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他人の不幸は蜜の味がする

第5作目の投稿です。

1千年をかけて結ばれる2人の恋愛物語です。

是非是非、お楽しみください。

 麻雀が始まった。


 相手の3人は、異常に早いスピードでAIが配布する兵士を選択した。


 その兵士を入隊させるか拒否するか短い時間で判断して、場面を回した。


 太田は、いつもはそんなに早く兵士の選択をしなかった。


 しかし、馬鹿にされそうだったので、心の中で焦りながらテンポを合わせるしかなかった。


 非常な速攻で、3人のうち誰かに少しの勝ちのチャンスがあれば、勝ちをひろい勝負を終了させた。


 少しでも勝つことを目的に、どんどん戦いの場面を進めていった。


 終盤になって、誰も戦いを始めない回もあり、太田は、不思議に思った。


 しかし、彼が迷った末に自分の軍から捨てた兵士を軍に加え、


 最強の軍が作られたことで太田が攻められ、結局1万点がマイナスされた。


 あっけなく勝負が終わった。


 戦い方について、3人は抜群の感覚をもっていた。


 汗ばんだ手で、太田はマスターに5万円を支払った。


 しかし彼は、雰囲気に負けただけで、実力で負けたとは思っていなかった。


「お客様の実力ですと、次回からは、私達も無駄な時間を費やすことはできませんので、負けた場合の技芸の指導料は五百万円になります。もう、いらっしゃらないことをおすすめします。」


「今度は負けないよ!! 」


 心の底から沸き上がってくる怒りをなんとか押さえながら、太田は店を出た。


(勝負の場にも出ることを許されない弱者だと決めつけられるなんて―― )


「早く帰って家で寝よう。ATMでお金をおろさなくては」


 半分怒りながら、太田は新宿駅まで、足早にただ機械的に歩いた。





 回りを見る余裕など全然なかったけど、偶然ある光景が眼に入った時、思わず足を止めた。


 遠くに、よく知っている女の子が1人で歩いていた。


 こんな所をどうして1人で歩いているのか気になって、しばらく後をつけた。


 すると、その女の子はある建物の中に入っていった。


 太田は思わずその建物の入り口まで近づいて行き確認した。


 入り口のドアに書かれている文字を見た時、太田は心の底から喜びを感じ。


「他人の不幸は蜜の味だな―― 神崎信(かんざきしん)




 大学4年生も10月になった頃、井上さんから彼に電話がかかってきた。


 2階にいた彼に向かって、1階から大家さんが呼び出した。


「神崎さん、井上さんっていう人から電話ですよ」


現在の世界では全く考えられないことだけど、自分で持っているスマホや携帯などなかった。


 ましてや彼の下宿の部屋には固定電話がなく、いわゆる大家さんの「取り次ぎ電話」だった。


「すいません」


 部屋のある2階から電話のある1階に降りて電話にでた。


「神崎です」


「大学最後のお別れ麻雀会をやらないかな、後、中村と太田で」


「いつでしょうか。税法3科目の税理士資格試験が後1か月に迫っています、できれば、現役で税理士資格を取得したいのですが。」


 一番気が合う中村とお世話になった井上さんと会うのは、大学生活の思い出になるから麻雀をやってもいいかなと思った。


 しかし、悪気がないかもしれないけれど、皮肉を言われてばかりで、大学でただすれ違う時も険しい視線を向けてくる太田と会うのは、正直あまり気が進まなかった。


 井上さんが話を続けた。


「太田だけど、留年が決定的になっているそうだ。彼の言葉を代弁するけど、同級生がみんな卒業して社会に旅立って、自分だけ大学に残るのはとても悲しいそうだ。元気づけのために麻雀会をやらないかな。


1週間後の金曜日、税理士格試験の勉強の息抜きに来てくれないか。実は太田から、大学にいる間に神崎と是非会いたいと、ほとんど泣きそうな声で電話があった」


 太田からそんなに好意的に見られていなかったように感じた。


 しかし、中に入って調製している井上さんを困らせるのも申し訳ないと思った。


「わかりました。場所はどこですか」


「新宿はどうかい。これも太田の希望だけど。それから麻雀が終わったら、少しみんなで飲みたいということだけど」


「了解です」


 もうこのごろは税理士資格試験の勉強が忙しくなって辞めさせてもらった。


 少し前まで新宿の鈴木税理士の元でアルバイトをすることで、掛け替えのない経験をさせてもらったことを思い出した。


「新宿は久しぶりだな。」




 お別れ麻雀会の当日は、新宿駅で午後2時に待ち合わせた。


 彼がその少し前に駅に着くと、井上さんと中村はもう着いていた。


 太田が最初に言い出したはずなのに、彼はまだ来ていなかった。


「太田はだめだな。こんなに待たせるなんて社会に出て、通用しないんじゃないか」


 中村が批判した。


 駅の改札から多くの人が足早に出てくるのに、いっこうに太田は出て来なかった。


 さらに30分ぐらいした。


(これ以上来なかったらどうしようか、麻雀は止めようか)


 待っている3人ともが、言おうか、お互いの表情を探っている時だった。


 太田が駅の中ではなく、駅の反対側の道路から大声を上げてやってきた。


「悪い。悪い。どこの麻雀荘に行くか、予約を取っていたので遅れてしまった。」


 この時間に満員で埋まっている麻雀荘はなく、事前に予約する必要は全くないのでおかしいなと思おおた


 さらに、太田が一瞬、神崎の方を見てニヤリとした気がした。


(えっ、なに、なんで笑ったんだろう)


 太田が選んだのは何か特別な麻雀荘かなと思ったけれど、何もない普通の店だった。


 中に入ると、客はいたけれど、開いている卓の方が目立っていた。


「なんでここの麻雀荘を選んだの。」


 聞きたいことを中村が聞いてくれた。


「場所が移動にちょうどいいからさ。後で分かるよ。」


 彼にはその意味が分からなかった。


 でも、今日は太田が言い出してみんなを集めたので、計画を立てているのかなと思った。


 それから、日が暮れて夜になるまで麻雀をしたけれど、あまり盛り上がらなかった。


 太田の麻雀のしかたが、以前に比べて非常におとなしくなっていた。


 自信がなくおずおずと消極的だった。


 そのせいか、太田が1人で負けを重ねていた。


 バーチャルの世界の中で、太田が指揮する軍はなぜか混乱していた。


 それは、麻雀の参加者の心をAIが感じ取った結果だった。


 太田は麻雀の結果なんてどうでもいいと思っていた。


 彼には今日、大きな目的があった。


神崎信(かんざきしん)を不幸のどん底に落すんだ―― )


 太田は自然にニタニタしてしまう自分を抑えることができなかった。

お読みいただき心から感謝致します。

今までとは少し違った物語ですので、おもしろいかとても心配です。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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