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戦いは始まる

第5作目の投稿です。

1千年をかけて結ばれる2人の恋愛物語です。

是非是非、お楽しみください。

 2人が店に入ると、座っていた高羽や秘書達が一斉に彼らを見た。


 そして、釘師のおじさんがいることを見て、起立してお辞儀をした。


 マスターが2人に近づき話し始めた。


「銀次様、お久しぶりでございます。この方が挑戦者ですか、「新宿のマザー」が特別だと言っている方だとすね。それに4ヘッドを上回るレベル1を超える方だと‥‥ 」


 彼は、釘師のおじさんの名前が銀次だということを初めて知り、さすがに元4ヘッドとして、秘書達にも一目を置かれていることに驚いた。銀次が答えた。


「そうかい。やはり、このにいちゃんは特別な存在だったんだな。それでわかった。それならば仕方がない。一時期、我がグループの商売が大損害を受けたんだよ。もう4ヘッドの連中はそろってるんかい」


 マスターが答えた。


「定刻より、既に30分が経過しています。神崎様の御友人のお嬢様も、待たせることの保証人としてバーチャルルーム中に入っていらっしゃいます。


しかし誠に申し上げにくいことですが、先ほど、勝負で神崎様が負けたら、お嬢様の一生を3人の中の勝者がいただくことに決まってしまいました」


「まだ、そんなことをやっているのか。いかに合法的だとはいえ、人の未来を自由にすることなんて許されることではない」


 銀次が抗議したが、マスターが悲しそうな表情で答えた。


「もう、決まってしまったことですので、それに、お嬢様自身が神崎様の保証人になると申されました」


 その時、部屋の隅にいて目立たなかった太田が大きな声で神崎に謝った。


「ほんとうは、僕が引き起こしたことの落とし前で、僕の一生を差し出さなければならなかった。神崎、ごめん、申し訳ない」


 最後は涙声になっていたが、それを聞いて、神崎が答えた。


「気にしないで。なにしろ戦うのが僕だから―― 大丈夫。僕は必ず負けない」


 この世界から無限の距離、無限の時間を隔てた異世界で転生前、彼はいつもそうだった。


 苦しい時ほど、多くの人々を引きつけた明るい笑い笑顔を太田に見せた。


 彼は覚えていないかも知れないが、部下や兵士達から失敗した報告を受けて、その結果どれほど追い詰められることになっても、明るく笑い飛ばした。


 そこから、自らの力で間違いなく勝利を引き寄せてしまう、極めて寛容な大将軍カンシンだった。


「この扉から入ればいいですか」


 マスターに聞いた。


「お1人でお入りください」


「銀次さん。今日はありがとうございました」


「にいちゃん、おじさんは全然心配していないから、今日はもう帰るよ。寝るからな! 」


 それを聞いて、また太田に笑い顔を見せて、彼は扉の中に入っていった。立会人としてマスターもそれに続いた。


 扉の中に入ると、既に麻雀卓の回りに3人のメンバーが腰掛けていて、それぞれ彼を強い表情で凝視した。


 開いている席の後ろに、少し離れてリンが椅子に座っていた。


 ほん一瞬、今までの中では最も短い瞬間、彼とリンの目が合ったが、お互いに言いたいことを全て理解した。


「遅くなり、申し訳ありませんでした。」


 彼は3人に謝った。


「それでは皆様方、始めましょうか」


 立会人としてマスターが宣誓した。


 私鉄の総帥林龍が言った。


「一つ確認しておこう。挑戦者の君、君の友人がこの店に借金を抱えている。その友人が挑戦者になってもよかったのに、別の友人のこのお嬢さんがけなげにも、君がこの店に来るまでの保証人となったので、


私達にとって無限に価値のある30分も待っていた。3人のメンバーで既に決めたことだが、今日、もし君が負けたのなら、このお嬢さんの一生を勝者が自由にできるという条件で良いのだな」


「それで構いません」


 神崎があっけなく承諾した。


「その条件を変えるということは考えないのか。君自身の将来を賭ける方が、圧倒的に気持ちが楽じゃないのか」


 伝説のバンカーが聞いて、彼は答えた。


「事前の交渉から戦いは始まっています。これまでの経緯やこの集まりの性格を客観的に分析すると、僕がここで異を唱えても、皆様には検討すらしていただけないでしょう。


それと、戦う前に戦う者は、自分の心が少しでも楽にするようなことをしては絶対にいけないと考えています。戦いの最初に逃げ腰では、必ず負けますから」


(リンさんの気持ちがさっき十分にわかった。彼女を絶対に守る)


 メーカーのオーナーが言った。


「なるほど、背水の陣で望むということですね。(いにしえ)の大将軍のようですんね」


「はい。もしかしたら、転生者。本人かもしれませんけど」


 おもわず口から自然に言葉がでた。


 神崎は気が付かなかったが、シンクロニシティかもしれなかった。


 立会人のマスターが付け足した。


「大事なことを付け足します。勝者は最も高い得点をとった者ですけど、敗者はもっとも低い者の他に、マイナス点になった2位3位も敗者になります」




 4人はバーチャルゲーム用のゴーグルをつけた。


 すぐに、目の前に仮想空間が展開した。


 そこは花々が咲き乱れる春の景色だった。


 神崎信(かんざきしん)は山のふもとにいた。


 戦場とはとても思えない場所に小川すら流れていた。


 がやがやしていた。


 そこには、スーパーコンピュータが最初に配った彼の軍団がいた。


 人数は1,500人。


 彼はすぐに、その陣容を確認した。


「鑑定‥‥ 」


 人材を調べた。


「全て歩兵か。いや、重装備の騎士は数人しかいない。平均的にそんなに強くない。しかし、突出した人材がないかわりに強調して戦う軍団を作ることができる」


 彼はすぐに全軍に指示した。


 自分達の陣地の回りに土塁を高く盛り始めた。


「速さだけが重要です。内容は適当で問題ありません。早く、早く」


 ある意味で的確な指示だった。


 しかし、協調性の高い軍団はあっという間に土塁を作り始めた。


 プレーヤーは、他の3人の状況を見ることができる。


 すると、メーカーのオーナーの軍団が騎馬軍団として、しっかりとできあがりつつあった。


 他の2人の軍団は真ったくばらばらで、完成は難しそうだった。


 既に、私鉄の総帥と伝説のバンカーは自分の軍団を放棄して、山に登り始めた。


 山に登ってしまえば、司令官が標的になることはない。


「メーカーのオーナーの軍団と一騎討ちになるのか。自分は歩兵だけだ―― よし、それなら!! 」


 彼は全軍に指示し、自分の陣地に細工をし始めた。

お読みいただき心から感謝致します。

今までとは少し違った物語ですので、おもしろいかとても心配です。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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