッ……街の中の各地にあらかじめ配置してある『転移魔法陣』は『ヴェール王国』側に繋げてありますので確認次第、量産型の魔導兵器である『ゴーレム』を先頭に周りの村を襲わせる手筈も万全。貴族の抜け道も全て抑えているので外部に漏れる問題は当分ありません。」
「これで『ノスト帝国』と『ヴェール王国』の停戦条約が破られ凍土のように冷たく動かなかった戦争も始まるね。」
改めて捕虜となっている縛られている市民や貴族の捕虜を見ながら次の命令をするまでに星一つない暗い空を見上げる
――――――
「なんで俺らがこんな端でしかも転移魔法陣の監視役で配置されているのですか!納得いかないですよ!」
星がちらほら散りばめられた空の下
占拠された街の西端にある貴族の豪邸の一室
黒いフードに縫い付けられた竜の紋章を背に四人の軍人が白い線で描かれた円状の魔法陣を中心に立っていた
その一人は四人以外誰もいないことをいいことにどうしても我慢できなかったのか
誰もいないことをいいことに声を荒げながらこんなところに命じられたことによる不平不満を目振り手振り手を絡ませながら仲間に話す
「そんなことで騒いでも仕方ないじゃろう。ワシらも軍人……上からの命令は絶対じゃ。」
「それは……俺だってわかってるんですけど……」
そう歳としてはこの中では一番歳をとっていた物腰が柔らかそうな老兵がワガママを言った子供を宥めるようにゆっくりした声で宥める
それに対して若い男は年齢も経歴の違いもあるのか遺憾のあるような口調で反抗する
「この作戦は魔法使いは全滅前提ですし、生きているとしても爆発に巻き込まれなかった民間人か運良く生き残った魔法使いだけ。」
「おい!……やめるんだ。ノア様もいるというのに。」
「そうだよ。少しは落ちついてよ。戦果ぐらいこれからいくらでも上げれるよ。」
そう言ったのは若い男の友人らしき者が後ろから肩を掴み宥めながら横を見る
振り返りすぐ横にいたのはまだ成人にも満たないノア様と呼ばれた少年がそこにいた
その少年は他の三人とは服装がまた違い基本的な形状は同一なもののまた違ったものだった
「すみませんノア様。……失言しました。」
「ワシも謝る。……申し訳ないのう。」
「いやいいんだ……兄様のおこぼれをもらっているのは事実だし……」
二人の男はすぐに訂正し謝罪をする
ノア様と言われた少年は何でもないように振る舞いながら目の前の魔法陣を見つめる
「ノア様……」
その姿を見た若い男はただちに戦果となるには程遠い外部に押し付けられたとはいえ初めての最前線ということもありすぐに静まり返っていた警戒も揺れていた態度も立て直す
しかし次の時凄まじい爆発音で体を揺らす
「なんだこの揺れは!いくら『ゴーレム 』の大砲でも大きすぎだろう。」
「つまり……『ゴーレム』の砲台じゃない?」
この音は……この肌から感じる異常さは……見覚えのありこの後何が起こるか知っていても決して幸運とは思えなかった
部屋の外から足音が聞こえると思ったらとき各所に連絡する伝聞官が部屋の中に入ってくる
「中央部隊から伝令!転移魔法陣から魔法使いが逆転移した模様!死傷者多数!ただちに援軍を要請!」
「なんじゃと!なにがあったんじゃ!」
「転移魔法陣を設置されている箇所から襲撃されているようです!襲撃者の詳細はいまだわかりません。直ちに救援を求めます!」
「嘘だろ、本当なのか?」
「詳細がわからないってことは全滅なのか?」
その異常な被害数によって誤報だと思いたかったがこの伝聞官の焦り様とさっきの爆発音から嘘でも勘違いでもないことは見ていなくても分かった




