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彼女は彼を信じた

第5作目の投稿です。

1千年をかけて結ばれる2人の恋愛物語です。

是非是非、お楽しみください。

 受話器の向こうに誰がいるのか、神崎信(かんざきしん)には全くわからなかった。


 しばらくして、電話の向こうから声が聞こえた。


「ぼくだよ、太田」


「えっ」


「ほんとうにごめんなさい。もうわかっていると思うけど、僕がこれまでやってしまったこと、心の先から誤る」


 太田が心の底から謝っていることが彼にはわかった。どうしていいのかとまどったが、不思議なことに、許してあげようと思った。


「いいよ、わかった」


 太田が続けた。


「それから、もう一つ、許してはもらえないと思うけど、今日、大変なことをしてしまった」


 太田は彼に、今日、リンがいるチャイニーズパブに行ったこと。

 

 それから、参加料が極めて高い麻雀ゲームで負けて、保証人にするため、神崎がそこにいるかのようにリンをだまして誘い出して、自分だけ逃げ出して、今、新宿駅の近くにいることを伝えた。


 彼はそれを聞いた刹那、さっき許してあげようと思った気持ちは吹き飛んで瞬間的に腹を立てた。


 火山が噴火したような怒りがこみ上げてきた。




 しかし不思議なことに、それは途中で止まった。


 遠い場所、遠い時間で昔、転生する前の彼がそうであった。


 怒りに完全に勝ち、逆に相手のことを思いやることができた。




 少し微笑みながら彼はこう言った。


「女の子を得体の知れない店に残して逃げるなんて、許されることではないけれど、リンさんを助けに行かなければ、太田に説教するのはその後だ」


 その瞬間、太田が話している電話口で異常自体が発生したことがわかった。


「なんだ、おまえ達は」


 そう太田が言った後、争うような大きな音がして、最後に電話がガチャンと切られた。大変なことが起りつつあることがわかった。


(新宿に行かなくては。)


 彼はそう思った。




 下宿から駅行きの最終バスに乗って、そこからK王線の最終上りに乗って新宿に向かった。


 リンや太田の身に何か悪いことが起きているのではないかという大きな不安を感じ、どういう結末になるのか彼には全く予想できなかった。


(大丈夫、このような困難も必ず乗り越えられる)


 電車に乗っている間に、自分に何度も言い聞かせていた。


 そうしているうちに、大丈夫だという強い自信が出て来た。


 ついさっきまで、ほとんど眠ってしまうぐらい疲れていたのに、いつの間にか彼の目は爛々と見開いていた。


 新宿はこの世界の特異点と言ってもいい土地で、何かを勝ち取ろうとする多くの人間を呼び集める不思議な力がある。


 この世界で最も大切な力は、戦争遂行能力だった。


 その力を(みが)くため、既に現実の世界で名声・名誉を得ている人々が、さらに厳しい戦いを求めて集まる場所になっている場所があの店だった。


 新宿では知るものは知る最強のメンバーが集まり戦う店だった。


 そして、店は聖地として特別扱いされていた。


 ところが近年は、実力が拮抗した固定メンバーが3人で、1人欠けていた。


 一般的には4ヘッドとして知られていたが、3人しかいなかったののである。


 このため、マスターが挑戦者として残りを人選していたがとても戦いにならなかった。


 毎回挑戦者の1人負けになっていた。


 挑戦者があまりに弱すぎると、メンバーの3人から強いクレームがあり、ここ数回は中止が続いていた。


 ところが、今はAIが正確な判定をしてくれる。


 しかし、3人の強者と同様、レベル1以上の能力がなければ、とても相手にならなかった。


 戦いのルールは「敗者は勝者の要求を拒めない。」という簡単なものだったか、敗者は大変な対価を支払わなければならなかった。


 その夜も、戦いの日として定められていたが、挑戦者がいなかった。


 こういう日は、事前にマスターが3人に連絡して集まることを中止するのだが、かなりの回数が連続して中止されていた。


 このような状況がこれ以上続くと、マスターが、現実の社会で大きな力をもっている3人の怒りをかう恐れがあった。


 このため、もちらん太田には挑戦者になるような実力も資格もないが、罰として、太田を連れ戻して挑戦者らしく振る舞うよう言い含め、戦いを開催してしまおうと考えた。


 マスターは3人に対して、大学生チャンピオンのとても強い挑戦者が現れたので、今夜の勝負が行われることを連絡した。


 店の関係者が、太田を護送するような体制で帰ってきた。


 太田は大声で騒げば逃げることもできたのだが、リンのことがとても気になり、神崎への申し訳なさも手伝って、観念してだまって連れてこられた。


 リンはもう外に出ていいと言われたが、太田がどうなるのか心配で店に留まらせてもらった。


 太田はマスターから詳細を説明され了解せざるを得なかったが、おずおずと一つだけ要望を伝えた。


「戦いに参加しなければならないことはわかりました。ただ、後で、僕よりもずっとふさわしい者がこの店に来ます。そうしたら、僕に代わって戦いの場に加われるようお願いできませんか」


 あきれ気味にマスターが答えた。


「あなたは、この期に及んで、まだ自分の責任を他人に押しつけようとするのですか。その方は誰ですか、友人ですか、わざわざこの店に来て、代わって困難な戦いに参加するのを了承していただけるのですか」


 その時、この店に1人の男が飛び込んできて言った。


「大丈夫ですよ。太田さんの代りの若者は必ず来ます」


 ○武鉄道の人事担当役員高羽だった。


「高羽さん! 」


 高羽は太田に対してうなづき、微笑みながら言った


 リンが言った。


「同じ大学の友人です。その人は、困っている友人を見捨てるような人ではありません。必ずこの店に来て助けようとするでしょう。


もちらん、麻雀もとても強いです。あの「新宿のマザー」が占って、英雄の生まれ変わりだと透視した人です。」


 よく知る「新宿のマザー」の名前を出されて、マスターは考えを変えた。


「お嬢様、それならば途中で挑戦者が代わるよりも、最初からその方が戦いに望まれた方がいい気がします。」


 リンは直ぐに、全く躊躇(ちゅうちょ)せずに答えた。


「私のこれからの人生をかけてもいいです、私を保証人として、彼がここに来るまで他の3人にお待ちいただき、彼に戦わせてくれませんか」


 リンは自分を大変な状況に追い込んだが、少しも怖くはなかった。


 マスターが答えた。


「3人がどう言うかわかりませんが、掛け合ってみましょう」


「マスター。大丈夫です。4ヘッドの1人である我が主が、他の方を説得するでしょう。なにしろ、御自身のお嬢様が保証人になられるのですから―― 」

お読みいただき心から感謝致します。

今までとは少し違った物語ですので、おもしろいかとても心配です。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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