兆し
不定期投稿ですみません。
「え......? な、んで......」
――ズシャッ。
人型モンスター、いや、ここからは死神と呼ぶことにしよう。
死神は、第1小隊の砲兵に刺した刃を引き抜いた。
砲兵は膝から崩れ落ち、倒れてしまった。
刺された箇所から血が溢れ出てきている。
「ウゥ......」
死神は引き抜いた大鎌を振り上げた。
「目を閉じろ!」
アランが声を荒らげた。
隊員たちは、反射的に目を瞑った。
アランの手に握られていたのは、グレネードのような物だった。
それを放り投げた直後、辺りが光に包まれた。
「ァ......」
死神は目が眩み、その場で混乱している。
「ダルカン!」
予め話を合わせていただろうダルカンが、アランの合図で死神に突進する。
「フンッ!」
その勢いのまま、武器の槌矛でぶん殴った。
15mほど吹き飛んだ死神は、少し足元がおぼつかないのか、大鎌を杖代わりにしている。
流石のパワーだ。
「スーリン!」
「あ、ああ!」
スーリンが、アランの合図で死神に追加攻撃を仕掛ける。
さっき言っていたのはこのことか!
『スーリン、ダルカン。2人にだけ話しておくことがある』
『? 陣形については今話しただろう?』
『これから先、もしものことがあったら、俺はフラッシュグレネードを使うつもりだ』
『も、もしものことって......』
『死を覚悟するようなことだ』
『数は?』
『2』
『私たちはどう動けばいい?』
『お前たち2人には――』
「ハアアアアッ!!」
目が眩んだ相手をダルカンが吹き飛ばし、立て直される前に私が追撃する。
これは倒す策ではなく、退却のための策だ。
策が順調に進んでいる中、スーリンは激しく後悔していた。
私の決断がもっと早ければ、死神と遭遇することもなかったかもしれない。
私が優秀だったら、対抗策を考えて、あの子を死なせずに済んだかもしれない。
私がもっと強ければ......。
強ければ!
「スクラープ出力上昇......レベル5!」
スーリンは、死神の手前でスクラープの出力レベルを5に上げた。
「ハッ!!」
死神の左肩から斜めに、剣を振り落とした。
「ウウッ!?」
まだ視界が取れない死神は、スーリンの攻撃をモロに食らった。
行ける!
「ハァアアアアアッ!」
間髪入れずに、あらゆる方向から斬撃を浴びせる。
死神はなかなか倒れないが、相当怯んでいるように見えた。
まだ出力レベル上昇に慣れてない。
体がどんどん重くなっていくのを感じる。
それでも手を止めるな。
とにかく剣を振れ。
スーリンは、呼吸を忘れるほどの集中力を保ちながら斬撃を浴びせる。
しかし、流石に限界が近づいてきたのか、視界が狭まってきているのを感じ取った。
「クッ............ハッ」
スーリンは一瞬だけ呼吸をし、攻撃を継続しようとした。
その瞬間、スーリンの視点が90度回転した。
「???」
何が起こった?
倒れたのか?
呼吸をしなさすぎた?
早く、立たなければ......。
まず呼吸を整え、て。
「スーリン!!!」
アランやダルカンが名前を呼んでいる。
「大、丈......」
スーリンは言い切る前に白目を向いて気を失ってしまった。
なぜその光景が見えたのか、それはスーリンのスクラープの顔のパーツの左半分が破壊されていたからだ。
呼吸をした一瞬、死神は大鎌を凄まじい速さで叩きつけたのだ。
反射的に盾でガードしたが、力でねじ伏せられ、左腕がひしゃげてしまった。
そしてその勢いのまま倒れ、今に至る。
「オォ......」
トドメを刺そうとすると大鎌を振り上げる。
「貴様ァ! よくも第1小隊の隊員を!」
その瞬間、目の眩みが治まったレオが、死神に迫っていた。
「ッ......ウォォォオ!」
トドメを刺す余裕がなくなった死神は、レオを迎え撃つため構える。
「......チャンスだ! 今動ける者はいるか!」
アランは死神がレオに集中している間に、退却の準備をしようとした。
が、振り向いたアランの目に映ったのは、明らかに士気が下がり切った隊員の姿だった。
「お前ら何ボサっとしている! 退却だ! 逃げるんだよ!」
アランの指示により、なんとか第4小隊の砲兵は動ける兆しを見せた。
しかし第1小隊は、完全に腰が引けているように見えた。
尻もちをついて、立ち上がる様子を見せない。
この調子じゃまともに逃げることも......。
「おい立て! このままじゃ全滅だ! あの高速移動のカラクリが分からない以上、1人ずつ潰されるのがオチだ!」
「ダルカン!」
「は、はい!」
ダルカンはいきなり呼びかけられてつい敬語になってしまう。
「スーリンを助け出して即退却するぞ。手伝え!」
「う、うん!」
「リャオ!」
「え? 私!?」
もう1人の第4小隊の砲兵の名前だ。
「なんとかコイツらを立ち直させてくれ。全員で生きて帰るぞ。ソイツもまだ生きている」
先ほど倒れた第1小隊の砲兵は、別の隊員に抱えられながらも生きながらえている。
「わ、分かった!」
「行くぞダルカン!」
「応ッ!」
2人は意を決して、死神の元へ向かった。
◇ ◇ ◇
「なるほど......分かった」
グラルバは誰かと通信を取ったと思うと、すぐに切って部隊全員に指示を出した。
「仮拠点に向け、退却する。全員回れ右だ」
「はぁ? 急に何言ってるんだよ」
マルクが不満の声を上げたが、グラルバは無視して、退却の準備をする。
「ふぅ......」
しかしグラルバは、戦う直前の雰囲気を醸し出していた。
嫌な予感がする。
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