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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第5話 両手に花織

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桜林外国語大学前

 桜林外国語大学。

 創立以来、語学と国際教育をに力を入れグローバル社会で活躍できる人材の育成をめざしている私立大学。

 奥重 彩(おくしげ あや)が通っていると話していた大学だ。

 誠(まこと)と百目鬼(どうめき)は、学長を「こっそりと」訪ねた。

 奥重 彩へのお悔やみを告げる体(てい)で、さりげなくどんな人物かを聞くつもりだったが。

 早々に話を終え、駐車場に停めたワゴン車に戻る。

 二人でほぼ同時にシートにどっかと座った。百目鬼がシートベルトを締める。

「そんな人いないって……」

 誠は前髪を掻きあげた。

 学長を通じて職員に何度も確認してもらったが、在籍していたという経緯すらなかった。

「 “奥重(おくしげ)” なんて珍しい名字だから、読み間違いされてんじゃないかとも思ったんですけどねえ……」

「身元偽ったか、それとも偽名か。いよいよ怪しいな。あの増殖お嬢ちゃん」

「百目鬼さん、変な名前で呼ばないでください。混乱しますから」

 誠は顔をしかめた。

「名前の方が混乱しねえ?」

 百目鬼がタブレットを操作する。

 人のことを女の園アレルギーとか言っておきながら、自分の方がよほど女嫌いなんじゃないかと誠は思った。

「どうします? 奥重さんの証言、無視しますか?」

「いちおう可能性がゼロじゃないなら潰さんとなあ。廃ビルの遺体だけ調べても進展なかったのも確かだし」

 百目鬼が言う。

「そんなときこそ元祖お嬢ちゃんの出番だろ」

 タブレットを操作しながら百目鬼はそうと続けた。

「あちこち当たったら、経営してた店の付近の防犯カメラに生前の五反田 太平(ごたんだ たいへい)が歩いてるとこ映ってたってよ」

「百目鬼さん……」

 誠は眉をよせた。

「いくら何でも。昨日の今日だしケガ人ですよ」

「さっき病院に電話したら本人出て、お見舞い来てくださーいって言ってたぞ」

 誠はハンドルに突っ伏して、ガックリとうなだれた。

 昨日あんなに心配したのに。

「まあとっさに避けたとはいえ、深めの傷ではあったみたいだけどな。落ち着いたら傷跡は整形手術で消す予定だってさ」

「……良かったですね。あんなに可愛いのに胸の位置にざっくりとか可哀想ですし」

「あんまでかくないけどな」

 百目鬼が呟いてタブレットを操作する。

 誠は目をめいっぱい見開いて百目鬼を見た。

「ど、百目鬼さん、それセクハラ!」

「本人の前じゃねえからいいだろ。さっさと車出せ」

 タッチペンで前方を指し百目鬼が言う。

 もう、と誠は吐き捨てた。

「……次はどこですか」

 シートベルトを締めつつ誠は尋ねた。

「余目(あまるめ)総合病院」




「いらっしゃい。メロン食べます?」

 余目総合病院三階の入院室。

 壁紙のほとんどが木目調の落ち着いた感じのある部屋だ。

 誠と百目鬼が訪ねると、思ったよりもずっと元気な花織が、カットしたメロンの皿を差し出した。

「……痛みはないの?」

 誠は問うた。

「痛み止め飲まされたからヘーキヘーキ」

 花織が明るく言う。

「パパとママは、警察署でこんな危ないことになるなんてって、ちょっと怒ってたけど。署長さんに抗議するんだって」

 うっと誠は胸元を押さえた。

 離れた位置だったとはいえ、会話を交わしていた最中だったのだ。責任を感じる。

「じゃあ、そのうち警察署に行っちゃダメ食らうかもな」

 誠のななめ後ろで百目鬼が言う。

「かも」

 花織が笑った。この様子ではダメと言われても来そうだと誠は思うが。

「禁止食らう前にこれ見てくれるか、お嬢ちゃん」

 百目鬼が小脇に抱えていたタブレットを花織に差し出した。

 花織が受け取る。

 ケガを阻止してやれなかった上に申し訳ないが、他に突破口につながりそうなものもない。

「無理しないで。具合が悪くなったらやめていいから」

 誠はそう言った。

「誰ですか?」

「殺されたとされる五反田 太平の防犯カメラ映像。んで、こっちが」

 百目鬼がベッドの脇でかがみタブレットを操作する。

「こっちが見つかった遺体」

 百目鬼が二本指を広げる。

「……の、顔のアップ」

「百目鬼さん!」

 誠は顔をしかめた。

「前に死体平気って言ってたよな、お嬢ちゃん」

「ダメだったらそこで言ってね。あくまで捜査協力だから」

 タブレットをじっと見つめる花織を、誠はハラハラしながら見た。

「どうだ? お嬢ちゃん。こっちとしては同一人物に見えるんだが」

「違う人物だとしたら、よく似たホームレスでも連れてきたか、そんなとこかと思ってるけど」

 誠は言った。

 「んー」と花織が唸(うな)る。

 首をかしげ、しばらくして顔を上げた。


「同じ人ですね」





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