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その娯楽はスパコンに監視されていた

第5作目の投稿です。

1千年をかけて結ばれる2人の恋愛物語です。

是非是非、お楽しみください。

 部屋の壁には、各店の状況を示す多くのグラフがスクリーンに表示されていた。


 その男は、パチンコが世に知られ大衆娯楽になってから、正真正銘、史上最高の釘師と呼ばれていた。


 彼は釘師であり釘を調整して、お客の勝ち負けを、神のように決めることができた。


 さらに、最高のスーパーコンピュータが彼を助けていた。


 各店でお客が遊ぶパチンコ台は、光ファイバーで結ばれたスーパーコンピュータから指示されていた。


 スーパーコンピュータはパチンコ台の裏で玉が貯まるタンクの補充で


 台の傾きを微妙に変え、玉の落下角度を変更するなど、


 完全に出玉を調製することができ、その制御プログラムを彼は開発していた。

 

 地方の中学を卒業して、仕事をして苦労しながら専門学校に通いプログラム技術を習得した。


 よくあることだが、苦労人が好きな神は、彼にその分野での最高の才能を与えていた。


 最後には彼は多くの人々を楽しませ、大きな利益を上げることができる最高のプログラムを開発した。


 各店の立地条件にも合わせ、お客に適度に勝つことの楽しみを味わってもらいつつ黒字を確保していた。


 ただ、一店舗を除いて――――




 どの商売でも同様、こういうような事実は問題になり、徹底的に調べられる。




「もしかしたら、違法なイカサマをしている可能性もあるかもしれません」


 その店の店長が言った。

 つい最近、その店の異常に気がついた彼は、最高の腹心を店長にしていた。


「どういうことですか? 」


「ここ半年間、ずっと赤字です。この春から1人の若者が来るようになってからです。なぜか、彼が座る台はほとんど玉が出始める。このごろは、フアンだという店員も現れ始めました。」


「それでは、私が見張りに行きましょう。明日行きます」


 今日、史上最高の釘師は、いつもその若者が入店するという午後3時くらいから、待っていた。


 店のバックグラウンドにあるモニタールームで座っていた。


「来ました」


 少し待機していると、話題となった彼が友達らしいもう1人と来店した。

(なんで、こんな顔をしているのかな。おもしろくもなんともない感じに見える)


 普通、パチンコ屋に来店するお客は、ほとんど勝てることを信じてハイテンションな状態になっている。


(現に彼の友達がそうだった)、彼は沈着冷静な顔をして、自分が勤務する会社に出勤するようだった。


 ただ義務的に入ってきた。


 店内のそれぞれの列の台をさっと見ながら通り過ぎた。

 最後にはある一台に戻って、瞬間的に鋭い視線で釘を凝視してそこに座った。


 釘師は非常に驚いた。


 その台の釘は全体的には開いているが、ある一本の命釘が微妙に邪魔していた。

 そのため、お客は基本的に勝つことができない。


 ただ、夜の遅い時間まで玉を受け続けることで、その釘が負けて少しずつ開く。


 タンクの補充や打ち出しパターンなども、遅い時間から良くなるようにプログラムに指示していた。


 最終的に、閉店間際になって多くの玉を出すようにする宣伝効果を狙っていた。


 それから、さらに驚いたことがあった。


 パチンコをし始めると、若者は一見怖い表情だったが、釘師には生き生きと見えたことだった。

(彼は、勝てる台を客観的に選び、選んだ後はもう自分が勝つことを確信して、冷静に成り行きを見守っている。)


 釘師は、自分自身がそうであったから、すぐにわかった。


 時間がたつにつれて、若者はだいぶお金をつぎ込んで負けていたが、全く動じていない。


(どういう若者か話してみたい。)

 釘師は我慢ができなくなり、モニタールームから店のホールに飛び出した。




「1番肝心な大学入試では、勝ち抜くことができませんでした。C大は立派な大学ですが第2志望です。プライドが誰よりも高くて大学入試がうまくいかなかったことを、まだくよくよ引きずっている」


 その後で神崎信(かんざきしん)は真剣な、自分にうんざりした顔で言った。


「ずるい、いやなやつ。負け犬です。」


「負け犬の顔には見えないよ。おじさんはね、東京の100店ぐらいのパチンコ店を経営して釘を調整しているけど、ほとんど全部読まれてしまうのは、この店だけだ」


 おじさんはさらに続けた。

 この若者の気持ちを、なんとか良い方向に向けさせなくてはと思う強い義務感だった。


 それに、もう初老の彼は、話し始めてからわずかの時間に彼をとても好きになった。


「にいちゃん、自分が持っているものに自信を持ちなよ。東京にアリのようにたくさんいる若者の中で、にいちゃんは光っているよ。これからの未来、最後には絶対勝てるよ。」


 彼は、おじさんが励ましてくれたことや言葉の内容に心から感謝した。


 見かけは怖くても暖かいことを言ってくれた。

(人間は外見で判断してはいけない)




 実は、彼の勝率は95%を超えている。友達の中村に言わせると驚異的だということだ。


 運には頼らない。感覚が鋭敏だからか、ほんの少しの釘の角度や状態の違いがだいたいわかる。


 さらに、長い期間でパチンコ屋の中の情報を覚えている。


 どこの台が出やすいのか、何時ぐらいから出てくるのか、毎日の記憶を頭の中で深く積み重ねている。


 さらに、基本的には記憶を大切にしているけど、


 逆に一瞬のパチンコ台の玉の流れ、場合によっては落ち方自体が気になることがあった。

 

 いつもとは何か違う気がすると、考え方を直ぐに変更することができた。

 決して過去にはこだわらなかった。


 なんとなく勝てる可能性があると感じたら、徹底的にがんばった。


 ただし、未来を予言できる能力がある訳ではないからたまには負けることもある。

 途中で逃げることは自分の性分としていやだから、電車代を使ってしまうこともあるのだ。


「じゃあ、にいちゃん。最後まで楽しんでくれ。」


 おじさんは、とびきりの笑顔を彼に見せて去って行った。


 去りながら、おじさんは思った。


(パチンコ屋の経営者としては失格だな。だけど、もしかしたら、あれは大変な若者だ。この世界を支配している4ヘッドになれるかもしれないな)


 モニター室の戻ってから直ぐに、視線は神崎信(かんざきしん)のモニターに向けられた。 


 すると、彼はすぐに大当たりを引いた。


「今日も、この店は大赤字だな。はははは」


 心の底から愉快に笑った。

 若い優れた後継者を見つけて、心は明るかった。

お読みいただき心から感謝致します。

今までとは少し違った物語ですので、おもしろいのかとても心配です。

伏線回になってしまいましたが、恋愛はもうしばらくすると本格的にスタートします。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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