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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第7話 深淵を覗くとき深淵もまたこちらを覗いてたらホラーじゃないですか

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音喜多ビル付近 1

 閉店したスーパーの駐車場に警察車両のワゴン車を停め、人見 誠(ひとみ まこと)巡査は、奥まったところにある廃ビルを確認した。

 閉店した店の相次いでいる界隈で、駐車場のすぐ横の小さな商店も長いこと廃屋らしい。

 アスファルトの隙間からは雑草が生え、伸び放題だ。

「心霊スポットだらけだな」

 先輩刑事の百目鬼(どうめき)が、先に助手席から降りてあたりを見回す。

 「うー、あち」と呟いて、自身のネクタイを少し緩めた。

 周辺からは(せみ)の鳴き声が聞こえる。

「あのビルですか。音喜多(おときた)ビル」

 (まこと)は問うた。

 百目鬼がタブレットを取り出し、地図を表示させる。

「あれだな」

 そう言い、指で差して階数を数えた。

「ビルっていうからもっと高い建物だと思った。四階建てか……?」

「四階ですね」

 誠も目視で数える。

「しかし何でこんなところに暗くなってから女の子だけで来るかな……」

 誠は周囲を見回した。

 少し離れた県道のあたりまで、先ほどから通る人はゼロだ。

 空き地もところどころにあり、ずっと向こうにある民家らしき建物も昼間からカーテンが閉まったまま。人が住んでいるのかどうか少々怪しい。

「涼みにじゃねえの? シーズンだし」

 百目鬼が答えて手元のタブレットを操作した。誠も横から覗く。


「最初のは一ヵ月ほど前。音喜多ビルに幽霊が出ると聞いて、キャッキャ探検にきたJD二人が、暗闇から誰かが見てるのに気づいてあわてて逃げた。一人は逃げきったが、もう一人は遺体で発見。乱暴された形跡あり」

 

 百目鬼がタブレットを操作する。

「二件目は現在空き家になっている臼越市の伊喜(いき)邸。事故物件と聞いて不法侵入してワクワク探検しようとしたJKとDK数人が、屋内で暗闇から自分たちを見てる者がいてあわてて逃げた。JK一名が以下同文」

「三件目が二日前でしたよね。廃トンネル」

 誠は確認した。

「三件めはJK、以下同文」

 百目鬼がタブレットを操作する。

「まあ、心霊スポットにくる女の子狙った変態だろうな」

「逃げた子も結構いるけど、真っ暗闇だったから顔もその他の特徴も分からない……」

 誠は呟いた。

「特徴が分からないのに、目が自分の方向いてるのは分かるもんか?」

 百目鬼が首をかしげる。

「目だけギョロっと暗闇で見えたってだいたいの子が証言してますけど……」

 誠は答えた。

 それにしても暑い。


 ふと花織(かおり)のことが思い浮かんだ。

 彼女なら、暗闇の目の特徴だけで誰なのかを特定することはできるだろうか。


 百目鬼がタブレットを見たまま軽く眉をよせる。

「……お前いま、あのお嬢ちゃん思い浮かべなかった?」

「いえ……」

 誠は困惑しつつも否定した。

 何で分かるんだ。

「んー……」

 百目鬼が何かを考えてるような仕草で頬を掻く。

「とりあえず外と中見てみんべ。鑑識が見落としたものとかあるかもしれん」

「このあたりじゃ聞き込みも無理かな……」

 誠はもういちど周囲を見回した。

 蝉の鳴き声がうるさい。

 よけいに暑くなりそうだ。

「いっそ夜張って現行犯逮捕とか」

「いよいよとなったらやるか」

 百目鬼が答える。

 誠はネクタイを少し弛めた。ビルの方に歩を進める百目鬼に付いて行く。

 百目鬼が歩きながらタブレットをスクロールした。

 そのとき。


「きゃ━━━━━━!」


 甲高い悲鳴が聞こえた。音喜多ビルの方からだ。

 明らかに女性の声。

「んぁ?!」

 百目鬼が目を見開いて顔を上げる。

「こんな昼間っから、納涼被害者まつりやりにきてる馬鹿がいるのかっ?!」

 誠より一瞬早く反応して、百目鬼がビルに向かって走り出す。

「たぶん一階からでした。もしかしたら出入口からすぐに出てくるかも」

 誠も走り出した。

「通報! 通報してください!」

 若い女性の声が聞こえる。外からのようだ。何とか出入口から逃げてきたのか。

 誠は警察手帳を取り出しつつ、伸び放題の植木を掻き分けた。


「警察です! 何かありましたか!」

御園(みその)さん、幽霊でたぁ!」


 長い黒髪をポニーテールにした女の子がガッチリと抱きついてきた。

 Tシャツに、(すそ)の少し広がったショートパンツ。

 薄着なので体温がダイレクトに伝わる。

「大丈夫……なら、ちょっ、ちょっと離れて」

 誠は、女性の肩をつかみ無理やり引き剥がそうとした。

「 “御園さん”……?」

 横で百目鬼が立ち止まり目を眇める。

 誠に抱きついた女性を怪訝そうに見つめた。

「え……?」

 御園さんとは。

 ありふれた苗字というわけではない。

 それよりもこのポニーテールに結われたサラサラの黒髪。見覚えがあるような。

 女性が顔を上げ百目鬼のほうを見る。

「声からして百目鬼さん?」

「うわっ」

 誠は女性の肩に手をかけたまま声を上げた。

「あ、人見さんだ」

 女性が目を丸くして誠の顔を見上げる。


 余目 花織(あまるめ かおり)


 何度か事件解決に協力してもらった失顔症の女子高生。

 人の顔の区別がつけられないのて、顔以外の観察力に長けてる。

「な、何でこんなところにいるの! 学校は?!」

「夏休みです」

 花織はピースした。





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