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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第3話 汝の隣人を愛せない

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外国人居住のアパート付近 2

 (まこと)百目鬼(どうめき)は、無言で花織(かおり)の顔を見た。 

「誰か分かりますかって……」

宇佐美 澪緒(うさみ みお)だろ?」

 百目鬼が怪訝な表情で答える。

「あとにして思うと、声はうさぎちゃんによく似てたそうです」

 花織が可愛らしく人差し指を立てる。

「わたしが分かりますかって、どういう意味だ?」

 百目鬼が顔をしかめる。

「ヒジャブで変装したわたしに気づけますかってことですかね……」

 誠はそう答えた。

「変装の出来を聞いてるのか?」

「画像とか、あとでメールか何かで来たの?」

 誠は花織に尋ねた。

「なにも。通話のひとことだけだったそうです」

 花織が肩をすくめてみせる。

「それで分かるかどうか聞かれてもな……声で分かるかってことか?」

 百目鬼が眉をよせる。

 何か、構ってほしい少女の悪戯(いたずら)めいてきたなと誠は思ったが、身代金の要求までされているなら簡単にそうと決めつける訳にもいかない。

「同級生たちは何て答えたの?」

「え? って聞き返したら、相手が無言になったので、気味悪いから切ったそうです」

「通信記録……」

 百目鬼が呟く。

「調べたっけ?」

「GPS追跡がダメだったのと、ご両親が連絡がないって言ってた時点で、特に調べてはいないんじゃないですかね……」

 誠は答えた。

「まあ調べても、お友達に電話があったかどうかの裏づけが取れるだけって気もするが……」

「スマホ自体には澪緒(みお)さんと思われる指紋しかありませんでしたしね……」

「そうなんだ」

 花織が声を上げる。

 誠と百目鬼は、そろって顔をしかめた。

「いいから早く帰んなさい」

 誠はそう(たしな)めた。

「スマホ見つかったのどこって言いましたっけ。十キロ先の公園?」

 花織がスマホを取り出し検索を始める。 

「いいから、あとはこっちに任せて」

 誠は眉をよせた。

「月見公園? それとも夕陽ヶ丘公園?」

 花織がそう尋ねる。

 誠と百目鬼は無言で応じた。

「夕陽ヶ丘公園って、近くに救護施設あるんですよね。うちの病院の先生が診察に行くことがあって……」

 不意に花織が黙りこんだ。

 スマホの画面をじっと見つめている。

「花織さん?」

 具合でも悪いのかと思い、誠は話しかけた。


人見(ひとみ)さん!」


 花織が勢いよく顔を上げる。

「分かったかも!」

「え?」

 何がと聞き返そうとした次の瞬間、花織が道の前方を見て目を見開く。

「あ━━━━━━!!」

 そう叫び前方を指差した。

「うさぎちゃん!」

「何?!」

 百目鬼が先に反応し、花織の指差す方向を見た。

 道の向こう側。信号の手前のあたりを歩くヒジャブにカフタンドレスのような格好の女性がいる。

「うさぎちゃん!」

 花織が走り出す。

「あれか!」

 ここにいろという風に花織の肩を押し、百目鬼が先を走った。

「危ないかもしれないから、ここにいて」

 花織にそう声をかけ、誠もあとを追う。

「お二人でどうやって捕まえるんですか! セクハラとか言われたらどうすんの!」

 ずっと後ろを花織が追ってきた。

「話を聞くだけだから!」

 誠はそう返した。

 しばらくすると、花織が息を切らし速度を落とす。まあ、そうなるだろうなと誠は眉をよせた。

「すみません! 待って!」

 ヒジャブ姿の女性に向け、誠は手を振った。

「ちょっと話を……」

 女性が顔を隠した布を押さえ振り向く。


「イヤああああああ! 殺される━━━!」


 女性は絶叫すると、脚をもつれさせるようにして先の県道の方へと逃げて行く。

「は? ころ……?」

 どういうこと。誠は眉をよせた。

 何かしたのかという風に、百目鬼がこちらを振り向く。

「いえ……」

 気を取り直して誠はもういちど手を振った。

「警察です! あの……!」

 内ポケットをさぐり、警察手帳を取り出す。

「お話をお聞きしたいだけで!」

 手帳を開いてかざすが、女性は必死で逃げて行く。

 女性が県道にたどり着くと、道沿いに停められていた白い軽自動車のドアが開いた。

 中から手招きする手が見える。

「待っ……!」

 女性が乗りこむと、軽自動車はすぐに発進した。

「ナンバー!」

 百目鬼がそう叫んで、すぐにチッと舌打ちする。

「この前と同じ車だな……」

 そう言い、大きく息を吐いた。

「何でしょう。殺されるって」

「俺らに? 誘拐犯に?」

 百目鬼が眉をよせる。

「シチュエーション的にこっちって感じでしたけど。……何で」

 はぁっと誠は息を吐いた。

 駆け足で追いついた花織が、目の上に手をかざし車の行った方角を眺める。

「うさぎちゃんに間違いないです。少しおたおたしてたけど、学園内のスポーツ大会の動画と走り方が同じです」

「そういや、さっき分かったって言ったの何だ、お嬢ちゃん」

 百目鬼が問う。

「あ、夕陽ヶ丘公園近くの救護施設なんですけど……」

 花織が息を整えた。





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