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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第4話 花より団子よりお金でしょ

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よつはし和菓子店 店舗兼工場 2

 (まこと)百目鬼(どうめき)花織(かおり)の三人はそろって声のする方を見た。

「どうしたのその顔! いやああああああ!」

 年配の女性の叫ぶ声が聞こえる。店のエリアというより工場の方からのようだ。

 誠は百目鬼と顔を見合せた。

「どうします?」

「事件と関係することが起こってるのは確かそうなんだけどな……」

 百目鬼が眉をよせる。

「たまたま立ちよった客のふりして……?」

 花織がポンと手を叩く。

 制服のミニスカートをひるがえし、スタスタと工場の小さな職員出入口に近づく。

 ガラッと大きく引き戸を開けた。

「すみませぇん。お団子ほしいんですけどぉ」

 花織の背後に隠れるようにして、誠と百目鬼は中を伺った。

 入ってすぐに機械があるのを想像したが、入口付近はガランとした小さな部屋だった。機械があるのはこの奥か。

 部屋の奥にあるドアのない出入口の前。怯えた表情で立つ三角巾をつけた年配女性がいた。

 その女性の前に立ちふさがるようにしている男。

 こちらを振り向いた。

 店長兼和菓子職人の、仁令 薫(にれ かおる)

胡麻(ごま)。三本」

 花織が可愛らしく指を三本たてる。

 百目鬼が目を眇めて男を見据えた。

「仁令 薫さんですか……?」

 そう百目鬼が問いかける。

 「はい」と男が返事をした。

「よつはし和菓子店、店長の仁令 薫ですが、何か」

 男が笑みを浮かべながらこちらへと近づく。

「ウソです! (かおる)さんじゃありません! あんた! 薫さんどうしたの! ずっと帰ってないんだよ!」

「すみません。伯母はここのところ認知症ぎみの言動がありまして」

 男が言う。

「違う! お前、(やまと)だろ!」

 年配の女性は叫んだ。

「伯母さん……」

 男が苦笑する。

「横からすみませんが、あなたは仁令 薫さんじゃありません!」

 花織がビシッと男を指差した。

 なんだこの子という表情で男が花織を見る。

「ホームページに載っている本物の仁令 薫さんとは、髪質と肌質、耳の形、手の形と爪の形が全然違います!」

「お嬢ちゃん……」

 百目鬼が苦笑いする。

 頼りになるんだか邪魔なんだかと誠は思った。

「しゃべって動いているところを見てさらに分かりました。わたしユーチューブの広告で、ここの店長さんが動いてる動画みたことあります! 声と笑うときの頬の動きが全然違います!」

 花織が言い切る。

「ユーチューブの広告までよく覚えてたね……」

 誠は感心して呟いた。

「早く動画みたいのに鬱陶(うっとう)しいから、けっこう覚えてます」

「あー……そういうことを、広告主さんの前で言わない」

 誠は顔をしかめた。

「何この子。あんたらなに」

 男が眉を強くよせて花織を睨む。

余目(あまるめ)総合病院の者です。お知らせにきました」

 花織が敬礼する。

「仁令 薫さんが保護されたとき、身元の手がかりにするために髪や爪などDNAの検出できるものをさりげなくいただいたんです。それと、あなたの使った食器に付着していた唾液、病室に落ちていた髪の毛、調べれば入れ替わっていた証拠はすぐに上がります」

 マジか、という風に百目鬼が花織を見る。

 誠もやや驚いて花織の整った横顔を見た。

「ネタは上がってるんです! 神妙にお縄を頂戴してください!」

「お嬢ちゃん……元ネタなんだそれ。暴れん坊将軍か」

「大岡越前です」

 花織が答える。

「入れ替わってたって……なんだいそれ。あんた自分の顔、薫さんの顔に変えてなにしてたの。薫さんはどうしたの!」

 年配女性が叫ぶ。

「……残念ながら」

 誠は言った。

「昨日、河辺で見つかった水死体の男性が薫さんと思われます」

 年配女性が裏返った声を上げた。

「こ……殺したのかい! 薫さんを殺したのかい!」

 年配女性が、脚をもつれさせるようにしてこちらに駆けよる。

「警察! 警察呼んでください!」

 年配女性は、花織の両肩をつかんで懇願した。

 花織が両手で誠と百目鬼を指す。

 誠は、百目鬼とそろって警察手帳をとりだした。

四ツ橋 和(よつはし やまと)さんでいいのかな?」

 百目鬼が問う。

「そうです! 和です!」

 年配女性が叫ぶ。そのまま泣き崩れた。

「お話をお伺いできますか」

 誠は男の顔の前に手帳を提示した。

 男がすぐ脇にいる花織に手を伸ばす。花織の肩をグッとつかみ、引きよせた。

「きゃっ!」

 誠はとっさに身体ごと花織と男の間に割って入り、強引に引き離した。

 そのまま男の腕をとり、床に引き倒す。

 ガタンという音と、女性の泣く声がせまい小部屋に響く。

 誠はゆっくりと立ち上がり、倒れた男の手首をつかんだ。





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