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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第1話 となりの芝生が青すぎる

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余目家二階 4

「すみませーん」

 ドアをノックする音がする。

「忘れもの」

 そう言い、花織が入室した。

 (まこと)が座ったベッドにすたすたと近づくと、手にした小型カメラをやんわりと引ったくる。

「なにっ。えっ? なに仕掛けてんの?!」

「失礼いたしました」

 花織が礼をする。

「盗撮?! あのっ、犯罪なんだけど」

「少年法」

 花織がそう言い部屋着のポケットにカメラをしまう。

「いやいくら少年法って言ってもね……!」

 上体を屈ませ、花織がこちらの顔を覗きこむ。

「こちらが人見(ひとみ)さん」

 窓際の方を向く。

「あちらが百目鬼(どうめき)さん」

「いや、何なの。そんなの仕掛けた理由は?!」

 誠は声を上げた。

「腐女子の友達が喜んでくれるかなって。お仕事系のメンズラブ好きだから」

 花織がサラサラ髪を耳に掛ける。

「は?」

「同僚刑事が二人きり。なにも起きないはずがないかもしれないでしょ?」

「ないよ」

 誠は眉根をよせた。

「人見さん、さっき百目鬼さんの好みがパスタだって言い当ててたから。これはもしかしてあるかなぁなんて期待したんだけど」

「最近の女子高生って何なの? そんな話ばっかしてるの?!」

 誠は声を上げた。

「人見ぃ。いいだろ、放っとけ」

 窓際の百目鬼が、振り向きもせず口をはさむ。

「いやでも百目鬼さん、盗撮って犯罪……」

「そんなお嬢ちゃんのイタズラ、追及したってたいした点数にならねえし」

「点数って……」

 誠は眉をよせた。一般人のまえで言うことかと思う。

「単刀直入に聞きますけど、お二人は愛し合っちゃったりしてますか?」

「そんなわけないでしょ」

 誠は思いきり顔を歪ませた。

「おっけー。腐女子の友達にそう伝えておきますね」

「ちゃんと伝えておいて」

 誠は顔をしかめた。

「友達が何人か、張り込みの見学したいってラインよこしてるんですけどダメですか?」

「ダメに決まってるでしょ」

 誠は語気を強めた。

 花織がすっと上体を元に戻す。

「分かりました。お騒がせしました。お夕飯ができたらこちらに運びます」

 そう言い、出入口のほうに向かう。

 不意に部屋着のポケットからスマホを取り出した。

(きゃっ)()。ダメだって」

 どうやらラインか何かにそう打ってるらしい。

「失礼しました」

 こちらに会釈すると退室した。




「……女子高生の扱い上手いなお前」

 双眼鏡を覗きながら百目鬼がそう呟く。

「上手くないですよ」

 誠は顔を歪めた。思い出したように缶コーヒーのプルタブを開ける。

「でもとりあえず人に見えてるだろ?」

 百目鬼がそう言う。意味が分からず誠はゴツい背中を見た。

「俺はムリ。ぷよぷよした別の生物に見える」

 ぷよぷよ。誠は軽く眉をよせた。

「大人の女なら別にいいんだよ。あのぷよぷよして、キャッキャ声で訳分からん話題もってくる生物が同じ人類とは思えねえ……」

「はあ」

 誠は曖昧に返事をした。もともと愛想の悪い人ではあるが、花織に対していつにも増して素っ気ないのはそういうことか。

「きったない野郎同士のうにゃうにゃ期待して何が面白いんだか」

「それは同意します」

 誠は缶コーヒーを口にした。

「食べたら仮眠とらせてもらいますけど」

 「ああ」と百目鬼が返事をする。

「しっかし、誰も来ねえな」

「ガセ言ったんですかね。まえに逮捕されたやつ」

 誠は答えた。

「嫌がらせにか?」

「まあ、二日目くらいで言うことじゃないでしょうけど」

 はは、と誠は笑った。

「主犯のやつ、妹いるらしいな。いろいろタブレットに詰めてきたからあとで見とけ」

 テーブルの上に置かれたタブレットを百目鬼が指差す。

「妹ですか」

「海外にいたらしいんだが最近帰国した。何か聞けるかもしれん」

 誠は手を伸ばしタブレットを取った。

 スクロールすると、その妹のパスポートのものらしき写真が出てくる。

 目の細い、地味な顔立ちの女性だ。

 兄の犯罪については知っているのか。知らないとしたら気の毒だが。

「何か聞けたら、また連絡入るだろ」

 百目鬼が言う。

「ですね。とりあえず俺、食って寝ますんで」

 誠はサンドイッチを口に詰めこんだ。





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