無限に長い時間と距離を超えて再び
第5作目の投稿です。
1千年をかけて結ばれる2人の恋愛物語です。
是非是非、お楽しみください。
うなされて目が覚めたけど、あまりにも現実感のある夢だったと思った。
胸に強い痛みが残っていた。
大きな悔いを残したことはわかったが、それが何かは思い出せなかった。
久美さんが言ったことを思い出した。
(最高の名声と名誉を得たのに、手に入れることのできなかった大切な宝って? なんなのだろう? 前世って、ほんとうかな。とても信じられないな)
実は、神崎信は心の最も奥に、その記憶があった。
しかし、無限に長い時間と距離が、記憶を現状な金庫に閉じ込め外には出せなかった。
しばらくすると、まだ眠いことに気がついて、二度寝をしてしまった。
大学1年生の暮らしは気楽で忙しく夢のようで、あっという間に過ぎていった。
2年生になっても、坂道のベンチに一人で座ってコーヒーを飲んでいた。
同じ年代の若者が多い大勢の人の流れを見ていることが彼のお気に入りだった。
「かん ざき さん」
彼にとって、いきなり経験したことのないようなシチュエーションになった。
知らないうちに、そうなっていた。
いつか目が合った、あの大きな美しい目の女の子がその前にいた。
「はい。はい。もちろん―― 」
「少し、話してもいいですか。私、いつも通り過ぎる時、大変気になってあなたの方を見ていました。絵になっていましたよ。ベンチに座って、いつも何か飲みながら、一体何を見ているのですか」
「ただ、単に、ぼうっと人の流れを見ているだけです。それと、コーヒーの味がとても好きです」
「そうですか、将軍さんは時々、頭と体を休めなければいけないのね」
「将軍って、なんですか? 」
「お友達の、ご年配と言っては失礼ですが、あの井上さんが言っていたわ。麻雀とパチンコならば、神崎は絶対負けないって。4ヘッドにもなれる人間だって。わざわざ、教えてくれました」
「頭が良くて勇気がある、必要な時に必ず難しい正しい決断をして勝つとも言っていました」
「いつの間に、井上さんと知り合いになったのですか」
「えっ、何をまた!! 今、それを言うのですか!! 神崎さんや井上さんと同じ学部学科でほとんど同じ講義をとっていますよ。まさか、もう2年生になるのに、私のことを何にも知らないのですか!! 」
「すいません。女の人を見ようとすると、変な見方で警戒されると思って、あんまり見ないようにしているのです。僕は女の人以外でも、物を見る時、しっかり見つめてしまうのです」
「そうですね、神崎さんは私をしっかり見たことがありますよ。2回―― 覚えていますか?? 」
「はい。ぶしつけで申し訳ありませんが、あなたは、大きくて美しい目をしていると思いました」
「えっ、実は私も、同じことを思っていました。」
女の子が笑った顔を見せた。
(最初の時と同じ感じ、この暖かくて優しい笑顔を昔、何回も見たことがある)
「あの、失礼にもお名前をまだ知りません」
「大変失礼ですよ。……林、林明美です。神崎信司さん。今から図書室に行きますが、一緒に行きませんか。本は好きですか? 」
(そういえば、このごろ、紙ベースでは本をほとんど読んでいないのだけど‥‥ )
「ええ、好きです。勉強以外は読書しかしません。それ以外、趣味がないのです」
「どの分野を読みますか? 」
「歴史小説が好きです。特にチャイナの戦国時代、秦、漢が好きです。好きすぎて、その時代にタイムスリップしても十分に生きていけると思うぐらいです」
(少し昔、高校生の時のことだけど‥‥ )
「そうですか、また同じ、良かったです。私はチャイナのある英雄が好きです。カンシン、知っていますか? 最愛の恋人と同時に亡くなったのですよ」
「カンシンについては知りませんでした。最愛の恋人と同時に亡くなったとは、シチュエーションはわかりませんが、2人はどんな気持ちだったのでしょう」
「幸せだったと思います。その恋人は皇帝の第5皇女だったのですが。父親にカンシンを剣で刺すように命令されました。事前に相談されたカンシンは、彼女のために喜んで死ぬと答えたみたいですよ」
「立派な英雄ですね。僕とは正反対だ」
「正反対ではありませんよ。もしかしたら、神崎さんは転生者だったりして。ふふふふ 」
それから、一緒に図書室に向かって歩いた。よく見たら、彼女は黄色い上下のパーカーを着ていた。
(坂道の雑踏に紛れていても、こんなに明るい色を着て歩いていたら、絶対に気がつくはずなのに。なぜに認識しなかったのだろうか?? )
こんなに似合って、服を着ている女の子を彼は見たことがなかった。
「私の服、気になりますか。ようやく気かついてくれたのですね。少し前に、いつもベンチに座って人の流れを目で追っていた、あるかっこいい男の子にアピールをしたことがあるのです」
(?? )
「でもとても悲しいことに、全然効果はありませんでした。」
(???? どういうこと?? )
図書館に入ると、彼女は、歴史小説を探すのかと思ったら、経営学の本を数冊選んでいた。
「そんなに経営学の本を読まれるなんて、林さんはとても勉強家ですね。」
「えっ、神崎さんもとっている経営学の講義で、来週、レポートを提出する課題がありますよ。忘れていませんか」
「あ、すいません。僕も何か探します」
林が少し真剣な顔をして言った。
「松下幸之助さん、立派な方ですよね。戦争に負けたけど、この国には松下幸之助さんのような優れた方がたくさん出て、世界に冠たる経営を確立したのですね。他の国にはとてもまねできません。」
「他の国がまねすべきかどうか、微妙だと思います。多くの経営学者が分析しているとおり、年功序列や終身雇用は確かに今、この国の強みです」
「だけど、年配者がはるか上で、ずっと留まっていて、若者は未来に期待できるでしょうか。逆にこれから、世界中の若者達が新しい技術や考え方を作り出して、世界は予想できないぐらい発展するはずです」
彼の頭の回転は止まらなかった。
「それに、金太郎飴のような画一的な人間であっても、十分に給料をいただける日本の会社では、僕もいつの間にか現状に満足した怠けものになってしまうでしょう。」
神崎信の頭の回転は速い。
それが、あっという間に口から出る。
(しまった。いつもの調子で、嫌われるかな!! )
ところが、彼女は案に反して予想外のことを言った。
「神崎さんは多数意見に迎合しないのですね、大切なことだと思います」
彼女の顔がとても真剣になった。
「後、あなたの言ったことに一つだけ反論させてください。直感ですが、あなたは決して怠けものにはなりません。全力で働き続けます。そして、多くの人から尊敬されます」
また笑って彼を見た。
前に、何回も見たことがあるような暖かく優しい顔だった。
お読みいただき心から感謝致します。
今までとは少し違った物語ですので、おもしろいかとても心配です。
※更新頻度
週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。
一生懸命、書き続けます。




