20年
そろそろストーリーが進みます。多分……。
「まだか……!」
襲ってきたフォーンを全滅させたルリ部隊は、通信があったレオ部隊が出撃した方向に向かっていた。
策が上手くハマり、全員無傷で討伐した隊員たちは、猛スピードで援護に向かっている。
「ちょっとルリ速いよ〜!」
ラトの言う通り、隊員たちと少しづつルリとの距離が空いてきている。
「……部隊各員、お前らは仮拠点に向かって森からの脱出準備をするようにしろ」
その様子を見たルリは、少し考えるような素振りを見せると、別行動の指示を出してきた。
「ちょっと待ってくれ! 1人でどうにかするのは無茶だ!」
パトリッドがルリを止めようとした。
そもそも、ルリは援護に行くと行ったが、死者が出たとは言っていない。
ここでそれを言ってしまえば、士気に影響が出てしまうだろう。
「確認したが、今レオ部隊は仮拠点に退却しながら戦っている。ここは仮拠点で迎撃準備や、森からの脱出準備を整えるべきだ」
「誰が指示を出すの?」
ずっと黙っていたミーナが口を出した。
「そうだ! レオに続いて君がいなくなったら誰が指示を出すんだ!」
パトリッドも便乗した。
「いるだろ適任が」
ルリは分かりきったような口ぶりでそう言った。
「では後で会おう。これより第4小隊小隊長ルリは、単独行動を開始する」
「いやまだ言いたいことが――」
パトリッドの言葉を無視して、ルリはターボグライド全開で走っていってしまった。
「はぁ……いつもあんな感じなのか?」
ため息をついたパトリッドは、ミーナに聞いた。
「うん。でも、私たちを信用してるからこそだから」
「?」
◇ ◇ ◇
「ハァアアアッ!」
逆走したレオは、死神に斬りかかった。
「ちょっと待て!」
アランは叫んだが、もうレオは止まらない。
全速力で走っているため、すぐに距離が空いてしまった。
「ど、どうするの!?」
ダルカンはアランに判断を委ねる。
「クソッ! 俺が呼び戻してくる! 先に行け!」
アランは急ブレーキをかけ、急いでレオの所に戻ろうと逆走し始めた。
「アランさんっ!」
リャオがアランの名を叫んでいたが、すぐに聞こえなくなってしまう。
レオが戦ってくれるおかげで、きっとアイツらは仮拠点に着くだろう。
だが、レオが勝って戻ってくる確証はない。
だからと言って俺にできることは……なくはない。
「使うならここか」
そう言うアランの手には、フラッシュグレネードがあった。
誰にも言ってなかった、もう1個のフラッシュグレネード。
「ぐっ……!」
背中がズキリと傷んだ。
まさかさっき庇ったときに……。
「……」
◇ ◇ ◇
「ハァ、ハァ」
レオは度重なる攻撃で、完全に死神の足を止めることができた。
「もう、みんな行ったかな?」
後ろを振り返ると、誰の姿も見えなかった。
「……やっといなくなったか。これで本気を出せる」
ジャイアントサーペントのときのように、レオの雰囲気が変わった。
「ウゥ……?」
死神も異変に気づき、身構えた。
「行くぞ?」
確認を取るようなことを言うと、先ほどとは全く別の戦闘スタイルで、死神に攻撃を始めた。
「フフフッ……」
四方八方から斬撃を浴びせるレオ。
瞬間移動する暇もなく、防御するしかない死神。
見るからに、有利なのはレオだった。
「アハハハハハッ!」
逆走した際に言っていたことは何だったのかと思わせるような、高らかな笑い声をあげる。
「やっぱり1人で戦う方がいいなぁ!」
それもそのはず、今のレオの戦い方は、場を広く使った相手が予想もつかないような動きをするのだ。
集団戦では、目の敵にされる戦い方である。
「まあアイツなら合わせるだろうけど」
レオはボソッと呟くと、更に加速した。
「グッ......」
あの死神も、流石に限界のようだ。
「これでトドメだ――」
一瞬レオの姿が消えたと思うと、死神の懐に忍び込み、剣を腹に突き刺していた。
「アッ……」
死神の腹部から、紫色の血が噴き出した。
「フンッ!」
レオはそれを確認すると、剣を一気に引き抜いた。
「ウゥ……ゥ」
死神は膝をついた。
今も紫色の血が流れ、地にボトボトと落ちている。
「まあ本気を出せばこんなもんか……」
少しガッカリしてるレオは、剣を振り下ろし、付着した血を払った。
「おいっ!」
その直後、レオの後ろ、つまり部隊が逃げてる方向からアランが追いついてきた。
その姿を見たレオは、いつものような態度に戻った。
「どうしたんだい? コイツなら討伐したから安心して――」
「違う! ソイツはスクラープを纏ってるんだ!」
アランは、レオの言葉を遮った。
「……まさかっ!」
アランの言いたいことが理解したレオは、バッと死神の方を見る。
「ウオオオオオオオッ!」
死神は今までで1番大きい雄叫びを上げた。
「くっ......!」
レオは異変を感じ、後ろへ飛び退いた。
「ウゥ……」
死神は立ち上がった。
体に白い光をまとった状態で。
◇ ◇ ◇
「確かに、あの滑るような走り方。斬った感触。スクラープを着てると言えば辻褄が合うね」
レオは冷静に解説しているが、息を切らしている。
「ああ、しかも今のアイツの姿」
「「スクラープの出力上昇」」
2人は声を揃えて言った。
「あの中身は人間ということか?」
「いや、僕が刺したところから流れた血は紫色だ。今は人間じゃないはずだ」
「今?」
「昔は人間で、いつの間にかモンスターになってたみたいな話。じゃなきゃ瞬間移動なんて使えないでしょ」
「……だったら、俺たちもいつかああなるのか?」
「それは……」
「ウオオオオオオオッ!!」
とんでもない結論に繋がろうとしたとき、しびれを切らしたのか、死神が攻撃を仕掛けてきた。
「この話は勝った後にしようか」
「勝てるのか?」
「正直怪しい。君も自分の身は自分で守ってくれ」
「はいはい」
アランはそう言うと、ターボグライドで後ろへ大きく下がった。
逆にレオは剣を振り上げて前へ上がった。
正直援護すらできるか怪しい。
変に意識させて瞬間移動されたらアウト。
俺はここぞという時に介入しよう。
アランはそのまま茂みに入っていった。
「賢明な判断だ、なっ!」
レオは死神に向かって剣を振り下ろした。
「……あ?」
しかし剣は死神にたどり着くことなく、右から振り回された大鎌によって、吹っ飛ばされた。
「嘘だろ……」
茂みに潜んでいたアランは、ただその光景を見ているだけだった。
出力レベルが上がったとはいえ、あそこまで速くなるのか?
「がっ……」
レオは受身を取れずに、ゴロゴロと転がってしまう。
幸い、柄の部分に当たったので斬られてはいないようだ。
「ウオオオオッ!」
しかし死神は、とんでもない速さで追撃に来る。
「やむを得ない!」
アランは、茂みから立ち上がってフラッシュグレネードを構える。
「こっちを見ろぉ!」
大声を上げて死神の注意を引く。
「ウゥ?」
死神は足を止めて振り返る。
すでにアランの手からはフラッシュグレネードが放られており、辺りを光が包み込む。
「グッ…………ウゥ?」
目の眩みが解けた死神は、辺りを見渡した。
そこにはアランの姿も、倒れていたレオの姿もなくなっていた。
目が眩んでいる隙に逃げられたのだ。
「グゥゥウオオオオオオオッ!!!」
怒りの雄叫びが、森中に響き渡った。
◇ ◇ ◇
「ハァ、ハァ……!」
アランは、レオを引きずりながら逃げていた。
「うぅ……クソッ……」
レオはまだ意識が残っていた。
度重なる連戦で消費していたレオが、あの化け物に勝てるわけない。
性格が変わるほどの戦い方の変更は、かなり体力を消耗するだろうしな。
もう勝機はないから逃げるしかない。
だが……。
「なっ、お前ッ……」
レオは逃げた跡に血痕が目立つと思ったが、そこまで血を流していない。
スクラープの隙間から少し垂れる程度で、出血は抑えられている。
そう、この血はアランから出ていたのだ。
「ハッ、庇ったときに喰らっちまった」
先ほど狙撃手を庇ったときに脇腹を斬られていたようだ。
今すぐに治療しなければいけないほどの深手だ。
「そのままじゃお前……」
「死ぬ、だろうな。だが、まだやれることはある」
アランはそう言うと、走っているスピードを緩めて、木にレオの体を預けた。
「どういう、つもりだ……」
「どうもこうも、ない。お前を逃がす」
アランは脇腹を押さえながら、逃げてきた道を振り返った。
「だが――」
「言ったよな? 俺が指示を出すって」
「くっ……」
「まあ、俺ごときが十分な時間を、稼げるわけでは、ないからな。走れるようになったら、早く逃げてくれ」
そう言うと、アランはゆっくりと逃げた道を戻っていった。
「待て……ぐっ!」
レオは起き上がろうとしたが、まだ体の言うことが聞かなかった。
◇ ◇ ◇
「ハァ、ハァ」
不味いな。
体が寒くなってきた。
「ゴフッ……!」
スクラープの顔パーツの隙間から、血が噴き出した。
そういえば、もう20歳なのか。
17のときに所属になったから、3年も生き残れたのか。
「ハァ、ハァ……ハハッ」
どうせなら誰かに見届けてもらいたかった、なんて思ってたりしてな。
まあ、1人でそっと死ぬのもありか。
アランの脳内には、走馬灯のようなものが流れていた。
「ウゥゥゥ……」
いつの間にか、追ってきた死神が、アランの目の前にいた。
声色から相当イラついていることが分かった。
これは怖いな。
死神をいざ見上げると、絶対に勝てないほどの絶望を感じた。
それでもなけなしの力を振り絞って、銃を構える。
まあこんな世界で、20年も生きられただけで満足か。
いや……。
まだ20年か……。
「ウオオオオオオオッ!!」
またもや、森中に雄叫びが響き渡った。
読んでくださりありがとうございました!
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