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ラストアゲイン

クリスマスイブのだいぶ前に終わってしまい申し訳ありません。

でも早く早く、皆様に幸せをお届けします。

「あーた。あーた。 何ぼやっとしているの。 逃げるの、早く逃げるのよ。 駅まで全速力、ダッシュ!! そして絶対、後ろを振り向いてはだめよ」


 彼の後ろで、背の高い、190センチを超え筋肉隆々の大きな男が、彼を叱しかった。


 それに気がついて若い男は振り向いて言った。


「警察、警察を呼ばなくっちゃ!! 」


「いいの。そんなことしなくてもいいのよ。大丈夫、この町で一番えらい私がなんとかするわ。だから、あなたは駅まで走りなさい。そして、未来をつかむの。あの()を幸せにするのよ。」


 がたいの大きな男は、両手で若い男の肩を強めに叩いた。


 その強烈な衝撃は、彼に決心させた。




 そして全力で走り出した。




 すぐに、がたいの大きな男や死体とかなりの距離ができた。


 がたいの大きな男は、遠ざかる若い男を見て言った。


「千年以上もかかったのよ。カンシン様。幸せになってね‥‥‥‥ 」



 既に0時は過ぎているのに、その町の雑踏(ざっとう)はおとろえを知らない。


 道幅いっぱいに多くの人々が歩いていた。


 全速力の彼は、たくみにそれらの人々を避けながら走った。


 やがて駅舎の中に入り、改札にカードをタッチしてとおり抜けた。


 最後にようやく、最終電車が発車しようとしているホームに飛び込んだ。




 もう発車の時間まで1分を切っていた。


 それなのにまだ、ホームのベンチに座っていた女性がいた。


 その女性はすぐに、ホームに飛び込んできた彼に気がついた。


 彼女の顔に、安心、そして驚きと喜びの表情が浮かんだ。


 大粒の涙が出そうになった瞬間、近づいて来る彼の笑顔が見えた。


「ミンメイさん。早く、早く、電車の中に入って、出ちゃうよ」


「そうね」


 2人は急いで電車の中に入った。2人はお互いに、その手をしっかり結んでいた。




 ホームにいた駅員が微笑んで2人を見ていた。


 そして、マイクで告げた。


「新宿発下り最終便です。今日はクリスマスイブですが、幸せそうなお2人も間に合ったので、もう発車します」




 電車には相当の乗客がいたが、すぐに2人に注目した。


 パチパチパチパチ‥‥‥‥


 大きな拍手が起きた。


 彼はかなり前、はるかな昔、大観衆からその何倍も大きな拍手を受けたことがたびたびあった。


 しかし今、電車の中で受けた拍手の方が何倍もうれしかった。





 それから、それから、数年後のこと。




 川沿い道を父親と小さな娘が歩いていた。


 小さな娘はとても大きな美しい瞳で、本を持ちながら歩いていた。


 時々父親の方を見上げ、とても(うれ)しそうに笑っていた。


「何の本を持ってるの? 」


「カンチ(シ)ンよ」


「ほんとうの英雄だね。聞きたいのだけど、カンシンとパパとどちらが好き? 」


「カンチ(シ)ン―― 」


 小さな娘は、自分の真下を見て、父親に自分の瞳を絶対に見られないようにした


スペシャルサンクス トウ ユウ


次回作に御期待ください。

ブックマークいただけますと、作者のはげみとなります。

どうぞ、よろしくお願い致します。

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