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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第6話 地獄の沙汰も顔次第

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地元テレビ局前 1

「ちなみにこれからどういうご予定だったんですか?」

 花織(かおり)が周囲の建物を見回す。

 どこかで食事をしてからというつもりだったが、署に帰ってから食べた方がいいだろうか。

 そう考え(まこと)百目鬼(どうめき)に目で問いかけた。

「ここの近くにおんざきコーポレーション系列のレストランあるから、このちゃんが来れば割り引いてくれると思うんですけど」

「花織さん」

 誠は眉をよせた。どうにもこの子は苦手だ。嫌っているというわけでは決してないんだが。

「せっかくだけど僕たち、署から急いで戻って来いって言われて」

人見(ひとみ)

 百目鬼がスーツの(そで)をつまむ。

 誠はそちらに目線を向けた。

「ヤバい。挨拶はいい。さっさとずらかるぞ」

 何か周囲を気にしている。

「怪しい人間でも?!」

 誠は周囲を見回した。

「違う」

 百目鬼がそう答えたのとほぼ同時に、背後から「はぁぁ……」と切ない溜め息が聞こえる。

 誠は振り向いた。

 ボブヘアの小柄な美少女が立っている。気の強そうな外見の花織とは対照的に、おとなしそうな見た目の子だ。

 両手で口を抑えて頬を赤らめ、もう一度「はぁ……」と溜め息をつく。


「お二人とも相変わらず尊い……」


 誠は思わず後退った。

 温崎 好花(おんざき このか)

 花織の友人で同じ女学園の生徒。大企業おんざきコーポレーション社長の姪。

 そして、腐女子。

「このちゃんこのちゃん。お二人、今日はデートだって」

 花織が面白そうにそう告げる。

「捜査」

 誠は語気を強めた。

「捜査だけど花織さんと関わる気はないからね。仕事してるんだから、変な勘繰りしないの。じゃ」

 誠はきびすを返した。

「だからヤバイって言ったんだよ。嬢ちゃんが “お友達が来たら”って言ってたろ」

 百目鬼がぼやいて頭を掻く。

「しゃあない。食事は署員食堂にするか」

 

「あ、お二人とも」


 好花(このか)が小走りであとを追ってくる。

 誠はつい立ち止まった。

「先日はお世話になりました。改めてのご挨拶が遅れてごめんなさい」

 好花が折り目正しい仕草で礼をする。

「いえ……」

 誠は表情を緩ませた。

 ついつい花織と同じ扱いをしてしまったが、花織ほど関わりがあった子ではないのだ。もしかして傷つけてしまっただろうか。

「その後……大丈夫? 精神的に」

「はい」

 好花がにっこりと笑う。

「推しカプの尊い様子をいつもかおちゃんから聞いてて、むしろ幸せ」

 誠は笑顔をひきつらせた。

「ここにいらしてたということは、捜査はテレビ局の関係ですか?」

 好花がテレビ局の建物を見る。

「えと……あまり言う訳には。悪いけど」

「構いません」

 好花がこちらを向いて微笑んだ。

「おんざきコーポレーションがスポンサーの番組に関してなら、言ってください。情報収集してご協力します」

「……ありがと」

 たしかこの子、前に本家の跡継ぎ候補二人の会話から身代金の受け渡しの指定日の見当をつけるという諜報員なみのことをしていなかったか。

「あ、スポンサーっていえば」

 スマホを取り出し何かチェックしていた花織が顔を上げる。

「明日の人さがしの特番、おんざきコーポレーション系列の会社がスポンサーなんでしょ?」

 「うん」と好花が返事をする。

「どこかの女優が、とつぜん自分の身内やってくれって割り込んで来たってほんと? 他の人の枠(けず)れとまで言ったとかって」

「大丈夫。その分時間を十五分延長するんだって」

「あ、そうなの」

 花織がスマホをポケットにしまう。

「どうせつまんないバラエティしかないから、どこの番組が潰れもいいけど」

「花織さん、スポンサーやってる企業さんの身内の前で言わない」

 誠は顔をしかめた。

 こんなやり取り、前にもあったなと思う。

「でもおんざきコーポレーションも特に不満はなかったみたい。女優の真船 令奈(まふね れな)さんが特別枠で出演なら視聴率も取れそうって」

 好花が言う。

 誠は百目鬼と顔を合わせた。

「いま出演してる妖怪もののドラマもうちがスポンサーだから、宣伝になるしってのもあって」

「真……」

「ああ、あのすげえ特殊メイクのドラマ」

 百目鬼が声を上げる。

 真船 令奈が番組でさがすのは、付き人の女性かとつい聞きそうになった誠を制するような言い方だ。

 すみません、という風に誠は百目鬼と目を合わせた。

 番組が放送されれば全てバレるだろうと思うが、いちおう脅迫めいた書き込みがあったということでそちらの関連も含めての捜査なのだ。

 真船 令奈も何を考えているのか。

「その真船(まふね)なんとかって人、そんなに人気なの?」

 花織が興味もなさそうに尋ねる。

「かおちゃん、ドラマ観ないもんね」

 好花が苦笑する。

「へえ……そうなんだ」

 女の子にしては珍しいなと誠は思った。若い女の子というと何となく恋愛ドラマ好きというイメージだ。

「だって、顔の見分けがつかないから」

 花織がそう答える。

「全員が髪型もファッションもものすごく違うならまだいいんですけど、同じ背格好とかだと見分けがつかなくてストーリー分かんなくなるんですよね」

 成程と誠は思った。リアクションしにくい答えだなと思う。

「ね、ところで」

 花織が切り出す。


「お二人の捜査に関わってんの、女優さんと違うの?」





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