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2人は千年後、異世界で目を合わせた

第5作目の投稿です。

1千年をかけて結ばれる2人の恋愛物語です。

是非是非、お楽しみください。

 広大な白い色、

 噴水がきれいな大学のキャンパスの坂道。


 ところどころ、ちょうどいい位置にベンチが置かれていた。


 春のきれいな青空の下で、空気は希望に溢れ、多くの若者が親しい友人達ちと楽しそうに会話をしながら、坂道を行き交っていた。


 コーヒーをゆっくり、少しずつ飲みながら、彼は1人でベンチに座っていた

大学に入ってから、こんなふわふわした幸せな感じで、歩いている大勢の人の動きを目で追うのが好きになった。


 大学受験のための厳しい準備から解放されたこともあった。


 でも受験勉強だけではなかった。


 彼は人と戦う場面になると、完全にスイッチが入ってしまう性格だった。


 そして戦いが終わりその気持ちから解放されると、心がとても穏やかになった。


(ここに座ってから、もう30分くらいかな)


 スマホで時間の経過を確認して、再び人の流れに目を向けた瞬間だった。

(えっ!!!! )


 視線を向けている光景の異変に彼は気がついた。





 行き交う若者の姿が戦場の兵士の姿となった。

 

 それとともに、心と体が最大限に緊張した。視覚だけではなく、聴覚、臭覚も含めて、瞬時に戦場の全ての情報が頭の中を駆け巡ったような気がした。


(アールピージーのような???? )


 彼は目をこすった。


 しばらくすると、光景は元にもどった。

(レポートの作成に手間取り、昨日、寝るのが遅かったからかな。)

 

 寝不足のせいだと彼は無理やり自分に言い聞かせた。


 ほんとうは、18歳になってから、何回も知らない国の戦場の幻影を見ていた。

 精神に異常を来しているのかと、彼は少し心配になりつつあった。




「女の子ばかり見ているなよ。変態と思われるよ」


 肩をたたかれて我に返った。現在の大学生なのに黒の紳士帽子をかぶっている井上さん。


 年齢が彼よりも10歳ぐらい上、同級生なのに「さんづけ」していた。


 地方出身の彼とは異なり東京出身で、この国最高峰の大学の理工学部を卒業して、技術者として大企業に就職した後、このC大に学士入学した人だ。


 理由は、数年前に、井上さんの親が経営している下町の中小企業を継がなければならなくなった。


 下町の家内工場だけど確かな技術があり、従業員を数十人雇っていた。


 それで、井上さんが継がなければ廃業せざるを得なくなった。


 従業員のみんなが職を失い、家族も含めて路頭に迷うと考えたそうだ。


 彼は、井上さんがそのことを話した時の、笑った顔が今でも忘れられない。


(不運な出来事があっても、けっして逃げず、立ち向かっている人だ)


 彼は子供の頃からずっと、理想とすることがあった。


 井上さんは彼の理想どおりを実践している人だった。


 実際、大企業にいれば将来安泰だっただろうに、自分では不本意な方向転換で、どれだけ苦しかったか。


 しかし、彼に話した時は、そのような暗い気持ちをおくびにも出さなかった。


 彼は密かに井上さんを心の底から尊敬していた。


 彼も苦しい時こそ笑うことが好きだった。


 「大丈夫」と言われると、他人に対しては優しく微笑んだ。





「別に女の子ばかり見てはいません。」


「眼光が鋭かったから、そうに、違いないと思ったのだけどな。」

 井上さんがおもしろそうに、笑っていた。


「今日は、季節に合わせて青か緑の服を着た人が多いですね。見た目が同じように見えるのは、学生生協で売っているブランドを着ている人がほとんどだからでしょうか、安いですし。それと、今日は大人の顔をしている4年生の講義が多いと思います。」


「ははは、正確で緻密だ。歩いている人のことを正確に分析しているじゃないか。文系じゃなく理工系にいって研究者になればよかったな。だけどね!!!! 大切なことを見逃しているよ。」


「何ですか? 」

「教えないよ」

「教えてください」


「残念だな。普通の人なら気付くよ。(大学の外に向かって歩いていたものすごくきれいな女の子が、じっと神崎を見ていたのだけど。…)まあいいじゃないか、その内わかるよ。ところで今日の講義は終わりだよな。麻雀をやりに行こう。」


「いいですよ。」


「面子は揃っているよ。残り二人は麻雀荘で待っている。」


(そうだ!!!! リベンジしようと思っているのか。この間、井上さんも含めて、麻雀で徹底的にカモにした。最後は、情け容赦なくみんなの心を折ってしまった。)


 戦争ゲームである麻雀は、彼の得意中の得意のことだった。


 彼は友人の3人をかなりのマイナス点にしてしまったことを思い出し、大いに反省した。


 学生の流れに混じって、彼は井上さんと2人で大学の北門に向かって歩き始めた。そして北門を出ると、登山のくだりのようなかなり長い坂道が、麓にあるK王線の駅まで続いていた。


 駅前の麻雀荘で残りの2人を待たせて、もう場所代が発生しているからか、井上さんはかなり早いスピードで歩いたので、彼も遅れないように急いだ。その途中、前に歩いていた数人を抜かしながら歩き続けた。


 井上さんはかなり早いスピードで歩いたので、彼も遅れないように急いだ。

 その途中、前に歩いていた数人を抜かしながら歩き続けた。


 急いでいる途中、横に並んで歩いていた3人組の女の子を抜かした瞬間、彼は強い視線を感じた。


 数秒後どうしても気になり、振り返って後ろを見ると、その内、真ん中の1人の子が、彼に視線を向けていて目が合った。


 大きな、ぞっとするほど美しい目.

(これはいけない、目をそらすことができない)


 他の2人の女の子は、真ん中のその子に向かって、何か話しかけているようだった。


 ほんとうに変態と思われてしまう…、彼は非常にあわてたが、一瞬、彼女の表情が変わって、にっこりと微笑んだ。


 なぜか前によく見た笑顔で、その子の優しい性格を知っているような気がした。

(知り合いじゃないのに。)


 以前の記憶を一生懸命さかのぼったけれど、彼は思い出せなかった。


 彼はなんとか前を向いて、できるだけ全速力で走り出した。井上さんを抜かして、はるか後ろにおいていった。


「神崎、神崎、走らなくてもいいよ―― 」


 井上さんに言われたけど、彼は狂ったように、全速力でダッシュしていた。

お読みいただき心から感謝致します。

今までとは少し違った物語ですので、おもしろいかとても心配です。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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