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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第3話 汝の隣人を愛せない

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外国人居住のアパート付近 1

 アジア系外国人が多く住むアパートを、(まこと)百目鬼(どうめき)は後にした。

 錆びた柱で支えられた一階の通路を通り、細い生活道路に出る。

 コンビニのオーナーの許可を得て、スマホで撮影した防犯カメラの映像の一部。何人かのイスラム教徒に見てもらったが、やはりカメラに映るヒジャブの女性は、違和感があるとのことだった。

「時間帯としてはお祈りの時間じゃないのか、それとイスラムの女性が男性店員と普通に接しているのはおかしい……」

 聞いた話をまとめて、百目鬼がタブレットに書きこむ。

「お祈りの時間は前後することもあるって言ってましたけど、後者は確かにそうかって感じですね」

「気づかんかったな……」

 百目鬼が呟く。

「車に乗って行ったってのも、同乗者が身内の男性か女性じゃないなら、明らかにイスラム教徒の女性ではないって」

「すんげー厳格なのな」

 百目鬼が顔をしかめる。

「親戚の結婚式の宴会すら、男女のエリアをカーテンで仕切るもんだって説明してた人いましたね」

 誠は苦笑した。

 自身の感覚では、もはや別世界だ。

「でもはっきりしましたね。これはただの変装で、この女性はイスラム教とは関係ないって。ヒジャブも少し素材が薄いんじゃないかって言ってましたし」

「一緒にいるのは、イスラムのことはよう知らん人間か」

 百目鬼が(あご)に手を当てる。


「お疲れさまですっ」


 可愛いらしいソプラノ声に挨拶され、誠と百目鬼は道路の前方を見た。

 制服姿の花織(かおり)が敬礼している。

 丈の短いプリーツスカートからは、細い生足が遠慮なく伸びていた。

「イスラム教徒が発狂しそうなお嬢ちゃん来た」

 百目鬼が顔をしかめる。

「うさぎちゃん関係の聞きこみですか?」

「何でここにいるの……」

 誠は眉をよせた。

 学園の場所からみて、余目(あまるめ)家とはまったく別の方向だ。

「お二人センサーが作動しちゃった」

 えへへと花織が笑う。

「よく分かんない機能使わないで……」

「外国人の住んでる界隈は、いちおう回るんだろうなあと思って病院の患者さんに聞いたら、それっぽい二人組がいたって言ってた人がいて」

「ヘーイ、カオリー!」

 道路の向こう側から、南米系と思われる派手な格好の男性が手を振る。

「ヘーイ! ミゲル、サンキュー! マイボーイフレンド会えたよー! お大事にねー!」

 花織がノリノリで両手を振った。

「あれが刑事の情報流しやがったやつか」

 百目鬼が物騒な感じに目を眇める。

「花織さん……海外だとボーイフレンドの意味かなり違うから、ノリで使わない方が」

 誠は眉をよせた。

「んで、何でわざわざ来た、お嬢ちゃん」

「うさみKKが、おんざきコーポレーションと予定していた取引を急遽延期したいと申し入れてきたという情報が、このちゃんから入りまして」

 花織がふたたび敬礼する。

 「うぇ」とうめいて、百目鬼が口元を歪めた。

 誠はその百目鬼の様子を、げっそりとした表情になり眺める。

「身代金の引き渡しとか近いのかなぁと」

 花織はピースした。

「どこのポンコツ社員だよ。そんな企業内の話をいちいち女子高生に流してんの」

「流したのはこのちゃんの従兄弟(いとこ)で、おんざきコーポレーションの跡継ぎ候補です」

「候補って? 跡継ぎ決定してる訳じゃないの?」

 誠は問うた。

「兄弟二人いるんですけど、お互いに跡継ぎの座を押しつけ合ってて、顔会わすとディスり合戦始めるんだって。そのディスりをとなりの部屋で聞いてたら、うっかり有力情報の手がかりが聞こえちゃったって」

 花織がピースのように指を二本立てる。この場合は、おそらく二人の跡継ぎ候補の意味なのだろうが。

「跡継ぎの座って押しつけ合うもんなのか……よく分かんねえ世界だな」

 百目鬼が(ひたい)に手を当てる。

「まあ……刑事も、最近は辞退するの多い時代だけどな。危険なのに待遇は変わんねえから」

「ですね」

 誠は苦笑した。

「この前の二ノ宮の件に巻きこまれたお嬢さまだろ? スパイやれるな」

「学園のコネクションで、有力情報あつめて差し上げましょうか」

 花織がワクワク顔でこちらの顔を見上げる。

「いらないよ。暗くならないうちに帰って」

 誠はそう返した。

「うさぎちゃん、スマホは持って行ってるみたいですね」

 後ろに手を組み、花織が可愛らしく上体をかたむける。

「そんなのは初動で分かってるよ。GPS追跡したけど、自宅から十キロ以上先の公園にスマホ放置されてた」

「同級生の何人かが、行方不明になった少しあとに、うさぎちゃんの番号から電話があったって聞きました?」

 誠と百目鬼は目を見開いた。

「……え?」

「やった! 知らなかった!」

 花織が甲高い声を上げる。目の前で嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねた。

「学園長もご両親も何の連絡もないって……」

「電話もらった同級生も、訳が分からなかったんで特に言わなかったんだそうです。本当にうさぎちゃんかどうかも定かじゃないし、内容も意味不明だったからすぐ通話切ったって」

 花織が言う。

「どんな内容?」

 誠は問うた。百目鬼がタブレットを取り出す。


「あなたは、わたしが誰か分かりますか? だって」





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