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どうしてそこで逃げるのか

第5作目の投稿です。

1千年をかけて結ばれる2人の恋愛物語です。

是非是非、お楽しみください。

 リベンジしなければならないと思った。


 この間、あの店で麻雀ゲームを行い完全に負けたことが屈辱だった。


 それで、たまたま運が悪く実力が出せなかっただけだと自分の心を無理矢理ごまかしていた。


(あの店は選りすぐりの強者が集まる所で、○武鉄道の人事担当者も知っていたような感じだった。僕の戦争遂行能力の高さは大企業が認めているんだ。でも待てよ。どの戦歴を評価したんだろう?? )


 しばらくすると、お洒落な喫茶店のような建物が見えてきた。


 それとともに、太田はだんだん心配になって、今日はもう麻雀はやらずに帰った方がいいと思い始めた。


 けれど、結局は決心がつかず、取りあえず店の中に入った。


「いらっしゃい」


 この間と同じ、髭がもじゃもじゃのマスターが声をかけた。


 前と違っていたことは、実力を試された時に相手をした3人の若い男達が、カウンターでコーヒーを飲んでいたことだった。


「何になさいます」


 マスターが全く普通に注文を取りにきた。この間のことは忘れているようだった。


 太田はほんとうに怖くなり、食事だけ済ましてさっさと帰ろうと思った。


「ナポリタンとコーヒーをください」


 しばらくすると、3人の若い男達が代わる代わる太田を挑発した。


「おにいさんは、おじ気づいたのかな。今日はおじ気づいて食事だけして、勝負を避けるのかな」


「いやいや絶対無理でしょう。この間の実力は子供のやっているドンジャラ並でしたから」


「よく見なよ、あのおにいさんはほんとうに臆病者の顔をしているよ」


 マスターがたしなめた。


「止めなさい」


 しばらくすると、ナポリタンとコーヒーが運ばれてきた。食べ始めたが、全く味がわからなかった。


 マスターにたしなめられたからかもしれないが、3人の若い男達は言葉で挑発するのは止めた。


 しかし代わりに太田を馬鹿にするかのように、時々ちらっと見てクスクス笑いをし始めた。


 チャイニーズパブでもさんざん悪いところを指摘され追い出されたこともあり、太田の今の精神状態ではもう我慢できなかった。


「マスター、戦いをお願いしたいのですが」


「お客様、無理をされることはありません。うちの従業員の態度はお許しください。この間も申しましたとおり、無駄な時間になりますし、負けたら技芸の指導料として五百万円お支払いいただきますよ」


「この間は調子が悪かっただけです。今度は絶対勝ちます。仮に負けてもクレジットカードを持っています。」


「クレジットカードではだめです。現金でお支払いいただきます。支払えない場合は保証人を呼んでいただいて、代わりに支払っていただくしかありません」


 こんな理由で保証人など来てもらえるはずもないし、電話で相談する友人もいなかった。


 しかし、この日の太田は徹底した悪人になることができた。


 それに、○武鉄道の人事担当役員に言われたことが、少し気持ちに自信を持たせていた。


 そしてふと、前にチャイニーズパブでもらった、女の子の名刺を持っていることに気がついた。電話番号が書かれているに違いない。


 負けた場合は、神崎がここにいるとうそをついて、この店にリンを呼び出し払わせれいいと考えた。


「代わりに支払ってくれる保証人はいます。事前に氏名を示すことはできませんが、負けた場合は保証人を呼びます。必ずやってきます」


 とうとう、太田の実力を再度試すための麻雀ゲームの戦いが始まった。


 前回と少し違う進行だった。


 太田が序盤で3回、わずかに敗戦してポイントを減らした。


 するとその後、他の3人が戦いを放棄した。


 太田の攻撃とぶつからないよう、ひたすら始めた。


 攻撃しようとするのが、その意志があるのが太田1人だけなので逃げ切ることは楽勝だった。


 結局、そのような状況が最後まで積み重ねられて、僅差ではあったが、太田は負けた。


「おにいさん、惜しかったね」


 3人の若者の1人が皮肉をこめて言った。


「お客様、お約束の五百万円はどうなされますか」


「保証人を呼び出します。」




 太田が追い出された後も、チャイニーズパブは盛況だった。


 リンが接客している時、電話番をしていた女の子が伝えにきた。


「リンさん。電話がかかっています」


「誰からですか」


「名前は言わないのですが、ただ、C大の同級生ですと」


 リンはどきどきした。自分がここでアルバイトをしていることを神崎が知っているからだ。


(勇気を出して、電話をしてきてくれたのか―― )


 リンは席をたって電話の方へ歩いて受話器をとった。


「もしもしリンですが」


「太田ですが。電話を切らないでくださいね。○○という喫茶店に、今、神崎といっしょにいます。神崎は電話ではなくて直接お話したいそうです」


「あなたのような人と神崎さんがいっしょにいて、神崎さんが私に電話をかけてくれなんて、絶対言うはずがありません。うそは言わないでください」


「うそだかどうか来ればわかりますよ」


 太田は意識的に電話を短く切った。


(必ず、彼女は来る。会いたくてたまらないはずだ)




 しばらくして、店のドアが勢いよく開いた。


 リンが走り込んできた。部屋の中を見渡したが神崎はそこにいなかった。代わりに、太田が座っていることを見つけて尋ねた。


「神崎さんはどこですか。」


 その質問を無視して、太田がマスターに言った。


「この()が僕の保証人です」


 マスターがリンに尋ねた。


「このお客様には、本日、高度な麻雀の技芸を御教授させていただきました。事前に、教授料として五百万円掛かることを申し上げ、了解をいただきました。指導が終わった後、


このお客様に御請求させていただきましたが、お持ちでないとのことで、保証人を電話で呼んで支払っていただくとのことで、そうしたら、お嬢様が入って来られました。お嬢様が保証人ですか。」


「違います。全くの他人です。このお店には、間違って入ってしまっただけです」


「違うのですか、御事情はわかりませんが、‥‥間違ったのではなく、だまされたかもしれませんね。申し訳ありませんでした」


 マスターが、太田の方を振り返りながら続けた。


「このお客様には労働で返していただくしかありません。鉱山、港湾、建設…大きく稼げる仕事についていただくしかありません。遠い外国になるかもしれませんが。さあ、お嬢様はお帰りください。」


 このようにマスターが言った瞬間、信じられないことが起った。


 太田がすきを見て、ドアから猛烈な勢いで逃げ出した。


 リンは1人、その場に取り残された――――

お読みいただき心から感謝致します。

今までとは少し違った物語ですので、おもしろいかとても心配です。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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