深淵の魔女は知っていた
第5作目の投稿です。
1千年をかけて結ばれる2人の恋愛物語です。
一生懸命、書き続けます。
是非是非、お楽しみください。
神崎信は大学を卒業した。
彼にとってさまざまな選択肢があったが、当初の目標どおり税理士の道を選ぼうとした。
地元の県に帰ってすぐに開業しようと思ったが、経験が不足していた。
そのため、しばらくの間は新宿の鈴木税理士の元で働き実力を磨くこととした。
それから彼にとって、人生の大きな進展があった。
リンミンメイと彼は結ばれ、彼は彼女にプロポーズして承諾をもらっていた。
一方、私鉄の総帥林龍の毎日は大変だった。
このごろいつもおびえていた。
それは、あの戦いからだった。
リンリンリンリン
オフィスにある執務室で、総帥は狂ったように呼び鈴を押した。
「総帥、どうなされました」
秘書室長が急いで部屋に入ってきた。
「高羽はそうした。まだ帰らないのか」
「統括本部長ですか。本日夕方の国際便で到着される予定です」
「そうか。疲れているところ申し訳ないが、ここに直帰するよう連絡してくれ」
「はい。御意のままに」
夕方4時頃のことだった。
空港のそばに社用車を待たせ、高羽は本社社屋に直接帰ってきた。
「総帥、ただ今戻りました」
「それで、どうだった。深淵の魔術師は見つかったか? 」
「はい。確かに見つけました。魔眼で真実を見ることができるそうです。神崎信が何者なのか、必ず答えがわかると思います」
「魔術師はいつ来るのか? 」
「それが‥‥ 」
「どうしたんだ」
「忙しいと言われてしまいました」
「忙しい!! ちゃんとした額の契約金を払ったのだろうな」
「はい。そうですが。だけど、このお守りをもらいました」
高羽は鳥の骨のようなものを、手にぶら下げて林龍に見せた。
「なんだ。そんなものをもらってきても仕方がないじゃないか」
ところが、その時のことだった。
鳥の骨のようなお守りが、突然カタカタと音を立てて上下に揺れ始めた。
そして驚くべきことに、何かをしゃべり始めた。
「なげかわしい。なげかわしい。この世界の男は、尊き魔女の血筋に敬意を払わないんだね」
度胸がある総帥は、少しもあわてず、その声の主に問いかけた。
「あなたは誰だ? 」
「私は今話題に出た魔女、深淵の魔女であるローザさ」
「あなたは今どこにいるのだ? 」
「はるかな会場を飛んでいるよ。飛んでいるのは、一般的に魔女の乗り物だと言われている箒だけどね」
「私はあなたと大金で契約を結んだんだ。早く、この国に来て、あの若者を見てほしい」
「そうかい。それならば、もう見てるよ」
「どうなんだ」
「神のギフトもちさ。神に愛され、神と同じ力を有している。勝ち目はないよ」
「なんとかならないのか。彼は絶対、私のことをうらんでいる。この先、必ず災いを及ぼすはずだ」
「そのとおりさ。あんたはこの異世界・この次元・この時間で彼と、特に彼の愛する人・あんたの娘にひどいことをしているね。それに転生する前にも、因縁のあった彼と彼の愛する人・あんたの娘にひどかった」
「転生する前の話しとはなんだ」
「しってるよね。小さな男の子が一番好む戦記、排水の陣、国士無双の英雄のことだよ。もう良いじゃないか、ほっておいて、おあげなさいな。英雄はあんたに災いなんかもたらさないよ」
「いやいや、そんなことない。私は必ず彼に殺されるだろう。あなたにこの世界で100人が一生遊んで暮らせるくらいの金額を支払ったんだ。魔術で彼を殺せないのか」
「私もお金はほしいさ。でもそれとこれとは全く別のもの。英雄には絶対にかなわない。だから、お金は返すよ」
「なんという適当な魔女だ」
「適当とは失敬だね。じゃあ、サービスで教えてあげるよ。転生前にあんたがやったように、英雄が心から愛しているあんたの娘を使ってごらん。もしかしたら、うまく行くかもしれないよ」
「娘とはあの異国人が勝手に生んでしまった娘のことか」
「ひどい言い方だね。あんたのことを心の底から愛したのは、あの娘の母親しかいないんだよ」
「知らないな。もういい、相談はこれで打ち切るぞ。それから金も返すんだぞ」
大海の上の陸地一つ見えない空の上だった。
空を2つの影が極めて高速で飛行していた。
2つの影は飛行しながら話をしていた。
「おばあさま。お話は終わりましたか」
「うん。終わったよ。この話はなかったことにしてもらった。お金も返すんだ」
「えっ。えっ。おばあさまにとって一番大切なお金を稼ぐことをやめるなんて!! 最強の魔女と言われるおばあさまが負けることは絶対にないでしょう。それに私だって絶対に勝てるはずです」
「いいや。この世界で絶対と呼べることが1つだけあるんだよ。覚醒した英雄には誰も勝つことができないんだ。カンシンがそうさ。長い年月、気の遠くなる次元を超えてようやく愛する人に会えたんだ」
「それが何になるんですか」
「カンシンに会えばよくわかるはずさ。今の彼は世界最強さ」
「たかが人間でしょう。楽勝だわ」
「林龍との契約は消えてしまいそうだけど、私は千年ぶりにこの世界に現われた英雄にとても興味があるわ。それに、今は死語となっている純愛をみたいのです。だからこの海の端にある国に行きましょう」
「そうですね。とても楽しみ。おばあさま。殺しはしませんから、戦っても良いですか」
「仕方がない子だね。やってみなさい。でもバーチャルの世界だけにするんだよ。今から行くこの世界の端の国では、戦いをバーチャルの世界で行うそうだよ」
ある日、神崎信は新宿駅から鈴木税理士事務所に向かって歩いていた。
その両手にはたくさんの税法の本をかかえていた。
少し前方が見えない状態だったが、気にせず歩いていた。
すると――
どすん。
反対方向で歩いて来た通行人にぶつかってしまった。
彼の本は路上に散乱した。
「ごめんなさい!! 」
ぶつかった女の子の方から誤ってきた。
彼はその子を見た。
その子は、どこから見ても完璧な魔女の姿をしていた。
そして、髪の毛の色は金髪。
この国の人ではないようだった。
一瞬、2人の目があった。
そして、すぐに魔女のコスプレの女の子は目をそらした。
とても美しい女の子だった。
さらに、その美しさは魔術チャームにより何倍も増大していた。
(普通の人間の若い男の子なら、もう私にメロメロだわ!! )
ところが、その若い男の子は全く正常な表情で話し始めた。
「おケガはありませんでしたか」
「はい」
散乱した本をもう両手に抱えていた。
(いつの間に)
「失礼します」
神崎はおじぎをして魔女リリのそばから立ち去った。
(英雄。それよりも超美形。神話級じゃない!! )
お読みいただき心から感謝致します。
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週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
一生懸命、書き続けます。




