がいかの戦いが反転した
第5作目の投稿です。
1千年をかけて結ばれる2人の恋愛物語です。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。
一生懸命、書き続けます。
是非是非、お楽しみください。
神崎信とコウウはゴーグルを付け、プレヤーボックスに横たわった。
やがて、メインサーバのAIが任意に戦場を構築し始めた。
さらに、2人に戦士を配分しようとした瞬間のことだった。
AIが警告を告げた。
「プレーヤーは直ちにボックスから待避してください。未知のウィルスがシステムに侵入し」
AIの警告はそこで切断された。
その後は、何もなかったかのように戦場が構築され始め、やがて完成した。
彼にとって、戦場の様子を確認できるようになった。
しかし、何かいつもの麻雀ゲームとは異なるようだった。
それでいつまでも、15人の戦士の配分が始まろうとしなかった。
やがて、歌が聞こえてきた。
(この歌は‥‥ わかった。ここは「がいか」だ。コウウが劉と戦って、最終的に劉が勝利を収めた戦場。コウウは自分の故郷の歌が四面から聞こえてくるのを聞いて寝返りを嘆いたたんだ)
副官らしい老兵士が彼に近づいてきた。
「将軍。もう遅いのです。お体にさわります。横になられたらどうですか」
神崎は聞いた。
「今、我が軍勢は何人ほどでしょうか」
「1万人ほどです」
「そうですか。ありがとうございます。少し多めに言っていただいている分を差し引いても、8千人も残っているのですね。たぶん、今残っている戦士は忠誠心が高い人ばかりですね」
「はい。そのとおりです」
(800人ではないのか。まだ、最後の段階ではないな)
「ところで、変なことを聞きますが。私の名前は? 」
「はははは 将軍。御自身の極めて高名なお名前をお忘れですか。コウウ様!! 」
(そうか。僕はがいかの戦いでコウウの役割を設定されたんだ。ダメじゃん。‥‥でも、僕はコウウ自身ではない。神崎信だから、必ず勝てる。でも、この場合は勝てなくてもいい)
「副官。大至急、今から逃げる準備をします」
「えっ。コウウ様が逃げるのですか」
「そうです。たしか、このがいかのそばには大きな大河が流れていますね。小舟でもいいから8千人分が渡ることができる数をすぐに集めてください。お金はいくらでも出します」
「そんなお金、どこにあるのでしょうか? 」
「私の口約束だけです。この戦いに勝った後、後払い、勝利後の支払いです。私の名前だけ担保にするしかないのです。今から借用証書を書きます」
バーチャルの世界で、刻々と場面が変化している時のことだった。
神崎信とコウウが横たわるバーチャルルームに、ある男が入って来た。
店のマスターが言った。
「林龍様。戦いが始まった後の麻雀ゲームに追加で参加するのは、政府が禁止しています」
「そんなこと、簡単にごまかされるから問題無い。いざとなったら、間違えてしまったと言えば良いのだ。了承するな。必ずお前のことは我がグループの総力で守るから」
「確約していただけるのですか」
「よく知ってるだろう。我が私鉄グループの放棄部門は多くの優秀な弁護士を抱え、裁判も連戦連勝さ。絶対に無罪を勝ち取ることができる。それに、報酬は青天井で出すぞ」
こうまで言われて、マスターは私鉄の総裁林龍を麻雀ゲームに参加させた。
すぐに、林は神崎の8千人を包囲している軍の陣に将軍として出現した。
林の軍は20万人もいた。
もう既に、その近くにある穀物の貯蔵庫を中心にコウウの軍10万人が神崎の軍を包囲していた。
林龍はコウウと同盟するため使者を立てて同盟することとした。
2人は場所を決めて会おうことになった。
「コウウよ。このバーチャルの戦場はすばらしいな。かならず勝てるじゃないか。あの、生意気な若者を徹底的に打ち破り、現実の社会でもいろいろな権利を剥奪してやるのだ」
「総帥、何かなされたのですか。このバーチャル画面は異常です」
「気にするな。あの深淵の魔女ローザの孫娘に大金を支払って、麻雀ゲームのシステムのプログラムに魔術をかけたのだ。神崎信が絶対に負けるシチュエーションになった」
「総帥、それではがいかの戦いの時のカンシンとコウウの置かれた立場が反転したのですね。すぐに攻めましょう。今はたぶん、実際の勝負がつく1週間前ですから、もうかなりの兵力差があります」
「敵の兵力はだいたい8千人くらいは残っているぞ。もう少し時経てばもっと減るはずだ。戦記だと800人くらいになって、勝敗が決まったそうだ。だから、少し待とう!! 」
「いやいやすぐ攻めるべきです。今のコウウの立場に置かれているのは、あの英雄カンシンです。少しでも可能性を求めて行動するはずです。その少しの可能性を突破口にされてしまいます」
「いや、逆に今すぐ戦うのは良くない。相手にまだ勝つ可能性があるとすると、今戦うことは大変おろかだと思うぞ。今のこのバーチャルのシチュエーションでは私は劉だな」
「そうです」
「すると、後に皇帝劉となるのか―― もう、時間させ経てば勝利は絶対だな。コウウよ、いやお前は今、カンシンの役割を果たしているのか。もう少し待つのだ」
「わかりました。待つことも一つの選択ですね。そうしましょう。私もあの若者が大嫌いです。私から、大切な人を奪おうとしているからです」
がいかの戦いの立場を反転して作られた状況で、ほんの少し神崎信に幸運が訪れた。
大河を8千人が渡る船を確保することができたのだ。
それを聞いた途端、彼はすぐに決意した。
決意するには大変な勇気が必要だったが、彼はそれが最良だと判断した。
「さあ。全軍に指令を? 今すぐ大河を渡って逃げます」
「逃げるのですか。普段将軍が最も嫌われることですね」
側近がそう指摘したが、彼はすぐに動いていた。
もう愛馬の錐にまたがっていた。
彼の愛馬はどの馬にも負けないくらい早く走ることができた。
そして、大河の岸壁に一番にたどりついた。
味方がぞくぞくと到着した。
彼は敵の情報をしっかりと収集しており、決して追ってこないことを確信していた。
自分達の8千人の軍を乗せるのに必要な数以上の船を彼は用意させていた。
そのため、この地方でほとんど全部の船が集まっていた。
彼は、船頭達の1人1人に心の底からお礼をした。
そして最後の頼み事をした。
「私達を運ぶ以外に余った船全部を買い取ります。後払いになりますが、私がこの戦いに勝利した後、普通の値段の十倍出します。ですから、皆さんの船を今、燃やしてください」
船頭達は彼の申し出に応じ、彼の軍の運搬に使う船以外、全部、船を燃やし始めた。
神崎信ですら全く自信が無かった。
この時点が明らかに勝敗の転換点になろうとしていた。
お読みいただき心から感謝致します。
今までとは少し違った物語ですので、おもしろいかとても心配です。
※更新頻度
週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
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一生懸命、書き続けます。




