表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第5話 両手に花織

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/455

警察車両ワゴン車 車内 2

 (まこと)は、前方の灰色の一本道を見つめた。

「……指示されたの時系列的にいつです? 廃ビルで遺体が見つかる前?」

「日付を確認させたら前らしい。そのときに脅されて、嬢ちゃんが襲われる一時間前にスマホに若い女の画像が送られて来たんだと」

「たぶん奥重 彩(おくしげ あや)さんの画像ですよね」

 赤信号にさしかかる。

 誠は車を停め横を見た。

「犯人が持っていた画像、こちらに送ってもらえますか」

「いま読み込みしてる」

 百目鬼(どうめき)が答える。

 どんな画像かで、奥重 彩と彼女を襲うよう指示した人間の関係性が分かるかもしれない。

「お嬢ちゃんソックリの顔きた」

 百目鬼が呟く。

 青信号になる。誠は車を発進させた。

 少し進んだところにある選果場の駐車場に入り、車を停める。

 シートベルトを外しながら、百目鬼が手にしたタブレットを横から覗いた。

 家族写真を切り取ったもののようだ。

 奥重 彩の両脇に顔の一部だけが写っているのは、彼女の両親だろうか。

「改めて見ても花織(かおり)さんにそっくりですね……」

 誠はカメラをまっすぐに見て微笑する奥重 彩を見つめた。

「家族写真を持ってるって、ふつうどういう関係性だ?」

「やはり家族とか。年賀状の写真なら、親戚とか親しい友人とかいろいろいるでしょうけど」

「まあ、隠し撮りするしかない赤の他人じゃないわな」

 百目鬼が(あご)に手をかける。

「だいたいはそうですよね」

 誠はそう返した。

「彼女は、遺体が伯父の五反田 太平(ごたんだ たいへい)さんではないと言っていたんですから、もし彼女の言う話が本当なら、伯父の五反田(ごたんだ)氏にとっては邪魔な姪っ子ってことに」

 百目鬼が目を見開いて誠を見た。

「おい……」

 無精髭(ぶしょうひげ)に囲まれた口を、呆然と開けたまま誠を凝視する。

「何でそんな単純なこと思いつかなかったんだ」

「え……あ」

 誠は百目鬼の顔を見返した。

「え、そういうこと?!」

「分からんが、話のつじつまは合う」

 百目鬼は、スマホを取り出した。短縮ダイヤルでかける。おそらくは刑事課だろう。

「──誰か手ぇ空いてる奴いる? いなかったら他の課でも生安でも聞いてこい」

 唐突に強引なこと言うなと誠は横で顔をしかめた。まあ、たまにあることなのだが。

「五反田 太平って男。ちっと調べてくれ。改名か養子縁組。主にそのへん」

「養子縁組ですか?」

 誠は問うた。

「養子縁組すりゃ苗字を変えられる。成人の場合は手続きが意外と簡単で、書類によっては別人って扱いになるから、この方法で借金しては踏み倒しを重ねてたやつが昔いて」

 百目鬼が説明する。

「つまり、書類上は割と簡単に別人になれる」

 百目鬼は言った。

「増殖お嬢ちゃんの話が本当ならマトモな奴じゃねえから、妙に気になってた」

 百目鬼が選果場の様子を眺めながら顔をしかめる。

「身代わりの遺体を用意なんてことを躊躇(ちゅうちょ)もなくやってのけて、シレッと高跳びを計画中、姪っ子の殺人まで指示してのけるような人間」

 百目鬼は眉をよせた。

「ちょっと一般人とは思えねえ。反社の人間が名前変えてる可能性も」

 誠は前方の選果場の建物を見た。直売所も兼ねているらしくカラフルな旗がはためいているが、店の人間は中にいるのか見かけない。

「ま、改名してるとしたら家裁の身分事項欄の確認することになるし、二分や三分じゃ返事こねえだろ。飯食いに行こうや」

 百目鬼がシートに背をあずけた。




 灰色の一本道をふたたび車で走り始める。

 誠のスマホの着信音が鳴った。

 百目鬼が手を伸ばして誠のスーツのポケットをさぐる。

「すみません。あ、そっちじゃなくて右です」

「いいから前見て運転してろ」

 百目鬼が言う。スマホの画面をチラッと見て耳に当てた。


「おかけになった電話番号は、現在使われておりません」


 突然そんなことを言い始める。

「ど、百目鬼さん! 誰ですか! 誰の電話!」

 ハンドルを握りながら誠はあわてて尋ねた。

 スマホからソプラノと思われる女性の声が漏れ聞こえる。

「──そんなダミ声のオペレーターいるわけないです。人見(ひとみ)さんはどうしました。百目鬼さんの横で寝てるんですか?」

 たぶん花織の声だ。

 何かあったんだろうか。

「花織さん?! どうしたの? 病院にまで変なやつが来たの?!」

 運転しながら誠は声を上げた。

「第二、第三の刺客か。可能性あるな」

 百目鬼が他人事のように言う。スマホをスピーカーに切り替え、ダストボックスに置いた。

「どうした、お嬢ちゃん。おっさんらは忙しいからケガ人は寝てろ」

「ちょっとわたし、お手柄かもしれません」

 花織が明るい声でそう返す。

「百目鬼さんが横流ししてくれた五反田(ごたんだ)さんの動画見てたんですけど」

「横流しって……」

「人聞き(わり)ぃな」

 百目鬼が顔をしかめる。

「お二人のお手伝いをするようになってから、わたしあちこちで通行人の特徴見るようになったんですけど」

「頼んでないから」

 誠は語気を強めた。

「人の顔ジロジロ見て狙われたことあんのに懲りねえな」

 百目鬼が呟く。


「遺体の五反田さんは、朝石市の駅の裏にいたホームレスさんです」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ