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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第2話 穴深き となりは何をする人ぞ

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温崎家応接間 1

 花織から聞いた友人の家。(まこと)百目鬼(どうめき)とともに訪ねた。

 いかにも警察車両という感じのものが停まっていると体裁を考えて嫌がる人もいるため、こういったさいには普通の乗用車を使う。

 白いワゴン車から降り、門の向こう側に建つ豪邸を眺める。

「やっぱお嬢さまのお友達はお嬢さまだよな……」

 百目鬼が顔をしかめた。

花織(かおり)さん、エスカレーター式のお嬢さま学校に通ってるって言ってましたからね……」

「 “中等部”って言ってたもんな。中学校じゃなくて」

 花織の増殖版のような少女との会話を想像して、誠は大きく溜め息をついた。

「インターホン押すぞ。いいか?」

 門柱の上部についたボタンを百目鬼が指差す。

「百目鬼さん……ムダに緊張させるのやめてください」

 誠は心臓のあたりを押さえた。

 百目鬼がボタンを押す。ほどなくして応対する女性の声がした。

 百目鬼が「お前が喋れ」という風に(あご)をしゃくる。

 見た目も強面(こわもて)で声もきわめて低い百目鬼は、こういった場合、あまり怖がられそうにない誠を前面に出そうとする。

 インターホンのスピーカーに顔をよせ、誠は警察手帳を提示した。

「警察ですが、こちらの奥さま?」

「家政婦ですが」

 即座に帰ってきたその答えを聞いて、誠と百目鬼は無言で眉をよせた。

「こちらのお嬢さまにお話をお聞きしたいのですが、ご在宅ですか?」

 ややしてから、インターホンの向こう側で衣擦れのような音がする。

 バタバタッという音がして、もう少し若い少女の声に変わった。

「ひ、人見(ひとみ)刑事さんですかっ? それとも百目鬼刑事さんっ?」

「人見と申しますが……」

 誠はそう返した。

「かおちゃんから聞いてます。どうぞ」

 百目鬼と顔を見合せる。

「話早えな。んじゃ行くか」

 百目鬼が門を押し開く。

「あのあのっ」

 少女の声がさらに続いた。

「はい」

「どどど百目鬼さんというバディの方は、ご一緒ですか?」

「……はい」

 誠はそう返事をした。

「人見さんの紅茶のお好みはミルクティーで百目鬼さんはストレートとお聞きしましたが、アッサムティーのヴィラーニ社オリジナルブレンドとファーストフラッシュのダージリンでもよろしいでしょうかっ」

 誠は無言でインターホンを見つめた。

 ゆっくりと百目鬼と顔を見合せる。

「やっぱりお友達だ」

 百目鬼が顔をしかめた。




 応接間に通される。

 余目家は、全体的に大正ロマンに出てくる洋館のような懐古的な雰囲気のある豪邸だったが、この家はロココ調だ。

 白い壁に金色の細かい飾りのついた内装が、豪華な雰囲気がある。

 向かい側のソファにおとなしそうなボブカットの少女が座る。花織とは違い、古風な感じだ。

温崎 好花(おんざき このか)さんですか」

 誠は訪ねた。

「はい……」

 好花(このか)が恥ずかしそうにうつむき返事をする。

 花織のようなテンションでいきなりメンズラブがーと言われるのを恐れていた誠と百目鬼は、ホッと息を吐いた。

温崎(おんざき)って聞いたことあると思ってたら、おんざきコーポレーションか」

 百目鬼が呟く。

「あの……社長は伯父でして、うちの父は役員をやっているだけなので、たいしたことは」

 好花(このか)がモジモジと手元でスカートを握る。

 お嬢さまだなぁと誠は妙に感激してしまった。

 紅茶をトレーに乗せた家政婦が入室する。芳ばしい香りが漂った。

「えと……百目鬼さんがダージリン、人見さんがアッサムティーです」

 家政婦が(ひざ)をついて座り、示された通り二人の前に紅茶を置く。

「もう上がっていいですよ。そろそろ箕田村(みたむら)さんが来ますから」

 好花がそう言うと、家政婦は一礼して退室した。

「……いただきます」

 軽く会釈をし、誠と百目鬼は紅茶のカップを手に取った。

「ダージリンはセカンドフラッシュを切らしてまして。今年の春に出たばかりのファーストフラッシュしかなかったのですけど、お口に合いますでしょうか?」

 顔色を伺うような様子で好花が問う。

 どっちの紅茶のことを言ってるんだという風に、百目鬼が誠を見た。

「あの……えと。お構いなく」

 誠はひきつり笑いをした。

「アッサムティーのヴィラーニ社オリジナルブレンドは、ショコラ風味がミルクと合っていてわたしの好みなんですが……」

「……お構いなく」

 誠はもういちど繰り返した。

 紅茶に少しだけ口をつけて、カップをコトンとテーブルに置く。

「お友達の余目 花織(あまるめ かおり)さんからお聞きしているかもしれないですが、彼女があなたにラインで呼び出されたと話していて」

「はい……かおちゃんが、それで危ない目にあったって」

 好花がさらにうつむき、スカートを握った。

 百目鬼が無言でカップを置いて、テーブルの上に置いていたタブレットを手に取る。

「例えばラインのパスワードを誰かに知られたなんてことは」

 好花の目が潤む。口を両手でおおった。

 泣くんだろうかと誠は思った。目を眇める。

(とうと)い……」

 好花が呟く。

「え?」

(いか)ついおじさまと、さわやか系イケメンの命を預け合うバディ関係なんて尊すぎる……」

「は?」

 百目鬼と目を合わせる。

 「翻訳しろ」という感じで百目鬼が好花の方を目で指し示す。誠は小さく首を振った。

 好花が、はぁぁと息を吐く。うつむきつつも姿勢を正した。

「……失礼しました。パスワードを誰かに知られたという心当たりはありません」





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