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【夢想世界】  作者:
第壱章
14/16

奴隷未満達との冒険・後








 目を覚ます。

 

 【思考加速】発動。

 すぐに【思考加速】を解除する。

 完全に寝ぼけていた。

 魔力がガゼル一人分は無くなっている、たったの数瞬で。

 寝ぼけて魔力を使うなんて経験は初めてだな。


 立ち上がって意識を覚醒させる。


 ――――朝、だな。



[英雄ジーク殿、おはようございます]


 遠くにいるハクキから【伝心】が来た。

 【伝心】を発動し、挨拶を返す。


[見張りご苦労。変わりはないか?]

[えぇ、平穏な朝です]

[そうか、皆が目覚めるまでオレが見張りをしておく。身体を休めとけ]

[御意]


 ゆったりと立ち上がるハクキを視界に入れながら、真上に居るジジイに【伝心】を飛ばす。


[ジジイ、朝が早いな]

[当然じゃ、ジジイじゃぞ?]

[誇るな。それより、後どのくらいで街につきそうだ?]

[むっ、暫し待て…………37時間じゃの]


 相変わらず細かい。

 だが、後二日で着くのか。

 ようやくだな。

 あぁ、胸が踊っている。


[助かる。ではな]

[待たんかコラ。ワレェは年寄りを労る心遣いないんかい]

[朝まで見張りご苦労だったな。まぁあんまり意味なかったと思うがカッコワラウ]

[馬鹿にしとんかい。まぁええがの、これも何かの縁じゃ。何時でも呼べい]


 去っていくジジイを横目に、【魔力視】を発動する。

 北、十二体のゴブリン発見。

 東、大量の鳥発見。害はないと思われる。

 南、ゴブリン二十五体発見。

 西、スライム三匹発見。


 ……初めてだ。

 こんなに魔物が居るのは。

 

 これはやばいな。

 南からゴブリン達が遅い歩みで迫ってきている。


 仕方ない、殺るか(・・・)


 その前に、ラーグに声をかけておく。

 ゆっくりとした足取りで奴隷未満達の間を通り抜け、黒いスライムと睨めっこしている男に声をかける。



「ラーグ」

「……っ!?」


 とんでもなくオレを警戒して、右に置いてた錆びた剣を持つラーグ。しっかりと左手にクロを持っている辺り配慮ができる男だ。


「こちらに向かってくるゴブリンが居る。――殺ってくる」

「あ、あぁ、ジークか。……わかった、手は貸さなくていいか?」


 誰に口聞いてんだ。

 ったく、これだから正義野郎は。


「舐めるな、オレを誰だと思ってる」

「……そうだな」

 

 ふっと笑うラーグを背に、オレは南に向かって歩き出した。









 






 一体のゴブリンが手に持った錆びた槍で、隣にいるゴブリンの頭を叩く。頭を叩かれたゴブリンは怒ったように左手でどつく。そして奇妙な声を出す。


 さっきから心の中で殺るかとかラーグに『殺ってくる』と言っているが、オレは生き物を殺したことは無い。

 思うんだが、ゴブリンはオレに何かしたか。

 してないよな。


 なら、話し合いだ。

 しっかり二十五体のゴブリンを視界に入れながら、【伝心】をしてみる。



[……聞こえるか?]

「ウギャ?」


 一体のゴブリンが隣のゴブリンを見ながら奇妙な声を出す。隣のゴブリンが何を言ってんだとばかりに右の肘で腹を小突く。


 声は伝わってるが、意味が伝わってないな。


[忠告する。それより前に踏み出たら問答無用で攻撃する]

「…………ウギャアアアアアア!!!」


 【伝心】をしたゴブリンがオレを見つけて踊り出てきた。

 話し合いは無理だったみたいだな。

 ふぅ、嫌になる。


 だが、これは殺し合いだ。

 恨むなよ。








 数秒後、【紅蓮拳】が同時に三体のゴブリンを灰とした。





 







 ――――敵ではなかった。


 初めての命の奪い合いは、一方的なものだったな。

 心は痛む。

 このゴブリンにも家族は居たはずだと。

 気味の悪いモノが腹を駆け巡るが、口を開かなければどうということは無い。

 

 焼かれたゴブリンの手から錆びた剣と槍を取っていく。

 槍が二本で剣が三本、全部で五本。

 リューネ率いる遊撃部隊に渡そう。




 もう一度、奪った命の数々を見て、


 お前らの分まで生きてやる、そう心中で呟いた。










 質量を持たせた水で錆びた剣を運び、無手の状態でラーグの前に立つ。


「使え」


 水を解除し、地面に錆びた剣と槍を落とす。

 

「……まぁ、こうなるか」


 微妙な顔で頭にクロを乗せたまま、ラーグはゴブリンが持っていた武器を拾っていく。

 顔が地面に向くが、頭に乗ってるクロは落ちない。

 どんな原理だよ。

 そんなことを思いながら【魔力視】を発動する。


 北、異常なし。東、スライム三匹が歩いてる。

 南、異常なし。西、大量の鳥が飛んでいる。


 よし、北に居たゴブリンはどっか行ったな。


 

 安心した瞬間――――肩を叩かれる。

 衝撃――――。


「おはよう! ジーク!」






 ――――下唇を力強く噛んだ。


「あははは! ジークどうしたのその顔!」


 無邪気な顔を殴り飛ばしたくなるが、心を落ち着ける。

 危うく吐くところだった。

 

「……」

「あ、ビックリした? あははは! 隙ありだよジーク!」


 殺ってしまおうか。

 黒い意思が芽生えそうになる。

 が、鋼の意思で黒い意思を抑える。


「……目が覚めたか、イーグス」

「うん! おはよう!」


 無邪気なやつだ。

 先程の殺意が馬鹿らしくなって消えていく。

 しかしなんだ、生き物を殺すという行いは慣れないな。

 一生、この感覚は付きまとって来そうだ。


 ――――本当に、嫌になる。


 自分の力の無さにも(・・・・・・・・・)

















 ――――昼。


 何事もなく昨日拾っておいた食料を朝に食べ、出発した。

 方角はオレが教え、リューネが舵をきっている。

 

 ガゼルの横を歩きながら、【夢想世界】でのことを思い返す。

 

 結局、オレは【魔術】を使えなかった。

 だが、試行を重ねていく中で見えているモノが有る。

 空気中に蒼き点々があり、身体の中から出す蒼き点々を触れさせると、空気中の蒼き点々は反発する(・・・・)

 反発する蒼き点々を無理やりくっつけ、魔法は発動する。


 身体の中にある蒼き点々と、身体の中にある蒼き点々をくっつけると抵抗なくくっつく。

 つまりだ。

 外の魔力と内の魔力は別の魔力なんだ。


 【魔術】とは、別の魔力を操作する(・・・・・・・・・)技法だ(・・・)


 これがわかっただけで、凄まじい収穫だ。

 例えばだが、【魔術】が使えるようになればオレは無尽蔵に魔力を使える。


 あぁ、なんとも素晴らしい技法だ。


 で、どう使うの?

 正直、試したいことはあるが、手詰まりである。


 今はいいか。

 次、【夢想世界】に行った時にまた色々と試そう。


 

[ジーク君、【魔力視】使えるようになったよ]


 純真組二年生ガゼルがオレに【伝心】で伝えてくる。

 なになに、【魔力視】を使えるようになった?

 そうですか、天才ですね。

 数分前に教えた事なんですけどねぇ。


 いや、天才か。

 念の為、【魔力視】でガゼルを見る。

 おっと、アフォより魔力が多くなってますね。

 今は気にしないでおきましょう。

 ふむふむ、目にしっかりと魔力が纏われてますね。

 コレは【魔力視】です! おめでとうございます!


 なんでなん。

 早すぎだろ。

 

[というか、これってジーク君の魔力量だよね……]

[身体の中に有るのが魔力だ。見えるか、蒼いツブツブが]

[うん、視えるけど…………凄い回ってて、魔力が圧縮されてるけどボクの1000倍は多くない?]


 そのぐらいはあるな。


[こんな魔力どうやって使うの?]

[ある魔法を使うと一瞬でなくなる。ガゼルの魔力が今の100倍増えたら教えてやろう]

[100倍かぁ、長いなぁ]


 【思考加速】は今のガゼルの魔力量でも、一秒が十秒ぐらいの感覚になって”魔力切れ”で倒れるだろうな。


 懐かしいな、魔力切れ。

 五歳の頃なんかほぼ魔力切れで一日が終わってたな。


 と、過去に思いを馳せていたらガゼルが不思議そうに伝えてくる。







[――――アレって、なんだろ?]


 ガゼルは前を見ている。

 視線を追うと――――大量の魔力が蠢いていた。


 ゴブリンの魔力、姿形では無い。

 見たことがない姿形だ。


 偵察部隊、遊撃部隊、調査部隊がオレに集まってくる。

 【魔力視】を発動しているリューネが切羽詰まった表情で走ってきている。異変を感じたハクキが、【魔力視】で気づいたセレスが。


 皆がオレに向かってきていた。


 脱獄してから見ていない、皆の慌てぶり。

 あぁ、平穏が崩れるのかと心の中で溜息を吐く。






「人狼よ!!」

[ジーク殿! 人狼です!]


 同時に二人が伝えてくる。

 リューネは声で、ハクキは【伝心】で。


 なるほど、人狼か。

 心を落ち着け、この場に居る誰よりも静観する。


 イーグスはよくわかってなさそうだ。リューネは血相を変えて、目に怯えが混じっている。ハクキは覚悟を決めた表情。ラーグは剣を構え、人狼に向かって睨んでいる。セレスは普段の澄ました表情ではなく、オレに助けを求めている顔。ガゼルはオレの発言を静かに待っている。ヤトは怯えている遊撃部隊の一人から錆びた槍を奪い、怯えた目で構えている。


 そして人狼は、恐ろしい速さでオレ達に迫ってる。

 時間はないか。


 【伝心】はこの場で意味が無い。

 ならば声を出すのみ。



「―――― 全員、オレより前に出るな!!」


 初めてかもしれない。

 ここまで声を張り上げたのは。

 出るもんだな、そんな能天気なことを考え……前を歩いた。


 先頭に立っていた、唖然としているハクキの横をゆっくり通り過ぎた。



 獣の耳を生やした人の形をした魔獣が、四足歩行で雄叫びを上げる。


「「「ガォォオオオオオオオオン!!!」」」


 本で読んだ人狼と呼ばれる絵にそっくりだ。

 だが、人狼は言葉を解すると聞いたんだがな。

 なぜこうも敵意を剥き出しなんだろうか。

 オレ達は何もしていない。

 夜以外は人の姿、文献通りだな。

 思考が混雑しているが、オレの中ではまとまっている。


 こいつら、平穏を邪魔する敵か?


「――――ゴミ共、一度だけ聞く。お前らはオレ達の敵か?」


 【魔力視】解除。

 人狼は魔法を使うと聞いたが、もう関係ない。

 五十以上の人狼が居る。

 だが、人狼全員を合わせた魔力でも。

 オレには届かない。

 三十分の一ぐらいだな。


 圧倒的な魔力量の差だ。

 だが、侮る訳にはいかない。

 数の暴力が有る。



 ――――【紅蓮拳】発動。


 直感が告げる。




 ”視野を広く持て”と。



 つまり、オレが勝てる戦いだということか。




 


「ガォオオオオ!!!!」


 叫び、飛びかかる人狼。

 油断など一つもなく、身体は想像した通りに動く。

 瞬時に、右手に広がった焔をぶつける。

 氷の翼を生やし、後ろに飛び散った焔を翼で消す。

 一体の人狼を吹き飛ばすと、五体の人狼が動く。

 オレを囲うように動こうとしている 。

 巫山戯るなと、左手で【紅蓮拳】を発動する。

 大きくなる氷の翼を見て、誰かが呟いた。


「……綺麗」


 誰かは知らない。

 今はそんなことに意識を割けない。

 両手を振るい、囲おうとした人狼五体を一秒もかからず焦がす。



「「ガァ!」」


 魔力を操作する(・・・・・・・)

 五体の人狼を焼き飛ばすと、二体の人狼が飛び掛ってくる。


 視野を広く持つ。

 右手の【紅蓮拳】だけで、空中で人狼二体を焼き焦がす。

 間を空けず飛び掛ってくる三体の人狼へ、左手の【紅蓮拳】を放つ。


 獣の毛が焼けた匂いを肌で感じる。

 異臭だ。風の魔法を使い匂いを押し出す。

 隙ありとばかりに襲ってくる人狼一体に、右手の【紅蓮拳】で遠くに弾き飛ばす。


 魔力を定着させる(・・・・・・・・)


 後ろで声が聞こえる。


「……なにあれ」

「わからん」

「…………コイツ、馬鹿でしょ」


 イーグス、ラーグ、リューネだな。 

 気づいたか。

 オレが創った魔法を(・・・・・・)


 何も気づかず、戦いに集中している人狼達は襲ってくる。

 両手の【紅蓮拳】を振るう。

 飛び散る人狼と焔。

 こんなに長時間【紅蓮拳】を使ったことがない。

 戦いの最中だというのに反省点が見えてきた。

 後で改正しよう。


 そう決め、魔力の操作を切らす(・・・・・・・・・)




 ――――天空に留まっている溶岩を落とす。


 戦いが始まって、空に魔力を送りながらもオレは【紅蓮拳】を使っていた。

 これは一重に【夢想世界】での経験が活かされた。

 【思考加速】を現実世界で目が覚めるまで使えば、このぐらいは成長する。


 言いたくないが。


 【夢想世界】での経験は、オレの糧となっている(・・・・・・・・・・)


 いやな奴の顔が目前に現れ、振り払うように飛び掛って来た人狼を【紅蓮拳】で吹き飛ばす。

 後押しするように、溶岩の上に風の魔法を使う。

 落ちる勢いが心なしか速くなる。

 いや、速くなっているか?


 そんな気の抜けたことを考えていると。

 溶岩が着地する。



 一時の無音。


 数瞬後の爆音。


 地面に着地した溶岩が周りを人狼諸共、焦土に変えていく。


 ヒュウガとの経験で培った判断力が問われる。

 即座に両手から【紅蓮拳】を拡散させた。

 氷の翼だけは残し、両手を前へ翳す。

 氷の壁を、皆を護るように前へ出現させ。


「屈め!!」


 後ろに振り返って、声を張り上げた。

 全員が困惑した目だ。

 しかし、リューネが率先して屈んだことで皆が屈む。

 

 ――――衝撃。


 氷の壁から微かに伝わってくる衝撃に目眩がする。

 誰だよ、こんな強い魔法考えたの。

 ってオレか、いっけね。

 なんてことを考えながら、氷の翼を広げる。

 氷の壁の後ろに土の壁を出現させると、幾らか安心できた。










 数十秒、誰も声を発しなかった。

 既に衝撃は無い。


 オレは縮こまる皆に言ってやった。


「……すまん、屈んでも大して意味なかった」


 全員がオレを殺さんと睨み、平穏がまた戻って来たことを悟った。











 氷の壁と土の壁を拡散させ、酷い有り様を見た。

 倒れ伏せる人狼達。

 焦土とかした、森の一体。


 オレは振り向き、リューネに言う。


「手加減しろアフォ」

「アンタがやったのよ!! 私がやったみたいに言うな!」

「……罪を擦り付けるのは良くないぞ」

「うるさい馬鹿!! どんな魔法使ってんのよ!」


 リューネのツッコミで緊張の糸が切れたのか、奴隷未満達がくすくすと笑う。

 うるさいと言われたので、オレは再び前を見る。


 凄まじい威力だ。


 明らかに魔法の熟練度が上がってる。

 兄貴に溶岩を放った時は衝撃などなく。

 地面が狭い範囲で焼け焦げているだけだった。

 

 おかしいおかしいとは薄々思ってたんだ。

 魔力が回復する量も日に日に増えてった。


 そう――――【奴隷紋】を押された時から。


 なにか【奴隷紋】には有るのかもな……。


 

 

「……これは、凄いな」


 ラーグが話しかけてくる。

 錆びた剣を肩に置き、頭にはブルブルと震えるクロを置いて。


「あぁ、自分でも驚いている」

「……のわりには、人狼を睨んでいるな」


 睨んでないわ。


 ただ、見ているだけなんだが。



 えらく頑丈な奴らだ。

 周りは焦土と化しているのに、姿形が残っている(・・・・・・・・)



 焦っているようにガゼルが叫んだ。


「――――まだ生きてる!」


 【魔力視】発動。


 ……凄まじい生命力だ。

 人狼の身体の中で魔力が動いている。


 生きている。


 これだけ被害を及ぼす魔法を放ったとしても、か。


 【紅蓮拳】を発動し、一体の人狼に近づいていく。

 よく見ればピクピクと動いている。

 いや、よく見なくてもわかるな。


 数歩距離を空けて語りかける。


「おいゴミ、生きているなら返事をしろ」

「…………クゥゥン」


 なに可愛く泣いてんだ。

 そっちから手を出してきたというのに。


「なぜ襲ってきた」

「……ごべんな゛ざい」

 




 いや、喋れんのかい。
















 ――――数分後、オレの前では土下座をしている人狼達が居た。


 改めて人狼を見る。

 人と同じ形をしているが、服は着ておらず大量の毛で身体を隠している。腰にだけ布を巻いてるな。

 魔力の量は一体一体が大体同じ量で……ガゼルの二十五倍は魔力を持っている。

 たしかに脅威ではあるが、オレがいる限りは大丈夫だ。


 再度、襲ったわけを聞いた。


「なぜ襲った」


 一番前に居る人狼が顔を地面につけながら答える。


「ふぉぐふごごふご!」


 何を言ってるかサッパリだ。


「地面から顔を離すことを許す」

「ありがた!!」


 なんや『ありがた』って。

 睨み見下ろすオレの前で、人狼は毛だらけの顔を上げて叫ぶ。


「殺傷するつもりはないでござんでした!!」


 何語だ。解読班は居るか?

 まぁ、殺傷するつもりは無かったってことだろうが。


「それで?」

「はっ! 我らは貴方に忠誠を違うでありごん!!」


 なに、ありごんって。

 ありますってことか……?


「それはどうでもいい。さっさと襲った訳を話せ」


 やはり知性は有るんだな。

 ちゃんと会話……できてないが、言葉は通じる。

 まぁ、人の形をしてるから言葉は通じるか(?)。


「はいよ! 我らは実は今日は姫はあれは――――」

「――――要点だけ話せゴミが、お前ら全員焼くぞ」


 顔を伏せている人狼共が一斉にびくりと跳ね上がる。

 地面からオレの顔まで飛んだぞ、舐めてるだろ。


「ひぇぇえええ!! そんな殺生なこと言わんとって!や!」


 駄目だ、話が進まない。

 が、オレ以外が喋ると一斉に飛びかかろうとするのだ。

 さっきラーグが話そうとして、とんでもなくビビってた。

 

「……わかった。で、なんだ」


 早く話せと先頭の人狼を睨む。

 先頭の人狼がオレの顔まで飛び上がる、やっぱ舐めてるだろ。

 

「ひぇぇ……実は我らは姫を探してる、みたいなぁ?」


 さて、殺すか。

 【紅蓮拳】を発動すると一斉にオレの顔まで以下略。


「すみません!! 悪気はないんです! 我らは姫の命令でふざけた話し方なんです!!」


 ……なるほど、ふざけた話し方というのは自覚してるのか。よし、まだ救えるな。

 【紅蓮拳】を拡散させ、疲れ果てたオレは聞く。


「ゴミ共が姫というやつを探しているのはわかった。だが、なぜオレ達を襲った」


 先頭の人狼は申し訳ないように答えてきた。

 ふざけた理由を。


「実は我ら、人を見ると力を試したくなるんでござん。これは姫など関係なく、男として人狼に生まれた者の性でんす」


 ござん、でんす。

 特有の言葉遣いは聞かなかったことにしよう。

 それで、なるほど。

 人を見ると力を試したくなる、と。

 人狼は昔、人を食べると言われていた。

 しかし、基本的には無害ということになった。


「……お前らは人を食べないのか?」

「滅相もないでんす。我らは誇り高き人狼、人でありながら――――」


「「「――――狼!!」」」


 一斉に全員が立ち上がって右手を上げた。

 そして狼、と声を上げる。




 【紅蓮拳】発動。

 先頭の人狼を吹き飛ばす。


「ゔぃえ!!?」


 上空を吹き飛んだ人狼を見て、他の人狼は即座に土下座に戻った。

 吹き飛んだ人狼が身体を引きずりながら戻ってくる。

 暫し時間を置き、聞く。



「で、お前らはオレ達に借りがあるってことだな?」


 にっこり笑ってやると、

 どうしてか人狼達の顔が青ざめた。

















 ――――駆ける。


 凄まじい速さで森を駆けている。

 人狼達の背に乗って移動しているが、衝撃は無い。

 イーグスとガゼルは楽しそうで、リューネは嫌そうだ。

 女は嫌だろうな、人狼は全員男だし。

 特に耳長族であるリューネは男が大嫌いだから、人狼を殺さんと睨んでいる。


 まぁ、貴重な足が手に入ったんだ。

 感謝して欲しいな。


 リューネから【伝心】が飛んできた。


[アンタ絶対殺す!!!]


 あのアフォだけ置いていくか。

 器用に魔力の線を太くして伝えてくんな。

 こちらもお返しとばかりに魔力の線を限界まで太くして【伝心】を使う。


[やってみろ!!!!!!!雑魚が!!!!!!!]

[あああああ!!!!!! うるさい!!!!!]


 クソ、あっちも魔力の線を太くしやがった。

 なんて不毛な争いなんだ。

 

[英雄ジーク殿、この身は夢でも見ているんですかね?]


 ハクキからも【伝心】が届いてくる。

 疲れた頭に響く。


[安心しろ、現実だ]

[……信じられませんね]


 まぁ、人狼の背中に乗ってるなんて確かに信じられないな。

 

[ジーク!!!]


 次から次へと暇を持て余した奴らが【伝心】をしてくる。

 ラーグのは無自覚に魔力の線が太いので文句も言えない。


[……なんだ]

[夢みたいな出来事だな!!]


 お前もか。


[現実だと受け止めろ]

[あぁ!!!]


 それだけかよ、まぁいいが。

 しかしこの速度ならすぐにでも街に着きそうだな。


 真上に飛んでいるジジイが居る。

 実はオレが人狼に襲われている間も空を飛んでいた。

 【伝心】を飛ばす。


[ジジイ、お前は事前に人狼が来ることを知ってたな]


 アイツは遠くから見ていたはずだ。

 なのにオレに教えなかった。


[仕方なかろうが。人狼なんちゅう野蛮な奴らとは話しとうないんじゃから。そいつらめっちょ話聞かんしのぅ。じゃが危害は加えんから放っておいたのは確かじゃ、すまんかったの]

 

 ……まぁ別にいい。

 なんとかなったんだから。


[……許してやる]

[寛大な心遣い痛み入るわい。しっかし、この調子なら日が暮れる頃には着くぞい。良かったの]


 ……まじか。

 もうすぐじゃねぇか。


 笑みが零れる。

 ようやくだ。

 長いようで短い日々だった。


 服の裾を風の魔法で破る。

 服の切れ端で口元を――――【奴隷紋】を隠す。


 【伝心】をイーグスに飛ばす。


[イーグス、【奴隷紋】を隠せ]


 ピクリと肩が動き、前で人狼に乗って居るイーグスが振り返る。

 オレの口元を見て、笑みを浮かべる。

 そして自分のボロボロになっている服を手で容易く破る。

 オレの服は高級なものなので生地がよく、手で破れなかったが。イーグスの服は安物で、朽ちていたから簡単に破れた。


 イーグスは笑みを浮かべたまま破った服の裾で口元を覆う。





「――――これで一緒だね!!」


 そう大声を出すイーグスに、笑みを返した――――。










 

第壱章\(^o^)/オワタ。

ようやくですね。

はい、誤字脱字の報告欲しいっす!

たぶんめっちゃある気がします。


評価、良ければお願いします!

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