襲撃
最近は執筆頻度上がっている気がする
――ビーッビーッビーッ
ある日の明朝、G17基地全体に聞いたことのないサイレンが鳴り響いた。
「この音……まさかっ」
ルリはベッドから跳ね起き、身支度を一瞬で済ませて部屋を出た。
◇ ◇ ◇
「隊長ッ! レーダーにモンスターが映りました!」
隊長の部屋に、監視塔から大人の隊員が走ってきた。
「来たか」
「いえっ。基地から300m周囲に、モンスターの仕業と思われる木が出現しました!」
「木だと? 肝心のモンスターは?」
「い、今のところレーダーに映ったのは――」
◇ ◇ ◇
「1体だあ?」
「……ああ」
ジャズが何か言いたそうな顔で言ってきた。
ルリは何か異変を感じていた。
「よし。じゃあ作戦を話そうか」
「俺たちもやるぞ」
サイレンで起きて、講堂に集まっていた第4小隊と第1小隊各々に、ルリとレオが指示を出した。
「――なるほど。訓練通りにやるんですね」
訓練通りの動きを指示されたのか、ラギルスは自信満々のようだ。
「今回襲撃してきたモンスターが1体だからな。いい実戦になる」
グラルバも闘気をむき出している。
「お前ら油断するなよ。1体とはいえ、相手はA級モンスター『フォネスト』だ」
ルリが引き締めるよう全体に伝える。
「……大地に蔓延る者」
回復しきったスーリンがそう呟いた。
A級以上のモンスターには二つ名が名付けられている。
A級は、その二つ名で伝わるほどの強さを持つと言われている。
「とにかく作戦通りに動くが、これが実戦で初めての試みだ。少しのミスが命取りになる。気張っていけよ」
「応ッ!」
ルリの、冷静だが熱い言葉に、隊員たちは気合を入れた。
『大地に蔓延る者 フォネスト』
・難易度A級
・木が大量に絡まっているような見た目をしており、4本の頑丈な足で、巨体を支えている。
・全長15mほど。
・中心に、体相応の大きで、赤い蕾のような格があります破壊すれば活動が停止される。
・体から木を無数に生やし、鞭のように自在に操ることも、自身より一回り小さい分身体を生み出すこともできる。
◇ ◇ ◇
「やはり早めに準備していて正解だったな」
司令室に移動した隊長が、モニターに映る映像を見てそう言った。
モニターに映すカメラは至る所に設置されており、戦況を逐一把握できる。
また、モンスターの反応を感知することができるレーダーに、基地の周囲の範囲内で、スクラープも精密に感知できる機能を追加したので、味方にも指示を出しやすくなっている。
「防衛設備の調子はどうだ」
隊長の質問に、男隊員が答える。
「はっ。外壁、監視塔、バリケードにトラップ。すべて正常です」
司令室はやや広くなっており、何人もの優秀な隊員が配置されている。
もちろん全員大人だ。
「部隊の配置はどうだ」
今度は女隊員が答えた。
「はいっ。敵モンスター『フォネスト』の方角に、レオが率いる第1小隊。並びに、ルリが率いる第4小隊が配置。問題ありません。『フォネスト』を正面に、右にナグールが率いる第3小隊。左にエイリーンが率いる第2小隊が配置。こちらも問題ありません」
「よし」
「後方は部隊を配置しなくてよろしいのですか?」
別の女隊員が聞いてきた。
「問題ない。後方は防衛設備、迎撃装置が部隊のいる方面より優れているからな。今後の襲撃までには全方面に反映させるつもりだ」
「はっ。失礼しました」
女隊員は敬礼し、モニターに向き直る。
「さて、上手くいくかどうか……」
隊長は確認を済ますと、ドカッと椅子に座った。
◇ ◇ ◇
「こちらルリ。第4小隊配置よし」
「こちらレオ。第1小隊配置よし」
「こちらナグール! 第3小隊配置よーし!」
「こちらエイリーン。第2小隊配置よ~し」
「こちら司令室。設備に異常なし。いつでもいけます」
通信を繋げ、G17隊総員の戦闘準備が完了したことを伝える。
その報告を受けた隊長が、基地のアナウンスを使って話し始めた。
「――こちらG17隊隊長、ケイリスだ。戦い始める前に伝えておくことがある」
スクラープを装備している隊員たちは、隊長の言葉に耳を傾ける。
「この戦いはあくまで防衛戦だ。もし危険が迫ったら、何振りかまわず避難しろ。勝利の前に、自分の命を優先しろ」
部下思いの言葉に、ほとんどの隊員が心打たれた。
「――総員! 必ず生き残り! この戦いに勝利するぞぉ!」
「うおおおおおおおっ!!!」
最後に活を入れ、隊員たちの士気は最高潮になった。
「……流石、戦地に立っていただけあるな。士気の上げ方がよく分かってる」
ルリはボソッと呟いた。
――ゴゴゴゴゴゴッ
そのとき、隊員たちの声に呼応するように、地面が唸りを上げた。
しかし慌てる様子はなく、全員が意識をフォネストに向けた。
「――来るぞ」
「キュイイイイインッ!!!」
甲高い音が鳴り響く。
きっとフォネストの叫び声だろう。
「ッ……!」
「……」
「……?」
隊員たちは身構えるが、何も起こる様子がない。
「――あれ? 攻めてこない?」
静寂に包まれた空気が、一瞬でざわざわしと騒ぎ出した。
「おいっ! お前ら気を抜く――」
――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
先ほどより、近くで地面が振動しているのが分かった。
次の瞬間――。
「キュイイインッ!」
「隊長! 周囲の地面から、フォネストの分身体と思われるモンスター多数出現! 急接近してきます!」
司令室で、女隊員が隊長に向かって叫んだ。
レーダーには赤い点が基地を囲むように示されていた。
「部隊はまだ待機するよう伝えろ! 我々は迫撃砲の準備を進める!」
「はっ!」
まずはコイツで様子見だ。
◇ ◇ ◇
「おいルリ! まだ動かないのかよ!」
モンスターの出現を見て、マルクが怒鳴る。
「俺たちはまだ待機だそうだ。決して慌てることなよ」
ルリはそう言うが、ほとんどの隊員は焦っていた。
スクラープを装備した隊員は、外壁の外に配置されている。
目の前にあるのは金網フェンスと塹壕、そしてスパイクなどを使ったトラップだけだ。
「僕たちも待機だよ。最悪僕が先頭に出るから落ち着くように」
レオは余裕そうな態度で、部下にそう言った。
それを聞いた部下は、多少は落ち着きを取り戻したが、死神の件もあるか、まだ焦りの方が大きい。
「にしても、一体何をするつもりなんだか」
アリナは頭の後ろで腕を組んでいる。
自信はあるようだ。
「外壁の中から音が聞こえてくるので、破壊力のある兵器を準備しているかもしれませんね」
「さっすがラギルスっ! 頭のいいんだね~」
白いスクラープを装備したラギルスに、アリナは抱き着いた。
「おいお前らイチャイチャするなぁ!」
その様子を見たジャズが、遊びじゃないんだぞと怒鳴った。
「うるさっ。短気は早死にするよ~」
「この野郎……」
「はいはいそこまで。いつでも出撃できるようにしとこうよ」
ラトが2人の間に入る。
「お前らそろそろ来るぞ。デカい音が嫌な奴は注意しろ」
ルリが頭上を見上げた。
「――撃てぇ!」
隊長の一声で、迫撃砲が一斉に弾を放った。
ドンッという音が何重にも重なり、先ほどの地響きと同等の音が周囲に響いた。
「うおっ……っておいアレ!」
誰かが空を指さし叫んだ。
音に驚いた隊員たちが、恐る恐る空を見上げると、黒い点が放物線を描き、向かってくる分身体の元へ落ちていった。
「迫撃砲か……第4小隊! 出撃準備!」
「お、応ッ!」
黒い点が地面に着く直前、ルリが出撃準備の掛け声をかける。
「じゃあこっちも……第1小隊出撃準備!」
「応ッ!」
レオも続いて声をかける。
第1、4小隊全員がいつでも出れるようにしたそのとき、基地を囲むように爆炎が上がった。
「行くぞぉ!」
「おおおおおおおっ!!!」
ルリの掛け声を皮切りに、第4小隊は出撃した。
「僕たちも出るぞ!」
「うおおおおおおっ!!!」
第1小隊も、レオを先頭に出撃した。
「『雁行の陣』だ!近接部隊は俺に続け! 少し離れた位置に砲兵! 狙撃手は塹壕到着後、指示を待て!」
「応ッ!」
役割ごとに陣形を変えていく。
騎兵は、外壁の中で設備の操作を任されているので指示する必要はない。
「陣形揃いました!」
ラギルスが陣形が変化したことを確認して、ルリに報告した。
第4小隊は右上から左下に向かうような、斜めの陣形になった。
砲兵は横一列になり、狙撃手は塹壕に入った。
『雁行の陣』とは、他の陣形と合わせると強力になる陣形である。
今回は、砲兵に一般的な陣形である『横陣』を使わせて合わせる。
また、壁役としても成り立つことができる。
「第1小隊も! 第4小隊と鏡合わせの陣形だ!」
「応ッ!」
第1小隊も、第4小隊と同じような陣形を取った。
唯一違うところは、近接部隊の『雁行の陣』が、左上から右下に向かうような形になっていること。
「チッ、真似しやがって……」
ルリは似たような陣形を取られて舌打ちした。
「こちらレオ。今真似されたと思って苛立ってるでしょ?」
レオからの通信が来て、ルリは余計苛立った。
「何の用だ?」
「まあそんな怒らないで。こうすることで、この陣形は進化するのさ」
「……まさか」
ルリはレオのやろうとしたことが分かったようだ。
「じゃあ目標はフォネストということで。何かあったら連絡するようにね」
爽やかにそう言ったレオは通信を切った。
「チッ、今回はアイツの策に合わせるか」
「こちらルリ! 近接部隊並びに砲兵に告ぐ!」
「こちらレオ! 近接部隊並びに砲兵に告ぐ!」
通信を切った2人は、一言一句同じ言葉を各小隊に告げた。
「「陣を中心に寄せろ!」」
読んでくださりありがとうございました!
よければブックマーク、評価お願いします!




