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【夢想世界】  作者:
第零章
4/16

夢の中・二『ストンと、落ちゆく』





 苦しそうに呻くイーグスに触れると、牢屋に居たというのに空があり、風がある場所で寝転がっていた。広々とした場所には城があり、行くあてもなく城の中に入り黒髪の男と交戦。圧倒的な力を天才魔法使い(笑)として見せつけたが呆気なく敗れ、覚悟を問われる。覚悟を証明して数秒後、戦っていた男は笑い転げ今度は銀髪の男……オリアスが現れる。オリアスについて行った先で、六人の人物と出会う。


 聞かされたのは『此処は【夢想世界】、イーグスの夢の中だよ』というめちゃくちゃな話。


 そして今【夢想世界】の住民達が各々に自己紹介を始めた。




「私からだな。名は”アカ”と名付けられた(・・・・・・)

 歳は千から数えていない。

 得物はこの【全槍(ぜんそう)】。私の”宝具(ほうぐ)”だ。

 戦闘あまり得意ではないが、人を見る目には自信がある。

 ジークは素直で良い子だな。

 うむ、もう話すことは無い。私をよろしくしてやってくれ」





 ……何を言っているんだ。

 わからないままにするのは五年前から気持ち悪いので、一つ一つ整理していこう。

 先ず、名前はアカだ。髪が紅色だから覚えやすいな。

 名付けられた、というのは一度置いておこう。

 得物、使う武器は右手で自慢げに掲げている

 変哲もない槍(・・・・・・)だろう。

 何処からどう見ても普通の槍である。


 ほうぐ、聞き覚えのない言葉だ。

 ともかくあの変哲もない槍はほうぐという事だな。

 そして戦闘は得意ではなく人を見る目には自信があると。

 オレの名前を知っていることは置いて、素直と評した。

 素直……、まぁ、素直なのか?

 更に1000歳から数えてない、と。





 ――――不採用で。


 使用人の面接だったら不採用だ。

 が、これは面接ではないので勝手に次のやつが名乗り始めた。


 オレを突然攻撃してきた黒髪髪の男が。

 

 

「先程はどうも、あっしは”ヒュウガ”と申しやす。

 姉御に倣って言うなら歳は二十三で、

 得物はこの”魔銃(まじゅう)”です。

 戦闘は好きではありやすが、此処に居る中じゃ下から四番目の強さですねぇ。

 先程のことは水に流して仲良くしやしょう」



 胡散臭い笑みを見せる男はヒュウガ。

 使う武器は戦闘の際に攻撃してきた黒光りするモノ。

 まじゅう、か。

 魔の獣と書いて”魔獣(まじゅう)”と呼ばれる生き物は居るが、それとはまた別だろう。


 しかし、四番目の強さか(・・・・・・・)

 それは、オレを含めているんだろうか……。


 疑問など知ったことかと、太陽のように明るい金色の髪を持つ男が大声を出す。



「僕の名前は”アヴァロン”!!二十一歳!!! よろしくね!!!」



 ……終わった。

 誰よりも簡潔だ。

 そして元気がいい、採用だ。

 こういう男を待っていたんだ。


 などと内心ふざけていると、アヴァロンの横に座っている黒髪の子供が眉を顰めながら声を出す。



「……おれはシュラだ。五歳の頃からここに居るから今は十歳。たぶん同い年ぐらいだよな? よろしくな、ジーク」


 ふむ、同い年で一番此処にいる中でマトモだ。


「あぁ、よろしく頼む。シュラか、いい名前だ」

「おう、”サンキュー”」

「……さんきゅー?」


 初めて聞く言葉に首を傾げると、シュラは頭を搔く。


「あー、ありがとうって意味だ」

「……そうか」


 訳が分からない。

 普通にありがとうと言えば良いのだが……、おそらくさんきゅーという言葉に慣れているのだろう。

 一種の癖と考えてもいいか。

 それならばなんとも言えない。

 オレにも名前を知らない奴にゴミと言ってしまう癖があるのだから。

 


 オリアスが次は俺の番とばかりに口を開く。



「みんなと仲良くできそうだね。では、改めて俺も自己紹介をしよう。名はオリアスと名付けられ、歳は二十五。武器は……ジークと同じように魔法かな。これぐらい、だね。よろしく、ジーク」



 頷きを返す。

 やはり、”意味のわからない感情に支配される”。

 不確かな感情から目を背け、この場にいる全員に視線を向ける。


 アカ、紅い髪の素っ頓狂な表情をしている美女。


 ヒュウガ、戦闘を仕掛けて来たやつ。見透かした視線を向けくる関わりたくないヤツ。


 アヴァロン、太陽のように明るい金色の髪を持つ男。何処かイーグスに似ている。イーグスが似た可能性の方が高いか。


 シュラ、同い年。黒い髪の子供で、この部屋に入った時からアヴァロンに”本当の殺意”を向けている。オレがクソ親共に向けていた視線と同じだ。


 オリアス。

 見透かす目線とは違い、

 最初からわかっている(・・・・・・・・・・)といった目線で。

 コイツは全てを知っているのかと不確かな感覚に陥る。


 一つ決めた。

 あまり、”オリアスを見ないようにしよう”と。

 理解できない感情を抱くから。


 最後に、イーグス。

 居心地が悪そうにオレを見ている。

 目線が合うと逸らす。

 嫌われるようなことはしていない。

 イーグスの問題だろう。

 この状況を受け止め切れないようだ。


 だからオレは、気負う必要は無いと全員に声をかける。




「――――で、なんだ?」 


 心の内をぶつける。

 自己紹介をされたところでなんだという話だ。

 オレは、此処で何をしたら良いんだ。

 ”イーグスを笑わせることはできるのか?”そう聞く。


 理解できたのは四人の異物だけ。

 シュラとイーグスは言われた意味がわかっていないような顔だ。


 金色の男が嬉しそうに声を上げる。


「凄い! 凄いよジーク君! それでこそ英雄の器(・・・・)だね!!」


 紅い髪の女は全てを理解したように頷く。

 直感が告げる”何も理解してない”と。

 なんのことかわからないが、こんなどうでもいい時に働かないで欲しい。


「あぁ、そうだな。ジークは偉い」


 まじゅうと言った武器をテーブルの上に置き、見透かしたように見る男は不気味な笑みを見せる。


「えぇ、話やしょう。茶髪の坊が何をすべきか(・・・・・・)


 銀の髪を揺らし、此方に歩いて来る男は不敵に笑いながら手を広げる。


「歓迎するよジーク、【英雄の特訓】に」


 優雅に広げていた右手を左胸に置き、男は頭を下げる。




「どうかお願いだ――――イーグスを、



      強くしてくれ(・・・・・・)

 

 















 ――――静まった広間にて。


 耳を傾け、イーグスの話を聞いていた。




 五年ほど前、イーグスは身体が弱くずっと寝ていたようだ。

 ある日突然、この世界に舞い降りた。

 其処には五人が居て、皆は呼ばれて(・・・・)此処に来たようだ。

 誰に呼ばれたのか、それは各々が違う。

 

 女神に、願いの塊に、か弱き少女に、白い光に。

 そして、妹に呼ばれたと。


 最後のはイーグス曰く『シュラくんは妹さんに「助けて」って言われて来たんだって、みんなよくわからないんだよね』とのこと。


 まぁ、よくわからない。

 説明が下手なせいもあっても理解出来ないことの方が多い。



 だが、そこからがもっとよく分からないことを言うんだ。




 なんでも、”全員が違う世界から来た”ようだ。

 何言ってんだお前って感じで、とても信じれることでは無い。


 しかし、同時に心の中で納得をした。

 ほうぐ、まじゅうという武器。

 それに、オリアスが見せた銀色の魔力。


 なるほど、別の世界……別の理を持つ者なら知らない武器、知らない魔力を扱ってもおかしくはないかと。


 

 

「それでね、アヴァロンは別の世界での”騎士王”でオリアスは”神様”だったみたい。ヒュウガとアカはいまだに教えてくれないや。あっ、シュラくんは道場の子だって」


 道場、か。

 一応あるにはあるが、何処も廃れていると使用人の一人が言っていたな。魔法をあまり扱えない者が集まる場所で、武術を学ぶ場所。


 だが、魔法の前に武術など意味を持たないので人気では無い。更に上位の魔法使いは【身体強化】を使うので、武術など”使えない”と言われている。


 だから道場なんて誰も行かず、廃れていく。


 だが、オレはそうは思わない。

 【身体強化】をしてその武術とやらを扱えば、ただ【身体強化】をしている魔法使いには勝てると思っているから。

 ちなみにオレは【身体強化】を使わない。

 とある本に書かれていた。

 子供の頃から【身体強化】を使うと背が伸びないと。

 やろうと思えば感覚でできると思うが……。



 ともあれ、シュラが道場の子だということは納得した。

 しかし後の二人はなんだ。

 騎士王とか、神様だとか。

 

 確かにだ、オリアスはそれとなく感じるものはある。

 だがあの声が大きいやつは、王様って感じじゃないだろ。

 まぁあまり知らないので、深くは何も言えないが。


 イーグスは不思議そうな顔でオレを見る。

 


「……どうしてジークは此処に来たんだろ」


 その疑問には答えられる。


「苦しそうにしているイーグスに、オレが触れたからだろう」


 あ、そうなんだ。寝ているぼくに触れると此処に来れるんだね、と言い笑顔を見せるがすぐにまた不思議そうな顔になる。


「……あれ? それだと、


  どうして、リューネは(・・・・・・・・・・)来てないんだろ?(・・・・・・・・)


 …………そういえば、あのアフォリューネはイーグスに膝枕をしていたな。

 わからないな、此処に来る条件が寝ているイーグスに触れるとしたらアフォリューネも此処に来ているはずだ。

 確認のために聞く


「来てないのか?」

「うん、オリアスが言わないから来てないと思う。ジークが来た時にはすぐに言ったからね『ジークがこの世界に来た』って。ほんとびっくりしたよ、待ってたらジーク来ちゃうんだもん」


 どうしてか嬉しそうに話すイーグスを横目に、思考を回す。

 

 不可思議だ。

 本当に考えれば考えるほど訳がわからなくなる。

 オレが此処に来たのも、リューネが来ないのも。

 この世界も、全てがわからない。


 埒が明かないと考え、立ち上がる。


「すまんイーグス、用事が出来た」

「あ、うん。またねジーク」

「あぁ」


 向かう先は、先程までいた場所。

 イーグス曰く”食堂”と呼ばれる場所だ。














 ガヤガヤと扉の前で数人の声が聞こえる。


「――――だからなんなんだよクソ異常者! ”心で(えが)け”って! もっとわかりやすく言えや!!」

「はっはっはっ!! 駄目だよシュラ君!! それは力で描いてるんだ!! もっと心を込めて!!」

「うむ、心を込めるんだ。熱く滾るような気持ちで書いてみろ。おのずと描けるようになる」

「うっせぇ! お前書けてねぇだろうが!!」


 ……とにかくうるさい。

 扉を開けるのを躊躇うぐらいには。


 ゆっくりと力なく扉の取っ手に手をかけを引く。

 目に入るのは大きなテーブルを囲うように椅子に座っている五人。

 右側の前からアカ、ヒュウガ、オリアスが座っている。

 左側の前からアヴァロン、シュラが居る。


 テーブルを挟んでシュラがアカに怒り散らかしている、手に石版を持って。


「テメェ一文字(ひともじ)も書けてねぇ癖に偉そうに言うなや!! なんでそんな胸張って言えんだよ! このクソ異常者が!」

「……ふむ、そうなのか?」

「そうだろうが!」

「それはすまなかった。私はてっきり描けていると思っていたが……違うのか、残念だ」


 何の話をしているのかサッパリだ。

 だがとてつもなくアカが残念そうな顔をしているのはわかる。

 シュラは何かを堪えるようにアカを睨み、手に持った石版を乱暴にテーブルへガツッと置く。


 そして、オレに気づく。

 怒り顔から一転、気楽な顔となる。


「おうジーク、まぁ座れよ。立ってても疲れるだけだろ」


 感情の起伏が激しいが、友好的に接してくれるので無下には出来ない。

 歩いていき、シュラの横……オリアスの前に座る。

 

「聞いてくれよジーク、このクソ異常者が”指で石版に絵を描け”とか言うんだぜ。マジで意味わかんねぇよな」


 友好的に話され頷いておく。

 ジークがテーブルに置いた石版を見る、硬そうだな。

 なんだその無理難題、しかもさっき『心で描け』とかシュラが叫んでたな。頭おかしい。やっぱ王様じゃねぇだろ。

 クソ異常者と指を指されているアヴァロンは、ジーク越しに見る限り『間違ったことは言ってないよ』と言わんばかりに笑顔で胸を張っている。再度心中で言うが頭おかしいな。


「僕は間違ったことを言ってないよ!!」


 しかも言いやがった。

 顔に次喋ることが書かれてんのか。

 予測できたぞ。


「喋んな!うっせぇ! テメェの存在が間違ってんだよ! クソ異常者が!」


 うーん、辛辣。

 あなたも声が大きいですわよ、シュラ君。

 そう思うが口では言わない、気を悪くしたらいけないからな。


「シュラ、それ借りて良いか」

「ん? あぁいいぜ、てかあげるわ」


 抵抗なく渡された石版を見ながら、シュラの口頭を真似る。


「あぁ、さんきゅー」

「お、おう。別に無理して使わくていいぜ」

「何故か気に入った。気を悪くしたか?」

「い、いや、それはねぇけど……おう」

 

 少し照れくさそうに頬を搔くシュラを視界の端に入れながらも石版を然りと見る。


 ”心で描け”と直感に告げられる。

 この感覚は久しい。

 魔法の使い方を覚え始めた頃、聞いてもいないのに告げてくる直感。

 まるで、オレに力をつけろ(・・・・・・・・)と言わんばかりに。


 考える、『心で描け』とは何か。

 ”願いを力にする”、そう告げてきた。

 願いを力に、か。

 

「かてぇだろソレ、馬鹿なんだよソレに絵を()くって」


 隣から聞こえた声に頷く。

 確かに馬鹿らしい話だ。

 こんな硬い四角い石版に力を込めずに絵を描くとは。


 だがどうだ。

 オレは描けないとは思わず(・・・・・・・・・)



     ゆっくりと人差し指を石版に置いた。



 動かさず、描く(・・)

 願う、”助ける”と。




 ――――()える。


 

 石版は光り輝くこともしない。

 何も不思議なことは起きていない。

 けれど、オレには視えた。


 奴隷未満の者達を率いて脱獄をする自分の姿が。



「……コレで良いのか」

「え、あ? なん、も書かれてないけど……」


 誰に聞く訳でもなかったが、隣から声がした。

 シュラには何も視えてないのだろう。

 集中を閉ざしたらオレも視えないだろう。


  

    ”まだだ”と直感は告げる。


 先が有るのかと、見据える。

 はるか未来を、自分が成長し――願いをなし得た未来を。



 絵の形は代わり、顔は見えないがオレだとわかる人物が石版に映っている。周りにはイーグス、リューネ、ガゼル、ラーグ 、そして見知らぬ者達が居て……胸が明るくなる笑みを皆が浮かべていた。

 

 暖かい未来で、手を伸ばしてしまう願い(・・)だった。





「――――素晴らしい!! だけどここまで!!」


 いつの間にか左側に立っていたアヴァロンがオレの手から石版を取る。

 下から睨む。

 オレの睨みなど見てないようにアヴァロンは話し出す。


「未来の願いは心を安らげる!! でも未来の願いを見続けたら今を忘れる!! だからジーク君は自らの手で未来を掴むべきだと僕は思う!! 違うかな!!」


 …………未来を取られた心を落ち着ける。

 アヴァロンはおそらく、願った未来ばかり見てたら今生きていることを見失うとでも言っているんだろう。

 今は今を生きることを考えろという話か。


「あぁ、理解した。オレは、これより最高の結末を探すことにする」


 未来なんて自分の手で掴もう。

 願う未来より、最高の未来を。


「素晴らしい!!!!!! それでこそ英雄の器だね!!!」


 ……あ、はい。ちょっと黙ってください。

 耳が痛いですね、はい。


「っせぇえええええ!!黙れぇえええ!! 耳がキンキンすんだよクソ異常者ぁぁああ!!!」


 そうですね、あなたも十分うるさいです。

 オレは立ち上がり、アヴァロンの手から石版を取りシュラに渡す。

 シュラは嫌そうに石版を受け取る。


「……もうこれ持ちたくねぇよ。何しろってんだよ」


 詰まっているようなので助言する。

 ほぼ答えに近いことを。




「――――石版に描くんだ。心を。未来の自分、または過去の自分が成しえたかったことを。そうすれば石版に絵が描かれる」


 おそらく、シュラが持っている石版は”願いを映す”んだ……直感と声が重なったので間違いなくそうだ。


 オレの助言にシュラは考え込むように「……未来の自分、過去の自分」と呟く。

 よし、掴んだようだな。

 難しいようで簡単なことなんだ。

 

 シュラが震える、視えたんだろう。

 どのような未来かは見えない。

 だが、顔を見ればわかる。




 ほら――――怒気を(あらわ)にしている。



「わかるかぁああああ!! もうちょいわかりやすく言えやぁあああああ!! 」



 …………あれ〜、なんでぇ〜?
















 ――――ともあれ、脇道に逸れたがオレは本来の目的であるオリアスと外の大草原を歩いていた。



「いい天気だ。この天気はイーグスの気持ち次第で移り変わりする。イーグスが元気であれば、天気は良く。イーグスが辛い思いをすれば雨が降り、風も吹き荒れる。最も、そんなことはあまり無いんだけどね」


 ははっと気楽に声を出すオリアスの後ろを歩いている。

 あまり顔は見たくないので。

 本人もそれがわかっているのか、オレに顔を向けずに歩いている。


 与太話を無視して、本題に入ることにする。



「此処に、アフォ……リューネは来たのか」


 返答は沈黙だった。

 答えたくないのか、それとも説明が難しいのか……いや、この男に限って説明が難しいことなんてない気がする。

 なら、答えたくないんだろう。

 次の質問を投げる。


「オレはいつまで此処に居る?」


「…………君が此処に来て既に四時間経っている。あと三時間程で目が覚めるだろうね」


 ……なるほど。

 ここが夢の中だとすれば、現実世界のオレが目をさませば此処から居なくるというのは筋が通っている。夢の中という話だけでおかしな話だが、さておき。


「この夢の中からどうやって、オレの名前を知ったんだ」


 会った頃からジークと呼ばれ、全員がオレを知っているかのように話していた。

 イーグスが話したのか?、それは無い。

 もしイーグスが現実世界で出会った人達のことを話したとして、ガリレ、ラーグの名前も出てくるはず。

 なのにコイツらはオレをジークだと確信していた。

 オレの顔を知っていた(・・・・・・・・・・)かのように。


 間を空けて、オリアスは静かな声で話し出す。


「……実の所、俺達はこの世界のことをよく理解していない。手探りで一つ一つ、真実を探してきた。今も尚、真相を探している」


「…………」


 何の話か分からず、黙って聞く。

 

「その中でもわかったことは数少ない。此処は”何者かがイーグスの魔力を借りて作っている世界”だということと”何者かがイーグスを強くしたい”ということだけ」


「何者かが……?」


「俺が、願いの塊に見えた存在だよ」


 あぁ、あれか。

 全員が呼ばれたという何か、か。

 

「どうして、その何者かがイーグスを強くしたいと考えたんだ」


さぁ(・・)


「は?」


 意味がわからず足の動きを止めるオレを見ず、オリアスは足を止めて背中でオレの問いに遅れて答える。


「この世界は膨大な魔力に溢れている。俺は”魔力と同調”して外の世界を見ている。イーグスが現実世界にいる時は、食堂に”テレビ”を設置してイーグスの視点で出逢いを見て楽しんでるよ」


 みんなと一緒にね、と付け足す。

 結局訳がわからないが、気になる言葉が出てきた。


「魔力と同調だと……?」


「そうだよ。ジークもいずれできるさ。才能と想像力があるからね。キッカケも既にあったはずだよ。身体が熱くならなかったかい」


 熱く……、そうか。

 オレの身体から湧き出た魔力はイーグスの魔力だ。

 身体が爆発しそうになったあの感覚は、イーグスの魔力がオレの魔力と混ざりあったからか。

 少し納得したが、そうなるとオレは自分の魔力で戦闘を繰り広げたことになる。

 確かに身体の中に溜めていた魔力であのぐらいの魔法は使えるが、それにしてもオレの魔力は減っていない。

 

 これはどういうことだと、前の背中を睨みつける。

 わからず苛立ちに任せて睨みつけただけなのだが、オリアスは言葉にしていない疑問を答えた。



「――――此処は【夢想世界】。”夢で想い”、”夢に想う”世界。ジークが想えば、ジークが持っている魔力は無くならないさ」


 ……。


 そうか、此処は本当に夢の世界(・・・・・・・・・・)なんだな。

 何処か信じていない部分があった。

 だが、いま本当の意味でオレは信じた。

 此処が夢の世界――――【夢想世界(ゆめでおもうせかい)】だと。


 人は嘘を吐く。

 だが、オレの魔力に嘘の文字は無い。

 嘘ではないと教えてくれる。

 想い、増えゆく魔力が。

 

 

 後ろ姿でオリアスは言葉を続け、最初の疑問を答える。


「イーグスがこの世界に居る時、俺達はイーグスをどのように強くするか考えている。だからジークのように巨大な魔力を持ってない限り気づかないだろうね」



 オリアスは振り向く。

 オレの中の感情が暴れ回る。

 哀しみに打たれ、罪の意識に涙が出る(・・・・)



「もし寝ているイーグスを触った者が居たとして【夢想世界(此処)】に来た場合、違う魔力が混ざり苦しみ悶え死ぬのは目に見える。ジークのように魔力を操作する術を知らないとね」


 暴れ回る感情を押さえつける為に歯を食い縛る。

 二回目だ。涙は止まった。

 だが胸が痛い、心が痛い。



「――――俺は赦すと口にした。だが、()の気持ちは揺るがない。だからこそ、”一度だけ君を殺すよ”」



 風がオリアスを中心に集まる――否、魔力の塊だ。

 魔力の塊だと知覚した(・・・・)

 【魔力視】を発動する余裕は無い。

 心が、直感が(・・・)叫んでいる。



   ”(つぐ)なわせてください”と。



 全身が縛り付けられている(・・・・・・・・・)ように身動きができない。


 なんだ、これは……っ。


 身体の異常も、目の前の男も(・・・・・・)

 全てが理解を拒んだ。


 

「一つ、言い忘れていた」



 銀の髪が揺れている。

 男の手には視覚できる魔力の塊(・・・・・・・・・)が握られていた。


 それはひと振りの(つるぎ)

 目がチカチカとし、色が見えない。



「イーグスは、”【夢想世界】での出来事を現実で覚えてない”」



 (つるぎ)が、振るわれた(・・・・・)

 斜め、剣閃が走る。



「――――君は、どうだろうね(・・・・・・・・・)?」



 落ちる、身体が(・・・)

 背中が見える。大きな背中だ。


 誰かの声が聞こえた。


『クソ異常者が!!』


 なるほど(・・・・)



 ズレる。

 身体が言うことを聞かず。


 ――――上半身だけが、地面に落ちゆく。



 同時に意識も『ストンと、落ちゆく』。









 

 

 

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