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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第1話 となりの芝生が青すぎる

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一之瀬家の庭 2

「うっそ」

 花織(かおり)が目を丸くする。

「多分、可能性は高いと思う。売買してたグループと関わりがあるかもしれないから家に……」

「やったじゃん、人見(ひとみ)さん」

 花織が顔の横に手を当て、声をひそめる。

「わたしと中入ったら、合法的に家宅捜索できちゃうじゃん」

 合法的の意味も家宅捜索についてもだいぶズレているが、そこの訂正はあとでいいだろう。

「だめ。帰って」

 誠は語気を強めた。

「人見さんはどうするの?」

「もう少し確認してから。……電気メーターさがしてるんだけど」

 誠は一之瀬家の外壁を見回した。

「電気メーター?」

 花織が問う。

「大麻の成長を早めるのに大量の電灯使ったり、エアコンで室温調節したりするから、電気メーターの回り方が早かったりするんだけど」

 「ふーん」とうなずいて、花織が誠と同じように外壁を見回す。

「あれかな?」

 前方を指差して家屋の一角に歩みよった。

 花織の目線よりやや高い位置に、薄桃色の箱が設置されている。小さく花の模様がついた、一見するとおしゃれなポストかという感じだ。

 花織が花模様のついた(ふた)を上げる。

 中から電気メーターが顔を出した。

「……こんなのあるんだ」

「電気メーターカバーですよ。ちょっとこだわる人とか、ガーデニングやってる人なんかは結構つけたりするみたい」

 花織が説明する。

 やはり中から覗くメーターはすごい速度で回っている。

百目鬼(どうめき)さんちょっと呼ぶから」

 スマホを取り出そうと誠はスーツのポケットをさぐった。

 ザッ、と背後から芝生を踏む音がする。

 二人で同時に振り向く。一之瀬の偽物(にせもの)の女性が立っていた。

 無表情でこちらを見ている。

「これオシャレですよねー。うちのは外壁に合わせたレンガ風でぇ、御園(みその)さんの手作りなんですけど」

 花織がカバーを指差して愛想よく言う。

「日本で売ってるのって、可愛くないのしかなくって。可愛いのとかオシャレなのだと、だいたい外国の通販とかなんでよねー」

 花織がニコニコと話す。

 外国か。

 大麻売買の主犯の妹が海外から帰国したという話を不意に誠は思い出した。

 関係はないだろうけど。

 女性がわずかに後退る。

 誠は警察手帳をとり出して女性に近づいた。

「警察です。少々お話を聞かせていただけますか」

 女性がきびすを返して走り出す。玄関のドアを乱暴に開けると、中に向かって叫んだ。

「待っ……」

「兄さん! 警察だ!」

 そのまま乱暴にドアを閉め、敷地の外に逃げる。

「兄さん?」

「追って。人見さん」

 言いながら、花織が誠のスーツのポケットをさぐる。

「なっ……何してんの?!」

「百目鬼さんはわたしが呼びますから心置きなく追ってください」

 花織が誠のスマホを取り出し操作する。

「勝手に人のスマホをねー!」

「追って!」

 花織が前方を指差す。

「もうっ!」

 道路まで追うと、百目鬼が並行して走ってきた。

「あれ何かしたのか!」

「花織さんから電話は行ってませんか!」

 追いながら尋ねる。

「署に戻るって言いに来たらお前が走ってた」

「大麻栽培の疑いありです。話聞こうとしたら逃げ出しました!」

「おっ」

 成程、という顔で百目鬼が走る速度を上げる。

 花織がかけたスマホからの着信音が鳴るものと思っていたのだが、いつまで経っても百目鬼のポケットからは音がしない。

「何してんだろ……」

 チラッと誠は振り向いた。

 花織が少々心配になる。あのまま家に戻ってくれるものと思ったのだが。

「百目鬼さん、すみませんお願いします! ちょっと花織さんのほう見てきます!」

 誠は方向転換した。

 「おう」と百目鬼が返事をする。追うまでもなく、女性は道の先で息を切らし屈んでいた。




 一之瀬家の庭に戻る。

 花織は一之瀬家の玄関を覗きこんでいた。

「花織さん!」

 誠は駆けよった。

「何やってんの! 家に戻って……!」

 一之瀬家の屋内から、ダンダンッという乱暴な足音がする。

 大柄な初老の男が玄関から飛び出し、花織の首に腕を回した。

「んゎっ!」

 花織がグッと上を向く。

「花織さん!」

「えっ、ちょっと。めっちゃ人じ……!」

「おい、やめろ!」

 誠は叫んだ。

「うるせえぞ。この女と引き換えだ。妹をこっち戻せ」

「やめないと血管に空気入れるからね!」

 花織が男の腕に注射器を当てる。

 男が怪訝な顔をした。

「どこから持って来たの、そんなの!」

 誠は呆れて(とが)めた。

「うちのパパの診察室からくすねて来ました」

「いろいろ違反!」

 誠は声を上げた。

 今日一度も部屋へ来ずにいたのはそういうことかと思い至る。

「か弱い女子高生が武器も持たずに来るわけないでしょ!」

「か弱いなら、さっさと家に戻ってなさい!」

 だいたい、一之瀬さんに証拠のために近づくのは恐いとか言ってなかったか。

「ていうか空気入れたら死ぬから! 脅しにならないでしょ!」

「正当防衛」

 花織が言う。

 首をとられた不自然な体勢だが、注射器を皮膚に当てる手つきが看護師なみに慣れているように見える。

 門前の小僧なんとかいうやつだろうか。

「過剰防衛言われかねないから、それ!」

 誠が叫ぶと同時に、百目鬼が後ろから男にとびかかる。

 押さえ込もうとしたが、花織に気をつかったせいか振り切られた。

「チッ」

 百目鬼が舌打ちする。

 誠は花織のもとに走りより、花織の手首をつかんで救出した。百目鬼のいるほうに突き飛ばす。

「追います!」

 言いながら走りだす。

 一之瀬家の庭を出て、男が道路に出る。

 付近の家の庭に侵入しようとしたところで、誠は男の肩をつかんだ。

 相手の足をとり、タックルするように押し倒す。

 道路に倒れた男の腕をつかんだまま、息を吐いた。





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