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【夢想世界】  作者:
第零章
3/16

夢の中・一『――――の住民達』





 目を覚ます。


 心地良い風が吹いている――――。



「――――は?」


 上向けのまま声を出す。

 有り得ない光景を見ている、今。

 なんだこれは。


 ――――どうして、空があるんだ。


 不可思議な光景。

 そうか、夢の中かと納得した。

 頭に何かが刺さって痛い。

 起き上がり、風を感じる。


 ……あぁ、どう考えも現実だ。

 頬を抓る、痛い。あ、現実。

 

「なんやこれ」


 変な言葉遣いになるぐらいには理解出来ないことだった。

 立ち上がり、広がる光景に目を見開く。

 おそらく人生で一番間抜けな顔をしているだろう。


 見渡す限りの大草原。

 何も無い……と思ったが、

 後ろを見れば大きな城があった(・・・・・・・・)



 何を見せられてるんだ。

 わからない、わからないが城に向けて歩き出した。


 直感に問う、何が起きてるんだと。

 答えはない。

 これが直感の難点だ。

 答えが欲しい時に何も言ってくれない。

 気まぐれな直感で困る。

 さっき直感さんのことを無視したから拗ねてるんだろうか、かぁいい。

 



 しばらく歩き、城の前に着いた。

 目の前には荘厳な城が建っており、周りは草だ。

 何処に城を建ててんだよ、もっといい所あっただろ。

 というか不自然すぎる、草原の真ん中に城ってなんだよ。

 どっから資源を調達して城を建てたんだ。

 土の魔法を使って木を出現させることが出来る魔法使いも居るが、どの道とほうもない時間がかかるだろう。


 深く考えても仕方ないと思い、城の扉の前に立つ。

 門などなく、ただの扉だ。

 うーん、不相応な扉だぁ。


 取っ手に手をかけ、捻る。

 引く、開かない、押す、開いた。

 無言で城の中に入る。



 








 ――――真っ白だった。


 城の中は真っ白だった。

 訳がわからない。

 なんだこれは。

 

 混乱しながらも今更な事実に気づく。



「……枷が無い(・・・・)


 魔封じの枷が無い。

 よく見れば、服も綺麗だ。





 少し冷静になり、記憶を辿って結論を出す。

 

 此処に来た原因はイーグスに触れたからだ。

 この空間が何かはわからない。

 

 ふと違和感を感じ、頭の中から混乱という文字を消し冷静という一文字を頭の中に貼り付ける。



 そして気づく。



 ――――魔力が減らない、と。



 実の所、オレには誰にも言えない癖がある。


 身体の中に有る魔力をぐるぐると回す癖だ。

 この癖のお陰でオレは魔力を溜めれる(・・・・・・・)


 魔力は際限なく回復する。

 息をしているぶんには微量程度だが、食事に睡眠で多く回復する。

 本来なら、身体の中で魔力がいっぱいになると回復した魔力は息として出る。


 しかし、身体の中で魔力を回し続ける(・・・・・)と魔力を溜めれるのだ。

 五歳で魔法を覚え、七歳でこの癖を覚えた。

 原理としては魔力を回し続けると、息から魔力が出ないからだと思う。完全にただの推測だ。実際のところ原理はちんぷんかんぷん。



 寝ている時は、寝る前に勢いよく魔力を回すと朝起きても魔力は身体の中を回っている。

 ただ、魔力を回すのは微量の魔力を使う。

 もっとも、息をして回復する程度の魔力だが。


 

 ともあれ、オレはこの癖のお陰でこの空間では魔力が減らないと気づいた。


 何故なら身体の魔力を回しづらくなってくるからだ。

 明らかに魔力が増えている。

 正確に言うなら湧き出てくる(・・・・・・)



 魔法を使えるかどうか試してみる。

 先ずは頭だ。

 頭の中と、頭の外に魔力を纏う。

 右手を顔の前で振る。


 ……出来ているな。

 頭にいい感じで(・・・・・)魔力を込めると【思考加速】ができる。


 なるべく早く、目の前にある右手を横に振っているが遅く見える(・・・・・)


 魔封じの枷を嵌めているとできない。

 魔封じの枷は”道具を持っている人物の魔力が外に出ると拡散する”からだ。


 【思考加速】は大量の魔力を使う。

 しかし今は身体の中にある魔力は減らず、増え続けている。

 とんでもない話だ、こんなめちゃくちゃな【思考加速】を使い続けれるんだから。


 次に右手に氷を纏う。

 冷たい。

 風を纏う。

 問題は無い。

 魔法を使う感覚は鈍ってない。

 次に火を纏う。


 右手には刺々しい氷の上に炎が風の力で吹き乱れる。

 得意な魔法の一つだ。

 【思考加速】を使わないと発動に五秒ぐらいかかる。

 しかし今は【思考加速】を使っているので、もし敵が目の前に居たら瞬時に吹き乱れる炎が出現したと思うだろう。


 【思考加速】さまさまである。

 

 

 続いて目にガァアっとした感じで魔力を込める。

 感覚でやっているのでどのように魔力を込めているのかはわからないが、こちらも成功した。


 魔力を目に込めることで、魔力の動きが見える(・・・・・・・・・)

 この魔力の使い方は五歳の頃に何となくやって覚えた。

 【魔力視】とそのまんまの名前をつけている。

 素晴らしいのだ、これがまた。


 【魔力視】は戦いにおいて最高の力だ。

 魔法使いは基本的に両手のどちからで魔法を使う。

 魔法を使う瞬間、必ずどちらかの手に魔力を流す。

 魔力が流された手から、魔法が放たれる。

 つまり相手の利き腕も知れ、初動も丸見えとなる訳だ。

 流される魔力が多いほど大きな魔法を放ってくる。

 逆に言えば流される魔力が少ないほど、小さな魔法だ。


 もしもオレが魔法使いと戦うなら、相手の手に魔力が流される前に攻撃するか。

 相手の手に込められた魔力よりも多く、自分の手に魔力を込め魔法を放つ。

 相手よりも込められた魔力が多いので必ずオレが勝つという訳だ。


 さらに言ってしまえば【魔力視】は相手の中にある魔力が完全にわかる(・・・・・・)

 なので戦う時に相手がオレより魔力量が少ない場合、オレが魔力を全部使って魔法を放てば相手に防ぐ術はない。


 


 もっとも、オレは戦闘経験なんて一度しかない。

 兄貴と戦った、というより負けたのが最初の戦闘だ。

 奴隷達を逃がすと決めた五歳の頃より、オレは頭のどこかで戦うことを予見していたので戦略は星の数ほどある。嘘だ、少し盛ったが数多くはある。



 ともあれ、魔法が無限に使える。

 減るばかりか身体の中にある魔力は増える一方だ。


 こんな感覚初めてで、魔力が熱い(・・・・・)

 無限に身体の底から魔力が溢れて、身体の中で魔力を回す速度も早くなる。勝手に。

 このままじゃ爆発すると思い、オレは久々に魔力の回転を止めた。



 息から魔力が吐かれる。

 魔力の形は”蒼い点々”だ。

 蒼い点々が集まり、形になって魔法が発動する。

 

 集中し、身体の中から熱くなった魔力を口から大きく吐き出す。

 初めてやったが出来た。さすが天才。

 などと自分を褒めていると。




 明らかな異常事態と遭遇した。








「――――へぇ、こりゃ驚いた」






 声が聞こえた(・・・・・・)

 そう、これは異常事態だ。

 オレは【思考加速】を使っているのだから。


 【思考加速】を使うと、聞こえてくる声が遅れる(・・・)のだ。

 だと言うのに、普通に声が聞こえた。

 つまり声の人物は、オレが【思考加速】を使っていると知ってなおかつ早口で喋ったのだ。

 【思考加速】を使ってないと何を言ってるかわからないぐらい早口だったはず。



 全身の魔力の動きを止め、右手、頭の中の魔力を拡散させる。オレは声の方に目線を向ける。


 

「おやまぁ、集中力が切れたんですかい?」


 

 そいつは右上に浮いていた(・・・・・・・・)

 空に浮くなんて芸当、オレにはできない。

 人族が追い求めている浮遊魔法。


 いや……驚くことにそいつは【魔力視】で見る限り、


 

 魔力がなかった(・・・・・・・)


 こんな人間は初めて見た。

 黒い髪を掻き上げ、顔はどこにでもいるような男だ。

 しかし異様に見透かした目に、真っ黒な衣装をピシッと着こなしている姿はお目にかかった事が無い。

 両手を下着(ズボン)の中に入れて無防備な状態だ。


 口から魔力を吐いていない。

 身体の中にも魔力は無い。

 今まで見てきたどんな人間も魔力はあったというのに。


 不可思議な男だ。

 オレはゆっくりと息を吐いて、疑問に答えた。


「……ゴミが(お前)、集中力などこの天才が切らすようなことがあるか。無駄に早口で喋るのは愚の骨頂、【思考加速】を切らし普通に喋る方が手っ取り早いだろうが」


 愚の骨頂なんて言っているが早口で喋れないだけだ。

 オレの言葉に、納得したとばかりに頷く男。

 


「なるほど、あっしは別に早口でも問題は無いんですが。茶髪(・・)(ぼん)には愚かなことなんですねぇ」


 ……茶髪の坊、というのはオレのことだろう。

 たしかに茶髪で元坊ちゃんでもある。

 

ゴミ(お前)の疑問には答えてやった。次はオレが疑問を投げる番だ。此処は何処で、イーグスは何処にいる(・・・・・・・・・・)?」


 ダメ元でイーグスについて聞く。

 宙に浮いてる男はオレの疑問に口角をあげ、邪悪な笑みを見せてくる。











 直感が告げた(・・・・・・)


 ”避けろ!”


 すぐさま後ろに飛び、何かから避ける(・・・・・・・)


 カァンと音が三回響く。

 何かが飛んできた、避けた白い床に三つの黒い穴(・・・)

 焼けたような跡だ。

 【思考加速】を直ぐにして、浮いている男を見る。

 

  

 黒光りする何か(・・・・・・・)を両手で持って(・・・・・・・)

 男は下着(ズボン)に入れていた両手をオレに向けていた。


 アレはなんだと考える暇は無い。

 ”次の攻撃が来る”と直感が言っている。

 両足に氷と風を纏って左に避ける。

 またも乾いた音が響く、今度は連続で。

 当たれば死ぬ(・・・・・・)


 左、右と避け続け、然りと男に目線を向ける。

 乾いた音が響く前に、黒光りする何かを人差し指で引いている。

 つまり、隙がある。

 人差し指を動かす前に魔法を放てばいい。


 簡単だ(・・・)


 避けながら発動していた【魔力視】を拡散させる。

 相手は魔力を一切持っていないから【魔力視】なんて意味ないからだ。


 火の玉を両手の手の平に出現させ、風の魔法で火の玉を男に飛ばす。

 男は予測していたかのように宙で動き、避ける。

 当たるなど思っていない。

 微かな間でも攻撃を止ませるのが目的だから。


 連続で火の玉を飛ばす。

 慣れてきたのか合間に人差し指を引き、攻撃をしてくるので避けながらも火の玉を放っていく。


 数十秒で白い場所に焼けた黒い点が増えた。

 埒があかないので、勝負へ出ることにする。


 と言っても(・・・・・)


   既に勝負はついている(・・・・・・・・・・)


 


 


「……こりゃっ!?」



 不可視の魔法は火の玉を投げ始めた時に構築していた。

 後はどのように誘導するか、だけだった。


 運良く、男は風と水の檻(・・・・・)に吸い込まれた。


 全方向から風と水を送り、範囲内に入ったやつを中心に入れるだけの魔法だ。

 六歳の時に考えた魔法だったが、使う魔力量が多すぎて没にした。

 しかしこの白い空間は何故だか魔力が湧き上がる。

 そして実行した。


 両足に纏っている氷と風を拡散させながら、ここまで綺麗に檻へ向かうとは思わなかったと考えた。


 男は全ての方向から質量のある風が送られ宙で身体を丸めている。


 当然、まだ終わらない。

 その為の魔法を構築し、発動。


 

 土、風、火の魔法を合わせた、かつて兄貴に放った溶岩だ。

 


「死ね」


 初めて人を殺すことになるが、大して気負わない。

 殺されそうになったから殺すだけだ。

 

 風の檻に捕まっている男の真上にある溶岩がゴォゴォと音を立てながらゆっくりと落ちていく。

 早く落とすことはできない。

 溶岩だけを出現させるだけなら早く落とすことは出来たが、同時に魔力を流している数が多いのでゆっくりとだ。


 風の檻に溶岩と【思考加速】。

 未来はわからないが、今のオレには魔法の同時発動は三つまでだ。

 


 溶岩が風の檻に到着寸前。

 


 最後の姿となる男の姿を見る。







 ――――顔に不気味な笑みが浮かんでいた。






  ”駄目だ”


 直感が告げ、溶岩が風の檻に当たり――――爆発。

 ”防げ”と直感に告げられ、オレは瞬時に土の壁を目の前に出現させる。

 数瞬後、衝撃。

 衝撃を感じながらも、微かな熱さも感じたので氷を全身に纏う。


 目を瞑って息を止めている。

 土の壁が壊れたのを感覚が告げる。

 もう一枚土の壁を作るよりもと、七歳の時に考えた氷の鎧を作る。

 氷の鎧も没にした魔法だ、単純に冷たいからだ。


 

 衝撃で氷の鎧がピキリと亀裂が入るのを繋がった魔力の感覚が告げる。

 魔力を送り続けより強固な物にしていく。






 ――――衝撃が止んだ。


 氷の鎧と纏っていた氷に【思考加速】を拡散させ、息を思い切り吐く。


「ふぅぅぅぅ、すぅぅぅぅ…………、はぁ。死ぬかと思った」


 情けない声が勝手に出てきた。

 心臓がバクバクして今にも破れそうだ。

 なぜ爆発したのかは謎だが、白い空間だった(・・・)場所を見て心の中で感想をこぼす。


 これは――――。











「――――凄い威力ですねぇ」


 凄い威力だ。









 あ?



「どうしたんですかい? そんな死人に会ったような顔をして」

 

 正にそれだよ。

 なぜこの男は生きているんだ。

 おまけに傷一つついてなくて、笑っている。


「しっかし、なかなかやりますねぇ。あっしが茶髪の坊と同じ歳の頃はひぃひぃ泣いてやしたぜ」


 カラカラと笑う男は嫌に友好的だ。

 先程まで殺し合いをしていたというのに。


 両手に魔力を込め、いつでも発動できるようにしながら聞く。


「そんな無駄話など聞いていない。なぜ攻撃を仕掛けた」


 戦闘で乱れた髪を掻き上げ、男はあっけからんと。

 異常な理由を話す(・・・・・・・・)



「異常か普通か見極めたかったんですよ」


 そして、ぱちぱちと拍手。


「おめでとうごぜぇやす。茶髪の坊は間違いなく異常だ。あっしが太鼓判を押します」


 ……理解出来ないな。

 この男はなんだ。


「なぜ見極めた」


「おっとと、質問ばかりですねぇ」


「黙れ、最初の疑問に答えたツケがゴミ(お前)には有る。さっさと答えろ」


「……こりゃ言い負かされちゃいましたねぇ。どうやら弁もあるようだ」


 睨む。

 ついでに右手に氷と風を纏わせ、炎を纏う。

 【思考加速】もいつでも使えるように頭の中の前まで魔力を届かせておく。


「言え」


 警告する。

 喋らなければ戦闘を再開すると。


 男は笑みを顔から取り除き「ふぅ」と溜息を吐き。

 黒い景色となった、黒い床に降りてくる。

 目の前に居る。


 

「やれやれ、茶髪の坊はわかっているようで丸っきりわかっていやせんね」


「……なんのことだ」


 心当たりが無いため、オレは聞いた。


 その瞬間だ。



 ――――空気が揺れたのは。








「あっしが坊をいつでも殺せるってことですよ」








 ……種も仕掛けもわからない。


 後ろから声がした(・・・・・・・・)


「先程の質問に答えましょう。普通(・・)は此処に来ても意味が無いからです」


 後頭部に何かを置かれた。


「動けば”うちます”。さて、あっしからの質問にも答えてもらいやしょう」


 うちます、という言葉がどんな意味なのか知らない。

 だが、殺す(・・)という意思は伝わった。

 こうなっては右手の吹き荒れる炎も意味が無いので消す。


 黙って聞いてやることにする。


「茶髪の坊は何者ですかい?」


「知るか、オレはオレだ」


 それ以外の答えは持ち合わせていない。


「お利口になった方が身の為ですよ」


「お利口も何もオレは事実を言っているだけだ」

 

 何が言いたいんだ後ろの男は。

 

「……では、質問を変えやしょう。



  なぜ、イーグスを探してるんですかい?」


 



 やはり、知っているのか。

 思考を回す。

 この男がイーグスの敵だった場合、オレは殺されるだろう。だが、イーグスの味方だった場合は生き残れる。


 嘘を吐くべきか、本当のことを言うべきか。



 

 悩む必要などもなく、即座に答える。




 

 

アイツ(イーグス)はこのオレが、心から認めた男。これから先の人生において、アイツの存在がオレには必要だ。だから探している。わかったのならさっさと――――イーグスが何処に居るか吐け、ゴミが」



 そう、この思いだけは嘘を吐いてはいけない。

 たった二日の関係だ。

 されどオレにとって、あの出会いは十年の軌跡を塗り替えたものだ。

 いつまでもこの想いは揺るがないと心から言える。

 

 後ろの何かは降ろされない。

 つまりコイツは、敵だったか。

 だが悪くない。

 こんな死に方も有りだ。

 嘘を吐かずに、最後は真実の言葉を口にして死ねるのだから。












 ……いつになったら死ぬんだ。

 心なしか後頭部に置かれた何かが震えている。


「……っ、…………っ……ぅ………」


 あ? コイツ笑ってねぇか(・・・・・・)


「くくっ」


 あぁ、笑ってるな。

 

 ついに後頭部から何かが外れた。

 ゆっくりと振り向く。


 腹を抱えて笑ってるやつが居た。

 

 死の覚悟を馬鹿にされたような気がして、右手に魔力を込めようとしたところで…………別のやつが現れた。


 突如、腹を抱えてる男の後ろから出現。


 銀に輝く髪、鋭い黒き眼光。

 顔がこの世のモノとは思えないほど整ってる男。

 黒き衣装の所々には銀色の線が入っており、銀髪の男にはよく似合っていた。

 

 感じたことを言うとしたら、”目につく男”だ。


 



「……なるほど――――戻れ(・・)


 そして開口一番で何かを納得したように呟き、戻れと言った。


 何を言っているんだと思う間もなく、黒焦げだった空間は白くなっていた(・・・・・・・)

 ついでとばかりに笑い転げていた男も消えてる。


 瞬時に見ていた光景が変わり、オレは即座に【魔力視】を発動し目を疑う。


 魔力とは、オレが見てきた限り蒼色の点々である。

 しかし、やつ(銀髪の男)の魔力は銀色の塊(・・・・)だ。

 銀髪の男を見上げる。


 魔法を扱うことに関して、オレは誰よりも才能が有ると思っている。

 だが、頭で、心で理解した。

 届かない(・・・・)、と。









 銀髪の男は緩りと視線を向けてくる。

 そして――――屈んで(・・・)、目線を合わせてきた。



「初めましてだな、ジーク。

 俺は”オリアス”と名付けられた(・・・・・・)

 お前のことはイーグスから見ていた(・・・・・・・・・・)

       今後とも、イーグスを宜しく頼む」




 安心させるように笑う(さま)に、


      オレは涙を流す(・・・・)


 訳がわからない。

 なぜ、涙が出るんだ。


 歯を食い縛る、涙を堪えるように。

 涙は止まらない。

 

 先程の戦いが怖かった訳じゃない。

 そんなことは関係ない。

 

 この男の()りように、涙が止まらないんだ。


「……泣いてくれるのか、ジークは優しいな。だが、俺に後悔はない。自らが信じた道を進んでいるだけのだからな」


 この男……オリアスが何を言っているのかは理解していない。


 それでも、オレは笑ってしまった。

 良かった、と。


「あぁ、コレで良かったんだ。皆とも出逢えた。悲しいことばかりじゃない、だから泣くなよジーク」


 赦され(・・・)、涙が止まった。

 歯を食い縛っても止まらなかった涙が簡単に止まった。

 

 あぁ、そうだ。

 初めての感覚では無い。

 だが今までよりも遥かに重いんだ。

 これは、罪悪感だ(・・・・)

 オレはオリアスに罪の意識を感じている。

 

 何もしていないはずなのに。

 初めて会うというのに。


 到底、理解出来ることじゃない。


 オリアスは立ち上がる。


「ジーク、ついてきてくれないか? お前に紹介したい人達がいるんだ」


「……あぁ、わかった」


 自分の感情を理解できないまま、歩き出すオリアスについて行く。


 気づけば白き空間には色がついている。

 肌色の壁には絵画が立てかけられ、天井には見たことがない明かり照らす物。

 茶色く色付いた床を進んでいく。









 案内されて足を止めたのは扉の前だった。

 此処に来るまでの記憶があまりない。

 気づけば扉の前に居た。

 

「さぁ、開けてみてくれ。ジークが来たのを知って、俺が呼んでおいたんだ。安心しろ、みんな優しいやつだから」


 言われた通り、扉についている銅の取ってを引く。

 力は必要無く、手応えなく開いた。



 





「ふむ、本当に来たな」

「言いやしたでしょ、茶髪の坊が来やすと」

「うん! 凄くいい目だね! ”シュラ”君! 彼は英雄になるよ!」

「っせぇな、おれとは違ってとか言いてぇのかクソ異常者」



「――――ジーク……?」



 広々とした場所には大きなテーブル置かれあり、囲うように五人の人物が居た。

 燃えるような紅い髪の女、先程戦った男、太陽のように明るい金色の髪を震わせる男、同い年ぐらいの黒髪の子供。


 そして、イーグスが驚いたようにオレを見ている。


 後ろに立っていたオリアスが前に出る。

 

「みんな、ジークに皆のことを紹介したい。良いかな?」


 オリアスの言葉に各々が話し出す。


「構わん、私は――」

「――早いですよ姉御、もうちょい待ちやしょう」

「……何故だ」

「順番があるからですよ、まだあっし達じゃないんですよ」


 紅い髪の女と笑い転げていた男は締まらない会話をし。


「当然だよ! これから仲良くしたいからね!」

「だからうるせぇよ!!もうちっと小せぇ声で喋れ!」

「これが一番小さい声だよ!!」

「声大きくなってんじゃねぇか!このクソ異常者がぁ!!」


 金色の髪を震わす男と黒髪の子供は喧しく。


「…………オリアス、どうしてジークがここにいるの?」

「そんな言い方はダメだよイーグス、ジークは君に会いに来たんだから」

「……そっか、どうやって来たのかな?」

「うん、言い方一つで人間関係が崩れるからね。その言い方が正解かな。気をつけようね、イーグス」

「…………はい」


 どこか親子のような関係で話す二人。


 一歩前に出て、この場に居る者達の顔を見る。

 

 そんな関係を持つ存在などオレには居ないが。

 コイツらのような関係を”数年来の友”と言うのかもしれない。

 仲が良さそうだ、そんな言葉では言い表せれない。

 絆が感じれた。


 少し、羨ましいと思える。



「さて、ジーク。先ずはこの世界について話すよ」


 いつの間にかオレの方に身体を向けていたオリアスが口を開く。

 口を挟まず、耳を傾ける。

 

 聞かされるのは信じれないこと。

 だが、胸に入りこむ夢のようなこと。



「此処は【夢想世界(むそうせかい)】、イーグスの夢の中だよ」

 



 そう、夢の中だから。



「そして俺達は、さしずめ”【夢想世界】の住民達”とでも言おう」




 

 

 

 

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