表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第34話 懐疑は踊る 桜花は踊る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

426/454

余目総合病院 待合室 4


「よし、突入!」


 百目鬼(どうめき)の声がした。

 玄関のガラスドアが開き、ジェラルミンケースを肩に下げた鑑識係員が数人、駆け足で病院内に入ってくる。

 (まこと)を押しのけると、ジェラルミンケースを防護盾代わりに四方から押しつけるようにして強盗を取り押さえた。

 中年の鑑識係員が、(ゆか)におさえられた強盗の手から登山ナイフをもぎ取る。


「百目鬼ちゃん」


 そう声をかけて、百目鬼の足もとのほうに床をすべらせた。

 百目鬼が手袋をつけ、かがんで拾う。

 そういえば鑑識係員を待っていたのだったと誠は思いだした。

 すでに到着していたのか。

「あんな大っきなナイフ持ってるやつに一人で素手とか、あっぶないでしょ、人見(ひとみ)くん」

 中年の鑑識係員が苦笑する。

「なに百目鬼ちゃん、いつもそういうことやらせんの?」

「いつもじゃねえ、ときどきだ」

 百目鬼が吐き捨てる。

 じっさいには逮捕時の流れで一、二度ほどだ。誠は苦笑いした。


 百目鬼がさきほど受付の女性が試験管を落として割った場所に歩みより、しゃがんで床の鮮血をながめる。



「あーあ、せっかくの物証が――と思ったら、血糊(ちのり)じゃねえか、これ」



「え!」

 床におさえられた強盗が顔を上げて目を丸くする。

 百目鬼がそちらを見て目をすがめた。

「おい、応援の車まだか。はよこいつ乗せろ」

「いま到着しました」

 若い鑑識係員が外を見て声を上げる。


「血糊……」


 両わきを鑑識係員に引かれ、強盗が何度もふり返りながら屋外に連れだされる。

 サングラスを外された素顔は、やはり十代ではないかと思われるほど幼さがのこる。

「んで何で血糊ぶちまけられてんだ? あれの要求なんだった」

 百目鬼がガラスドアの外をながめて問う。



「要求は “四津谷 和人(よつたに かずと)” の採血した血液を渡せとのことでした」


 

 誠は答えた。

 百目鬼が軽く目を見開く。

「んじゃ、あれが三上 徹(みかみ とおる)?」

「どうなんでしょう……。二河原(にがわら)高群 遥(たかむら はるか)さんの話を聞くかぎりでは、三上(みかみ)は四、五十代くらいとのことですが」

 百目鬼が駐車場のほうに連れられて行く強盗の姿をあらためてながめる。

「どう見たってDKくらいだよな、あれ。男子高生」

 やはりそのくらいに見えるかと誠は思った。


「さすがですねー。やっぱ血糊とほんものの血液って、ひと目で違い分かりますか」


 花織がしゃがんで血糊をまじまじと見る。

「粘度がちがう」

 百目鬼がみじかくそう答えた。


「 花織さん、“生血(なまち)”って言ってなかった? なにか打ち合わせしてたの?」


 ガラスドアの向こう。

 強盗を乗せた応援の車が発進する様子を誠はながめた。

「 “生血” は血糊のべつの言いかたの一つです。いろいろ言いかたがあるんで迷ったんですけど、“フェイクブラッド” じゃバレちゃうでしょ?」

 花織がしゃがんだ格好でこちらを見上げる。

「なるほど」

 誠はそう応じた。

「つか何で病院に血糊があるんだ。プラシーボ効果にでも使うのか?」

 百目鬼が尋ねる。

 どう使うんだろうと誠は宙を見上げた。


 

「本日、看護師長の介田さんがお誕生日でして。スタッフの方々と示し合わせてドッキリからのサプライズをやろうと、きのうから血液用冷蔵庫に仕込んでたんですよね」



 誠は鼻白んだ。

 百目鬼が花織に背を向け、イヤそうな顔でスラックスのポケットに手を入れている。

 ドッキリに試験管入りの血糊を使って血液用冷蔵庫にしのばせておく女子高生。

 ちょっとイヤな気持ちは分かる。

「おかげで仕込み直しです。それともほかのドッキリ考えようかなあ」

 花織が(あご)に手をあててスタッフステーションの奥のほうを見る。


 どんなドッキリのつもりだったのか。なんか考えたくない。



「ともかくこっちは “四津谷 和人” の血液受けとりにきたんだ。はじめの話にもどるべ、人見(ひとみ)



「はい……」

 誠は眉根をよせながらそう返事をした。

 それもそうだ。

 花織の仕掛けるドッキリがホラーだったりスプラッタであったとしても、とりあえず犯罪ではない。


「嬢ちゃんは事情聴くために連れ帰ることになるけどな」


 花織が「わたし?」というふうに自身を指さす。誠はうなずきを返した。

 百目鬼がスタッフステーションのほうに歩みよる。

 上着の内ポケットから警察手帳をとりだして提示した。待合室にいた鑑識係員たちに、スタッフステーションのなかに入るよううながす。


「調書とるから署にきてもらうことになるんだけど、僕らの車でいい?」


 誠は花織に尋ねた。

「うーん、ドッキリの仕込みの時間とりたいですけど……」

 花織が腕を組んだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ