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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第34話 懐疑は踊る 桜花は踊る

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諸人美術館 大広間 6

「──高いな」

 百目鬼が答える。


「ただの愉快犯とか関係ないテロリストとか、いろいろ可能性を排除したらだけどな。──おまえ、はじめの報告で三上 徹(みかみ とおる)の似顔絵と顔がちがう言ってたよな」

 

「はい」

 誠は答えた。

 似顔絵の人物よりも目が大きく若い印象があった。

「やっぱ整形したのかもしんねえな。似顔絵捜査官よぶから、ちっと車両ん中で協力してこい。ウエイターは──八十島(やそしま)も一人じゃあれだし、だれか代わりに入れるか」

 百目鬼が荒いため息をつく。

 かたわらの捜査員になにか指示したようだ。


 

「もしもし百目鬼さん、ごくろうさまでーす」


 

 花織(かおり)が横から身を乗りだし、インカムのマイクに向かって声を上げる。

「ちょっ、何してんの」

 誠はあわてて花織から離れた。

「──何いちゃついてんの、おまえ」

「ついてません」

 弁明する誠に、花織がふたたび近づく。

「察するところ、うちに治療にあらわれて採血した血液を強奪しろと指示したかたですか?」

 誠はつい目を泳がせてしまった。

「ノーコメント」

 そう答える。

 花織が、ずいっとインカムのマイクに顔を近づける。


「うちの防犯カメラに治療にきたときのものが映っていると思うんですけど、提供うけてません?」


 花織がインカムを通して百目鬼に問う。

 とうぜん提供は受けていたが、待合室も診察室もプライバシー保護の観点であまり顔がはっきり分かるようには映っておらず、似顔絵作成という意味では使えなかったのだ。

「もちろん病院の防犯カメラですから、個人がはっきりとは特定されにくいように映っているのは知ってます。ですけどわたしなら、動きさえ分かればオッケーです」

 誠は目を見開いた。

 すくなくとも、さきほどのオフィススーツの男が三上(みかみ)かどうかは分かるということか。

 

「──嬢ちゃん」


 百目鬼が呼びかける。

 背後から「だれですか? 人見の情報屋?」と問う声が聞こえる。先輩の捜査員だろう。

「人見のカノジョ」

 百目鬼がそう答える。

「違います」

 誠は即座に否定した。

 交際届を出しているわけでもない上に未成年だ。変な嫌疑をかけられたらどうするんだ。

「──嬢ちゃん、人見のおてつだいとか言ってっとパーティでのお楽しみが台なしになるぞ。こっちは会費なんか一円も返金しねえからな」

「了解です。地域の平和のためにがんばりまっす」

 花織がそう返す。

 ほんとに分かってんのかなと誠は思った。


「──人見、美術館さんに別室提供してもらって嬢ちゃんに防犯カメラ見てもらえ」


 百目鬼が指示する。

「分かりました」

 「誰かウエイターできっか?」と百目鬼が周囲に呼びかけた声がインカム越しに聞こえる。

「えっと、ウエイターの制服は」

「──着替えてる時間もったいねえ、もう一着イベント会社に借りるべ。おまえ嬢ちゃんのほうと似顔絵、ちゃっちゃと済ませて会場に戻れ」

「はい」

 誠は返事をした。

 いそがしいなと内心思う。

 


「じゃ、花織さん。美術館に言ってどこか座れるとこ案内してもらうから」



 誠は花織を廊下のほうにうながした。

 出入口のほうはまだ撤去作業をやっているのだろうか。カーテンがかかったままだ。

「──人見」

 八十島がインカムで呼びかける。

 そちらを見やると、バックヤードのまえで手招きしていた。

「──バックヤードの搬入口と、会場の奥のオーケストラがいま入ってきた出入口、あとカーテンのかげに二箇所ばっか非常口あるってさ。そのあたりから出れば?」

 そう提案する。

 誠は会場内を見回した。

 オーケストラの出入口はいま使ったら迷惑だろう。目立たず出入りできそうなのはバックヤードの搬入口か。

「じゃ、花織さん。いま出入口は危ないから、バックヤードのほうに。悪いけど」

 せっかくきれいなドレスを着ているのに裏口を通らせるのか。

 何かかわいそうな気がするが。


 花織が手を差しだす。

「え、なに」

「 “お嬢さま、こちらへ” 」

 誠は眉をひそめた。

 またか。こちらは非日常をやってるんじゃないのに。

「……お嬢さま、こちらへ」

 棒読みで復唱してバックヤードのほうにうながす。

「手を引っぱるんですよう。やり直し」

 花織が唇をとがらせる。

「あのね」

 誠は顔をしかめた。


「……お嬢さま、こちらへ」

 これみよがしにため息をついて、言われたとおり手をとる。


 こんな指示しておいて、手をとったとたんにセクハラ扱いするというトラップじゃないだろうなとつい疑ってしまう。

「へへっ」

 花織がつないだ手を持ち上げておかしな笑い声をもらす。

 まえにもこんなことあったなと誠は思った。



「人見さんの手ってやっぱり大っきいですねー。まるでオス猫の骨格から大きい顔を見たときの感動と同じ感覚」



 ……やっぱりまえにあった。

 人の手をとるたびに何回同じこと言うんだこの子と誠は眉をよせた。


 花織の手をとり、バックヤードに入る。

 背後から、オーケストラの演奏の出だしの音楽が聞こえた。





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