雰囲気×
朝と夕方に投稿する感じで行こうかなと思っていますが、執筆ペースが追い付かれる可能性大なので不安なとこです。
「倉庫に着いたから探そうと思ったが、見るからにそれっぽいのがあるな」
「量産型は黒色ばっかだからね」
3人が倉庫に着いて早々、真っ白な体に、ピンクの線が何本も描かれているスクラープを見つけた。
ルリとミーナは、かなり変わったデザインに驚いていた。
「アハハ〜。確かにこうやって見ると目立ちますね」
ラギルスは照れ臭そうにそう言う。
「このデザインじゃ標的にされるぞ」
「ルリ並に軽装だね」
2人はスクラープに近づき、色々調べ始めた。
「出力レベルは?」
「通常で5で、6まで出せますね」
「それ以上を出したことは?」
「ないですね」
「まあコツとかで出せるもんじゃないしな。武器は?」
「片手で持てる位の剣ですね。こっちもスクラープと同じデザインです」
この調子で、ルリはスクラープを調べながら、ラギルスに質問を繰り返していった。
「なるほど……戦術の幅が広がるな」
分析し終わったルリは、今後小隊が強くなることを確信した。
「私、役に立ちますか……?」
ラギルスが不安そうに聞いてくる。
「ああ。実際にモンスターと対峙しないと分からないけどな」
「本当ですか!」
役に立つと言われたことが余程嬉しかったのか、声のトーンが上がる。
「前衛が増えることは嬉しい。注意を引いてくれるし」
ミーナもラギルスの加入はありがたいようだ。
「ありがとうございます!」
分からない。
スクラープを見るに、確かに俺と同等の力がある。
だからこそ戦場に? 貴族なのにか? 親が背中を押した?
「どうしたのルリ。ボーっとして」
ミーナは服を引っ張った。
「ん、何でもない。とりあえず俺から案内できるのはこのぐらいだ。何か質問はあるか?」
「大丈夫です!」
「じゃあここで解散だな。明日は新入隊員用に、いつもより難易度の低い任務がある。まあ頑張れ」
「は、はい!」
「それとミーナ。今日1日はラギルスと一緒にいて色々教えてやれ」
「分かった」
「夕飯は全員揃って食うからな。それは忘れるなよ」
ルリはそう言い残し、倉庫の外に行ってしまった。
きっと昨日の疲れが溜まっている体を休めるつもりだろう。
「……どうする?」
「あっ! ミーナさんのスクラープが見たいです!」
「別にいいよ。量産型だけど」
「ありがとうございます!」
ミーナとラギルスは倉庫の奥に歩いていった。
◇ ◇ ◇
あっという間に1日も終わりが近づいてきた。
辺りは暗くなり、G17隊員は夕飯の準備を進めている。
食事をする場所は大食堂と言われる場所であり、長い机と向かいあわせの椅子が何列もあり、厨房と繋がってる窓口で食事を受け取る。
ここでは大きく4つのグループ、つまり小隊ごとに別れて食べる。
各小隊の配膳を待っているメンバーは、新入隊員も混ぜての談笑をしている。
「それでよー……」
「いやそれは……」
第4小隊も今朝の雰囲気とは違い、チラホラ笑顔が見える。
「着いたよ。ここが大食堂」
「おぉ。あっ! 第4小隊の皆さん!」
ミーナとラギルスも、少し遅れて大食堂にやってきた。
「……」
近づいてきた2人を見て、みんなは無言になってしまった。
「ええっと……」
「とりあえず座って。もう少ししたら配膳が始まるから」
戸惑っているラギルスを、ミーナが席に着くよう指示する。
「ここ失礼しますね」
「えっ、あっ、うん……」
ラギルスは騎兵の女隊員の横の席に座り
その隣にミーナが座った。
その隊員はかなり嫌そうだった。
「……」
2人の着席後も、沈黙は続いていた。
「やっぱり私が原因ですよね?」
ラギルスは不安になって、ミーナの耳元で小言で聞いた。
「大丈夫。きっとみんな緊張してるだけ」
「なわけねぇだろ! コイツが貴族だからに決まってんだろ!」
ミーナが答えると、会話が聞こえていたのか、近くの席のマルクが立ち上がった。
「そ、そんな! 私が大きい家の出身かは分かりませんけど、なんでそんなに貴族が嫌なんですか!」
ラギルスも声を張って、貴族を嫌ってる理由を聞く。
「まあ落ち着け2人とも」
ジャズが2人を制す。
マルクは座ってふんぞり返る。
ラギルスも口を閉ざす。
「先に言っとくが、俺たちはお前自体が嫌いなわけじゃねぇからな」
先にラギルスのことが嫌いなわけではないとジャズは伝え、貴族のことについて話し始めた。
「お前も士官学校出てきたなら知ってると思うが、現在の人類が確保している土地の中心地。つまりA地区に工場とか技術力を持ってる人間たちが住んでいて、ソイツらのおかげでスクラープとか物資とかが作られて戦場に運ばれてるよな?」
「はい。私の家も関わっています」
「じゃあ携わっていない人間はどうしているのか」
「ここの人たちのようにモンスターとの戦闘、土地の確保。確保出来た土地での食料作り、様々な材料集めなどです」
「そう。誰かが誰かのために働いてるということが起きている。だから俺たちも人類のため、誰かのためにと必死に何年も戦ってきた。ルリはこの中じゃ最長で6年間もな」
「そんなに長く……」
「そんな時、貴族たちが面白い企画を持ってきた。社会見学? ってやつだ」
「あっ、私も小さい時に1度だけ」
「そうそう。ある程度安全が取れた日に、デケぇ飛行機が何機もやって来てよ。キラキラした格好で眩しく見えたのを今でも覚えてる。人が多すぎて何かの祭りとも思ったな」
「そうですね。数年に1回あるかどうかですから」
「正直そこで俺たちは認めてほしかった。お前たちのおかげで人類は少しずつ前に進んでる。俺たちが作った武器は役に立てているか? とか、とにかく頑張りを認めてほしかったんだよ」
ジャズは少し照れ臭そうに話した。
「だが放った言葉は反吐が出るもんばっかだった。汚いだの臭いだの、とにかく俺たちを見る目はモンスターを見る目と変わらなかった」
「ッ……!」
「これでもかってぐらい言われた。中には飛行機から降りようともしない奴もいた。この基地で何人かは心が壊れちまった」
「……」
「そんな貴族どもに俺たちがはいよろしく一緒に頑張ろうとはならねぇよな」
「そんなことが……」
「だからな、ちゃんと証明してほしい。俺たちと対等に接することができると」
「うぅ……もちろんですぅ……」
ラギルスは涙を流していた。
「おいおいおいっ」
その姿を見てジャズがあたふたする。
ちょうどそこにルリが遅れてやってきた。
「悪い遅れた……どういう状況だ? ミーナ」
「ジャズが泣かせた」
ミーナはラギルスを指さしてそう言った。
「いやいやいやっ。え? 俺が悪いのか?」
「いえ、私が勝手に泣いてるだけなので」
ラギルスは涙を拭い、顔を上げる。
「はぁ、明日から共に戦うんだ。ギスギスして任務に支障は出さないようにしてくれ」
「だからそういうのじゃねぇって!」
「それより、配膳が始まったぞ。早く取りいけ」
話しているうちに配膳が始まっており、他の小隊は並び始めていた。
みんなはガタガタと音を立て席から立ち上がって、配膳の列に並びに行った。
「ちょっと待て」
ラギルスもミーナとともに、最後尾に並ぼうとするのを、ルリは止めた。
「な、何でしょうか?」
「アリナは見たか?」
「いえ、見てません」
「じゃあ、食事を部屋に運んでやってほしい」
「え? 私がですか?」
「ああ、ついでに話でもして仲を深めればいい」
「そんな簡単に仲が深まりますか?」
「深まらないかもだが、0より1の方がいい」
「それはそうかもですが……」
「さっきの会話も、俺たちの事情を知ることができた。それだけでも印象が変わるだろ」
「わ、分かりました! アリナさんと仲良くなります!」
元気な返事をしたラギルスを見て、ルリは少しホッとした顔を見せた。
◇ ◇ ◇
「全然ダメでしたぁ」
「おい」
翌日、C級モンスター『ワイバーン』の討伐任務の準備中、ラギルスは全く会話ができなかったことを告げた。
食事はちゃんと食べていたらしいが。
少しだけ期待した俺が馬鹿だった……。
そのアリナは普通に顔を出して、いつもと変わらない表情をしていたが、所々ボーっとしていることが目立った。
ルリはいつも以上に大変な任務になることを確信した。
『ワイバーン』
・難易度C級
・体長5〜6m
・前脚が翼と一体化している。
・コウモリのような翼と尖った尻尾を持つ。
・飛んでいる時は素早く動き、急降下して攻撃してくる。
・ただし地上では素早さは半減するため、地上に落とせば難易度が下がる。
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