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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第16話 死人に口なし犯人に顔あり━━ダイイングメッセージ「○、 ○、○」
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警察車両ワゴン車 車内 3

「──“プレツィオーゼ” ってイタリア語ですよね? 被害者の方、イタリアとなにか関係あるのかなって思って、このちゃんとイタリア語について調べてたんですけど」


「え? このちゃ……」

 (まこと)はハンドルを握りながら(ほお)を引きつらせた。

「──お二人とも、おつかれさまです!」

 花織(かおり)の横から、幼い感じのおしとやか声がはさまれる。

 花織の友人、温崎 好花(おんざき このか)だ。

 大企業おんざきコーポレーション社長の姪にして、腐女子。

「出た……」

 百目鬼(どうめき)が眉をよせる。

「こ……こんにちは」

 誠は引きつり笑いを浮かべながらあいさつした。


「──調べたんですけど、イタリア語ってJ、K、W、X、Yとかがないんです」

 花織が続ける。

「うん。それは僕らも聞いた」

「──女子高生をJKって書きたいとき、どうするんでしょう」

 花織が声をひそめる。

「……イタリア語で書くんじゃないの?」

 何を言ってるんだろうと誠は顔をしかめた。

「──で、それぞれの文字に該当する発音を書くときは、べつの文字を使うそうです。JならG、KだとCとかQとか」

「うん」

 誠は相づちを打った。

 そこまではプレツィオーゼ内藤の名倉(なくら)氏が解説していたこととおなじだ。

 被害者の内藤(ないとう)氏は、宝飾デザインの勉強でイタリアにいたことがあるため、イタリア語で書いた可能性があると。


「QQOは、ローマ字や英語でいうKKOだと思います。あいだが空いてたから正確にはK、空白K、O。──つまり名字も名前もカキクケコからはじまる人が犯人! そのどちらかはコではじまる人! たぶん」


「うん」

 誠はもういちど相づちを打った。

「……補足すると、被害者が関係者のうち一名の苗字を ”くがわ“ と勘違いしてた」

 百目鬼が、花織には聞こえないよう小声で言う。

「被害者としてはK・コウタと伝えたかったんだとすると」

 

陸川 晃太(ろくがわ こうた)……」


 誠はハンドルを切りつつ続きを言った。

 住宅街のせまい生活道路に入る。

「とりあえずは書かれたやつの謎が解けただけだ。事情聞いて物的証拠つかむぞ」

 百目鬼が前方を睨みすえる。

「はい」

「──んじゃな嬢ちゃん。おっさんら、あと忙しいから切るな」

 百目鬼がそう告げる。

 通話を切った。




 すかさずスマホの着信音が鳴る。

 百目鬼がまだ手に持っていたスマホの画面をじっと見た。

「だれですか?」

「また嬢ちゃんだ」

 百目鬼が答える。しぶしぶ通話状態にした。

 もういちどスピーカーにして、画面をこちらに向ける。

「何なの!」

 誠はハンドルを握りながら語気を強めた。


「──そこっ! そこそこ人見(ひとみ)さん!」 


「お二人ともおつかれさまです! ──待って待って待って! かおちゃん、かおちゃん、スマホ持ってあげてる! ムリぃ! ムリぃ!」


 女子高生二人の甲高い声が通話口から聞こえる。

「──そこです、人見さん! 直進十二時の方向! おーいおーい!」

 生活道路のどまんなかで手を大きく振っているパーカーにミニスカートの人物がいる。

 その横には、こちらへ向けてペコペコおじぎをしているジャンパースカートの人物。


 花織と温崎 好花。


「何でここに。ぐうぜん?」

「人見……」

 百目鬼がスマホを手に顔をしかめる。

「Uターンしろ」

「……無理です。入れそうな場所がありません」

 誠はそう返した。

 自身も目視で二人を見つけてからUターンに使えそうな場所をさがしているのだが。

 延々とつづく民家の玄関口とブロック塀。

 ムリそうだ。

 二人でため息をつく。

「……まずあの嬢ちゃんらを穏便にかえらせる。陸川(りくがわ)のアパートと、ちっと離れたとこに停めろ」

「分かりました」

 誠は道の先の曲がり角を見た。


 陸川 晃太のアパートをいったん通りすぎる。


 女子高生二人が顔を前方に動かし、行き先を目で追ってきた。

 百目鬼が二人に向けて手で行き先を指ししめす。

 二人が駆け足で追ってきた。

「おーお。元気だな」

 百目鬼がうしろを向いてつぶやく。

「なんでここにいるんでしょう。たまたまかな」

温崎(おんざき)の嬢ちゃんがいるのがヒントじゃね? 知らんけど」

 百目鬼が言う。

「どんな……」

 誠はルームミラーで二人が安全に追ってきているのを確認した。

「こんどはどんな倫理観ギリギリのことを」

「俺もそう思った」

 百目鬼がうしろを見ながらそう返した。





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