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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第34話 懐疑は踊る 桜花は踊る

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警察署四階 署員食堂 2


「血糊の開発はさておき、人見さん、ルビーピンクとローズピンクとシェルピンクと、ジャスミンどれが好きです?」


 花織(かおり)がこちらに少し身を乗りだして問う。

「え……なに?」

 (まこと)は目を丸くした。

 とうとつにカタカナをならべられて何の話題かすら分からない。

 

諸人(もろびと)美術館のパーティで着る服です。迷ってるんですよね」

「何で僕に聞くの。女の人のファッションとか知らないし」


 誠はとんこつラーメンの麺を(はし)でつまんだ。

「しらないと知っての質問です。しらない人がなにげに選ぶというのが、むかしでいう橋占(はしうら)みたいな感じになるかなって」

「なにそれ」

 誠はラーメンをすすった。

「橋の上に立って、通った人の話している言葉で占いをしたというやつですね。ここでファッションにくわしいかたに答えていただくと、邪念が入るじゃないですか」

「……邪念て。それいうなら雑念とかじゃないの?」

 誠はラーメンの麺をつまんで上げ下げした。


 花織(かおり)が制服のポケットからスマホをとりだす。

 タップしてなにか操作しはじめた。

 ドレスの画像を出すのだろうか。

「ルビーピンクとローズピンクとシェルピンクと、ジャスミンです」

 

「見ても分かんないよ。好花(このか)さんとかに聞けばいいじゃない。いっしょに行くんでしょ?」


 誠はラーメンをすすった。

「外部のかたの意見も聞いてみたいじゃないですか」

 花織がスマホの画像をこちらにみせる。

「まずはルビーピンクです」

「見ても分かんないって」

 誠は顔をしかめた。

 スマホの画面には、トルソーにかけられた赤に近いピンク系のドレスが映っている。

 撮影したのはどこかの応接室なのだろうか。察するに百貨店のVIPルームか何かか。


 (えり)ぐりが大きく開けられ、フロントがミニでうしろがロングという形のスカートだ。


 ドレスというからアントワネットみたいなのを想像していたが、意外とカジュアルなんだなと思う。

「いいんじゃないの? おとなっぽい気がするけど」

 誠はてきとうに答えた。

「おとなっぽいですか? これ」

 花織が自身のほうに画面を向ける。

「高校生が着るにしては。知らないけど」

 とはいえそういう場はおとなっぽいものを着るものなのか。なんとなくのイメージだが。


「いくつくらいに見えそうです?」

「……二十二とか三とか?」


 誠はラーメンをすすりつつ答えた。

「人見さんて、いくつなんですか?」

「……何で聞いてんの?」

 誠は眉よせた。

 花織がしばらくスマホの画像を見つめる。



「人見さん、パーティ会場の張りこみってやるんですか?」

「なに、とうとつにその質問」



 質問があちこち飛ぶなと思う。どこにつながりがあるんだか。

「百目鬼さんが、酒々井(すずい)さんと闇バイトのごった煮になりそうだって言ってたじゃないですか。パーティ服着て潜入したりします?」

「答えるわけないでしょ、そんなの」

 とんこつラーメンの麺を箸でつまんで上げ下げする。


「で、こっちがローズピンクですけど」


 花織がスマホの画面をスワイプする。

 こんどはもうすこし紫がかったドレスの画像をこちらに見せる。

 色はおとなっぽいが、膝丈(ひざたけ)ほどのスカート部分が横に広がっているので、かわいい雰囲気もある。

「ああ、これもいいね」

 ふたたびてきとうに答える。

 花織が画像を見た。

 


「えー? これいいですかあ?」



 唇をとがらせて、かなり不満そうに返す。

「……気に入ってないならやめればいいでしょ」

 誠は鼻白んだ。

 迷っているんじゃないのか。意味が分からない。


「ちなみにこれがジャスミンですけど」


 花織がつぎの画像を表示させる。

 こんどはあわいイエロー系のドレスだ。

「かわいくていいんじゃない?」

 またもやてきとうに返す。

 もはやまじめに見てすらいない。画像をチラチラ見ながらラーメンの麺を箸で上げ下げする。


「これですかあ? かわいいですかあ?」


 花織がまたもや不満そうに眉をよせて画像を見る。

 何なんだ。

 誠はラーメンをすすった。

 だから女の人のファッションなんか分からないって言ってるのに。


 百目鬼が横で上着のポケットからスマホをとりだす。


 画面のキーボードを打っているようだ。

 どこかに連絡しているのか。

 ややしてから打ち終えたのか、ポケットにしまう。

 ほどなくして誠の上着のポケットのスマホがメール受信のバイブを鳴らした。

「ごめん、ちょっとメールきたみたい」

 誠はスーツのポケットからスマホをとりだし、画面を見た。



 百目鬼からだ。



 なぜ横にいるのにわざわざメールをと思ったが、口にだして伝えられない非常事態をこういった方法で知らせてくることはありうる。

 まさか食堂内に指名手配犯でもと誠は緊張しつつメールを開いた。


 「一番最初のドレスが一番いい言っとけ」


 一瞬、何のことだと思いつつ画面を凝視する。

 チラッと百目鬼のほうをみると、花織のほうにわずかに(あご)をしゃくった。

 いちばん最初のドレスに何かあるのか。



「えと……いちばん最初のドレスがいいと思うけど」



 誠がそう言うと、花織がもういちどルビーピンクのおとなっぽいドレスを表示させる。

「やっぱこれですか? やっぱこれがいいかなあ」

 まじまじと画面を見つめる。


 「あのドレス、事件と何か関連が?」


 誠はそう返信した。

 百目鬼がもういちど上着からスマホをとりだして画面を見る。

 なぜかラーメンを吹きそうになっていた。





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