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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第10話 来た、見た、買った

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朝石駅前アーケード商店街 3

 百目鬼(どうめき)がスマホに送られてきたメールの画面をスクロールする。

 誠は横から覗いた。

 

「 “トイレでゲロ吐かせて殺します”、もう一つは “死ぬまで踊らせます” 」


「殺し方というか……」

 誠は嫌悪を覚えた。

「クソ変態だな」

 百目鬼が吐き捨てる。

 誠は商店街の人混みを見渡した。

 警察官の配備を嫌がった商店街に配慮して、私服の警察官があちらこちらに張っている。

 そのうち一人と目が合い、誠は小さく会釈した。

「同じ人間があちこちに書き込みしてるんですかね」

「んー……」

 百目鬼が書き込みの画面を親指で上下にスクロールする。

「文面的には同じっぽい気もするが……」

「IPは」

「別だとよ」

「こんなのあったんですかあ」

 突然ソプラノの声が背後から挟まれる。

 制服姿の花織(かおり)が、いつの間にか二人の間からスマホを覗きこんでいた。

「うわ」

 誠は思わず引いた。

 久々のブレザーに(ひざ)上のプリーツスカート、サラサラの下ろした髪。

 以前切りそろえた頬の横の髪は、伸ばしている最中なのかカチューシャで留めている。

「花織さん?! お友達は」

「事件みたいだから、みんなごめんって別れてきました」

 花織が片手を顔の前に立て、謝罪している仕草をする。

「いや学生に関係ないでしょ」

 誠は、先ほど女子高生の集団に詰めよられた場所を遠目に見た。

 黒猫の大きな頭部を目印にすれば花織を避けられると思っていた。迂闊(うかつ)だった。

「着ぐるみは?」

「今日のところはみんなで交代で着てたので、さよちゃんと交代しました」

「さよちゃん……」

 名前で言われてもと思う。

「編み込みにしてた子です」

「……そ」

 あれは三つ編みじゃなくて編み込みっていうのかと思う。

「見ての通りだ、お嬢ちゃん。危ないからお友達ともどもハロウィン終了まで家にいろ」

 スマホ画面を上下にスクロールしながら百目鬼が告げる。

「聞き捨てなりません。それじゃ犯人の思うつぼじゃないですか!」

 花織が声を上げる。

「いや……犯人は女子高生を殺すのが目的だから思うつぼかな」

 誠は宙を見上げた。

 どういう方向に考えたんだろう。

「女子高生を外出させたくない犯人なんじゃないですか?」

 花織が言う。

 誠は顔を上げた百目鬼と目を合わせた。

「言われてみればそういう線の可能性も……」

「あるのか?」

 百目鬼が眉をよせる。

「どっちにしろ犯人の動機も人数も分からん状態じゃ、安全なほうを取るべきだろ。お嬢ちゃん、いまからこの変態書き込み、ツイッターで拡散しろ」

「いまはエックスです」

 花織がきっぱりとした口調で言う。

 百目鬼がきつく眉をよせた。

「名称、エックスに変わったんです」

「……何だそのいちいちドラムセット破壊してそうな」

「わたしも青鳥のアイコンのほうが好きですけど、いまは秘密結社みたいなエックスマークが出てくるんですよね」

 花織が制服のポケットをさぐる。

 スマホを取りだし、操作した。

「これです」

 スマホの画面をかざし「X」のアイコンを見せる。

「ご自宅でお気軽に秘密結社入会の気分が味わえちゃう割に、URLが相変わらずツイッターコムなんですけど」

 百目鬼が上体をかがませてアイコンの表示された画面を見る。

「センスわっる」

「ともかくエックスでもツイッターでもいいからお友達に知らせてやって」

 アーケードの下を通る人々を眺めながら、誠はそう口を挟んだ。

 うーん……と花織が(うな)る。

「みんな露店のミニバームブラック買うの楽しみにしてるんですよねえ」

「何それ」

「ハロウィン伝統のドライフルーツのケーキです。中に指輪とかコインとか入ってて、それで未来を占うんです」

「露店の食いもんなんかよく食えるな」

 百目鬼が顔をしかめる。

「他県の有名なお菓子屋さんの出張販売ですよ。ちゃんと包装してありますし、商店街の組合の許可も取ってるみたいです」

 百目鬼がこちらを見る。(あご)をしゃくった。

 裏を取ろうかということなのだろう。

 誠はうなずいた。

「今日もいるのか? そのお菓子屋さん」

 百目鬼がアーケードの下の人混みを見渡す。

「たぶん」

「んじゃそのベンタブラックとやらだけ買って、お嬢ちゃんたちはさっさと帰ったほうがいい」

 百目鬼が荒い溜め息をつく。

「バームブラックですよ。ベンタブラックじゃ見えないじゃないですか」

 花織が唇を尖らせる。

 ハロウィンに合わせてか、アーケードの各所にあるスピーカーから不気味で不安を煽るような曲が流れだす。

「縁起でもねえ……」

 百目鬼がぼやいた。





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