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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第10話 来た、見た、買った

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警察署四階 署員食堂 2

「ひじき……?」

 野菜炒めを(はし)ではさんだまま、(まこと)は眉をよせた。

 百目鬼(どうめき)が顔を上げて花織(かおり)の手元を見る。

「とくに好き嫌いはありませんってリプ返しますねー」

 花織が親指を動かす。

「知らない人なんでしょ? 無視しなさい」

 誠は花織のスマホをつかんで止めた。

「というかお嬢ちゃん、女子高生だってことツイッターに書いてんのか?」

 百目鬼が問う。

「プロフィールには書いてませんけど、ポストしたやついくつか見たら分かるかな」

 花織がスマホの画面を見る。

「じゃ、やっぱり犯人の可能性がある。無視して」

 誠は百目鬼と目配せし合った。

 百目鬼がスマホを取り出す。短縮ダイヤルで掛けた。


「──俺。書き込みあった。ツイッター。女子高生のツイートへのリプ──うるせえな、エックスだよ、エックス」


 しかめ面で概要を伝えると、通話を切る。

「今ごろ何だが、写真とかアップしてないよな、お嬢ちゃん。家とか特定されそうなやつ」

「あ、それは大丈夫です。ここの署の自販機とか女性警官のお姉さまのパンプスとかしか投稿してないアカですから」

 なぜパンプス。

 誠は顔をしかめた。

「しかし、ひじきって何だ?」

 百目鬼がスマホを上着のポケットに仕舞う。改めてキノコ蕎麦(そば)をすすった。

「真っ黒と関係あるんでしょうか。ひじき真っ黒ですし……」

 花織が宙を見上げる。

「そういえばまえに友達みんなで、ひじきって料理前はどんな状態なの? って話になって」

「海藻でしょ?」

 誠は答えた。

「そうじゃなくて、どんな状態で材料として売られてるのかっていうか」

 誠は天井を見上げた。

 百目鬼がこちらを横目で見る。しばらく目を合わせてから、首を軽く左右に振った。

「そういえば、お惣菜(そうざい)として料理されたのしか見たことないな」

「でしょでしょ? 料理好きな子もさっぱり分からなかったんです」

「うん」

 誠はうなずいてご飯を口にした。

「何日かしてたまたま乾物屋さんに行った子が、“聞いて聞いて。料理前のひじき見つけた”って」

 カツ丼が運ばれてくる。

 そういえばデザートを先に食べてたのかと誠は思った。お嬢様というと前菜やらデザートやらの順番にこだわるのが日常かと思っていた。

 花織が割り箸を割る。

「ひじきって、乾物屋さんで乾燥状態で売られてるのを水で戻して使うそうです。あとで御園(みその)さんに聞きました」

 花織がカツ丼に切れ目を入れながら顔をしかめる。

「……なんて、ひじき雑談してみても分からないですね」

 蕎麦(そば)を食べ終えた百目鬼が、自身のスマホを取り出しスクロールしている。

 ほかの書き込みをさがしているのか。

 誠は、急いで残りをかっこんだ。

「トイレでほにゃららでしょ、死ぬまで踊らせるでしょ、真っ黒にして殺す、ひじきは好きですか……」

 花織が肉を食みながら呟く。

「タテ読みですかね?」

「そんなわけないでしょ」

 誠はそう返したが、百目鬼が大真面目な顔でコピペをしはじめた。

 ためしに並べてタテ読みをやってみるんだろうか。味噌汁の残りを食べつつ誠は横目で見た。


 

 

「タテ読みでもないみたいだな。一行ずつずらしたり順番入れ換えたりしてみたが、とくに意味のある言葉は出てこねえ」

 警察車両のワゴン車の中。

 商店街の薄暗い屋内駐車場で百目鬼が呟く。走行中もずっとタブレットで文字を打ったり改行したりしていた。

「暗号というわけでもないんですね」

「何らか意味はあるんだろうと思うが……」

 百目鬼がタブレットをスクロールする。エックスにログインしていくつかのワードを検索していたかと思うと、こんどは匿名掲示板に入り関連スレを検索する。

「あちらこちらにバラバラに書いてるんですから、順番に見つけるのは期待してないんじゃ」

 誠は言った。

 現にひじきの書き込みも、花織の知らせがなかったら気づかなかったかもしれない。

「トイレでゲロ吐かして殺す、死ぬまで踊らせる、真っ黒にして殺す、ひじきは好きですか……」

 百目鬼は、シートに背をあずけて溜め息をついた。

「何が言いたいんだ、このヤロ」

 そう呟くと、もういちど大きく溜め息をついて助手席のドアを開ける。

「ともかく、そこらでダイレクトにJK襲って悲鳴上げられるなんてこともあるかもしれん。とりあえず商店街を張るべ」

「はい」

 誠は運転席から降りた。

 駐車場入口に、軽自動車が停まる。

 逆光になって分かりにくいが、見たことのある車だなと誠は思った。

 軽自動車の助手席から、ブレザーの制服に長い黒髪の少女が降りてくる。

 花織だ。

 

「やったー! 間に合った、タイミングぴったり!」

 

 そう声を上げて、こちらに駆けてくる。

 先ほど自宅の付近まで送り、降ろしたばかりだ。

「何してんの! 送った意味ないでしょ!」

 誠は声を上げた。

「差し入れです! 警察、おおっぴらに張れないんでしょ?」

 花織は人狼とフランケンシュタインの被り物を差し出した。

 そういう花織は、黒猫の耳つきのカチューシャをつけ、制服のプリーツスカートからは、ごていねいに黒い尻尾まで生やしている。

「いちど帰ったんだから、せめて女子高生って分かりにくい服着てくればよかったのに」

 誠は顔をしかめた。

「それじゃ意味ないです。(おとり)捜査にトライするんですから」

 誠は人狼の被り物を手に固まった。

 花織がピースする。

「手っ取り早いでしょ?」





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