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ある日の約束


 あれ?

 真っ暗だ。

 あっ、目を閉じたからか。


「……」


 私死んだのかな。

 痛みもなかったし、楽に死んだってことかな?


「…………」


 良かったよねこれで。

 やれることはやったし、もう私の目の前で、私のせいで、誰かを傷つけたくないから。


「……?」


 このままずっと暗いままなの?

 それに何だかゴワゴワしてるような......。


 アリナはゆっくり目を開けた。

 視界いっぱいに広がる雲ひとつない空を、ワイバーンの首が横切っていった。


「……は?」


 何が起こったのか理解していないアリナは、ゆっくりとワイバーンが迫っていた方を見る。


「……はぁ!?」


 そこには、首から下がないワイバーンが自分の横を通り過ぎていく姿と、白いスクラープがあった。

 どうやらラギルスが、ぶつかる寸前で首を斬ったようだ。


「ア、アンタ! 新入りじゃん! 一体何して――」


「何してるって、こっちのセリフですよ!!」


 ラギルスはグッとアリナの顔に自分の顔を近づけて怒鳴った。


「昨晩、話しかけてもずっと上の空で、何かきっかけがあれば死にたいみたいな虚ろな目をしていました」


 怒鳴ったと思えば、今度は悲しみに溢れた声で話し始めた。


「そ、そうだよ! 私のせいでリサが死んだ! 親友をなくすと言うのがこんなに辛いなんて思わなかった!」


 アリナはラギルスの言ったことを認めた。

 アリナはガクッと膝を落とした。


「だからってアリナさんが死んでいい理由ではないです」


 アリナも地面に膝をつき、アリナと顔の高さを合わせる。


「なんでそう言えるんだよ! 私もリサのことも知らないくせに!」


「だったら教えてくださいよ! リサさんのことをよく知ってるのは親友のアリナさんだけでしょ!」


「そんなに言うなら教えてやるよ…………リサとはね、2年前同じタイミングでここに配属されたんだ」


『あっ、今日から配属することになったリサです。役割は砲兵ガンナーです。よろしくお願いします』


『え!? あなたも今日から? しかも同い年? すごい偶然だね! えーっと、アリナって言うのか。よろしくね!』


『まさかの同室!? ここまで一緒だと運命共同体みたいだね。寝る前色々お話しよ! この部屋まだ私たち2人しかいないみたいだし』


『今日は……たくさん死んじゃったね……えっ、アリナが次の砲兵代表? うん。アリナならきっと大丈夫だよ。大丈夫。辛くて泣きたいことがあっても私が支えるから。ね?』


『この子が今日から同室になったミーナ。大人しい子だけど狙撃手スナイパーで腕もいいんだって。仲良くしてね』


『ねぇ? A地区の生活知ってる? 何でもそこに住んでる人たちは、スイーツっていう甘くて美味しいものを食べてるんだって。いつか一緒に食べに行こうね! もちろんミーナも』


『最近モンスターが強くなってるね。私たちが一緒にいられるのも長くないかも……えっ? 冗談冗談! だって一緒にスイーツ食べに行くって言ったもんね』



「リサは……リサはぁ! うぅ……」


 一気にリサとの思い出がフラッシュバックしてきたのだろう。

 アリナのスクラープから啜り泣く声が聞こえてくる。


「親友と言うなら、一緒にやりたいこともあったでしょう。それを果たすために生き延びることがアリナさんがやるべきことです」


「うっ……でもっ、スイーツってやつを一緒にっ、食べるとかいうくだらないことだよ? それがリサのためになるの? 私が生きる意味になるの?」


 アリナは顔を上げ、両手でラギルスの肩を揺らした。


「いいんです。どんなに小さい夢でも、この残酷な世界では、立派な夢です。それを叶えることがこれからアリナさんが生きるための意味になるんです」


 ラギルスはそう言うと、肩に乗っているアリナの両手を握った。


「うっ、うぅぅぅ……わぁぁぁぁ!!」


 アリナはラギルスに抱きつき、大声で泣き叫んだ。

 ラギルスは、優しく抱き返し、スクラープ越しに背中をさすった。


 そのタイミングでルリからラギルスに通信が繋げられた。


「こちらルリ。よく守ってくれた。お手柄だ」


「それを言ったらルリさんも、斬ったワイバーンの胴体の軌道を変えてくれたでしょう?」


 ラギルスがワイバーンの首を斬った直後、勢いが止まらなかった首からしたの胴体を横から攻撃を加えたことで、軌道を変えていたのだ。

 その後すぐに持ち場に戻ったが。


「とにかく、そのままアリナに付き添っていてくれ。あとは俺たちがやる」


「分かりました。よろしくお願いします」


 ルリはそう伝えると、近接部隊の指示をジャズに任せ、砲兵の指示をすることにした。

 第4小隊は、2人欠けたのにも関わらず、今以上にいい動きを見せ、怪我人を出さずにワイバーンの討伐に成功した。


 その後、何事もなかったかのように基地へ帰還したが、今朝までの悪い雰囲気は嘘のように消えていた。


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