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彼女のほんとうの気持ちは報われるか

第5作目の投稿です。

1千年をかけて結ばれる2人の恋愛物語です。

是非是非、お楽しみください。

 広々とした一室に置かれた、最高級の応接セットで打ち合わせをしている2人がいた。


 1人は林龍(はやしりゅう)、もう1人は彼の腹心の部下高羽(こうう)だった。


 その部屋の全面ガラス張りの窓からは、高層ビル郡が見えていた。


 高羽が言った。


「お嬢様はついに、あの若者と別れてしまわれました。お嬢様経由のコネはもう無いと思われます。それにさらにまずいことが―― あの若者は、他の3ヘッドからも注目され始めました」


「戦争遂行能力レベル1超え、唯一無二の若者だな。どういう経緯なのかは知らんが、やはり不肖(ふしょう)の娘だ。全く役に立たないな。もう良い、高羽よ、若者と接触してくれ。そして会わせてくれ」


「御意」




 リンのチャイニーズパブの仕事が終わった後のことだった。


 店が別離の原因となったのだけど、大学の学費、生活費を稼ぐため店は続けていた


 あの夜に、神崎とリンの両方のことを知っているらしいお客が来ていたと、接客した女の子がもじもじしながらリンに告げた。


「あのう、言っていいかどうか迷っていたのだけれど、あの日、リンさんがあの日本人の男の子に大嫌いと大声でいう少し前に、知り合いらしい若い男の子が1人で来店していたわ」


「どういうことですか」


「『境遇が大きく違う2人が結ばれるのはとても難しいから仕方がない。』とか『秘密は必ずばれる。』とか言っていたわ」


「どのくらいの年だった。」


「年の頃だと、リンさんやあの日本人の男の子と同年代でした。八王子の方の大学生だと言っていたわ。」


 リンには思い当たるふしがあった。


 大学の中で神崎と一緒にいると、いつも険しい視線を感じた。


 神崎も気づいていたようだったが、特に気にしていないようだったので、リンも問題にはしなかった。


 視線の主は同級生の太田。


 神崎とリンに対して敵意をもっているかのようだった。


(神崎は偶然にこの店に来たといっていたが、ほんとうに偶然だったのか。もしかしたら、太田が神崎をこの店に呼び込んだのか。私の今の仕事を知っていて。同級生なのにこれほどのひどいことをするなんて)




 2~3週間過ぎた後、その太田がチャイニーズパブに来店した。


 しかも、接客相手にリンを指名した。


 薄笑いを浮かべて太田がリンに言った。


「林さん。見違えますね。そのケバケバしく、露出度の高い衣装。とても似合いますね」


「似合ってなんかいません。それに私の名前はリンです。林ではありません」


「神崎なんか、公衆の面前できっぱり大嫌いって宣言して正解ですよ。あの時、僕も見ていましたけどね。ああ、すっきりした。その時のあいつの顔覚えていますか。幽霊みたいでしたね」


「そんなこと言わないでください。私は彼を大変傷つけてしまったことをとても後悔しています」


 それを聞いて、太田はむっとしたような顔に変わった。


「神崎は、きっと流通大手に入ると思うよ、それにあの顔でしょう、彼の奥さんになりたい日本人の女の子は、はいて捨てるほど現れますよ。」


「神崎さんは、大企業に入るから、かっこいい顔をしていから、人に好かれるのではありません。太田さんと違って、苦しく時もくじけず努力します。


太田さんと違って、人の心を深く思いやります。太田さんと違って、他人を傷つけるような悪いことは絶対にしません」


「おれが、どんな悪いことをしたっていうんですか? 」


「この店に神崎さんを誘ったじゃないですか。」


「誘ったと言いますけど、この店に林さんがいるよって、彼を引っ張ってきたわけではありません」


「彼があなたのほんとうの姿を知るために、ほんのきっかけを作っただけです。もともと、神崎に隠しごとをしていた林さんが一番悪いと思いますよ」


「男らしくない言い訳ですね。今もこれからも、私は神崎さんのことが心から大好きです。あなたみたいな人を、世界中で好きになる女の子は絶対いません。それともう1回言いますが、私の名前はリンです」


 この2人の会話を聞いていた他の女の子が報告しに言ったのだろう。


 あの夜、神崎がこの店を出て行こうとした時、心配して近づいてきた中年の女の人がやってきて言った。


「お客様、私はこの店のオーナーでラオリ(老李)と呼ばれています。この店で働いている女の子達の親代わりだと思っています」


 それから、さらに強い口調になった。


「お客様のような人の気持ちを全く思いやることのできない人間を、最低の「くず」と言います。お帰りください。お代はいただきませんから。さあ早く。」


 太田は追い立てられるように店を出た。


「なんて店だ。とんでもない店だったとみんなに言いふらしてやる。」




 このごろ何もかもうまくいかない。


 留年が確定したと親に言ったら、後の学費は自分で稼げと言われた。


 あの神崎を、絶望のどん底にたたき込んでやったと思っていたら、このごろなぜか立ち直ってきた。


 挙げ句の果てに、税理士の資格もとったそうだ。


「今日は、腹いせに、林を徹底的にいじめてやろうと思ってきたが、今もこれからも神崎のことを心の底から好きだと面と向かって告白された。ムシャクシャする!! 」


 その時、太田 は呼び止められた。


「太田様」


 振りむくと、背の高い高級そうなスーツを着こなしたビジネスマンだった。


「何か僕に御用ですか? 」


「私は○武鉄道の人事担当役員の高羽と申します」


 そのビジネスマンは太田に名刺を渡しておじぎをした。


「太田さんはかなり戦争遂行能力が高い方ですね。麻雀ゲームも強い。私の会社では採用予定者として大変注目しています」


「あの―― 僕は単位が足りなくて、C大にもう1年通わなくてはならないのですが」


「かまいません。1年でも2年でもお待ちします。すいません。突然、お止めしてしまいました。今から、あの店に行かれるのですね!! 太田さんのような実力者なら問題ありませんね」


 高羽というビジネスマンはにっこり微笑んだ。


「失礼します」


 


 その後、太田の足は自然に、この間痛い目にあったフリー麻雀荘に向いた。


 負けて5万円の指導料をとられ、そんな実力では麻雀荘にやってくる強い相手と戦えないから、もう諦めるようにと言われた。


 そして、次回負けたら五百万円の指導料をいただくと言われた。


 心の奥底では「もう行けない」と考えていたが、それも変わった。


「僕の実力は、○武鉄道の人事担当役員まで知っている。そして採用を約束された」


 彼の気持ちは、極めてハイになっていた。


 冷静に考えると、簡単におかしいと思うことができたにもかかわらず―――― 

お読みいただき心から感謝致します。

今までとは少し違った物語ですので、おもしろいかとても心配です。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や他の日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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