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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第10話 来た、見た、買った

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警察署一階 被害者用の事情聴取室 1

「うわ。この部屋なっつかしー」

 クリーム色の壁、チョコレート色の幅木。被害者用の事情聴取室を見回し、花織(かおり)が声を上げる。

 つい数時間まえに自宅へ送ったばかりだった。

 いちおう私服に着替えているところをみると、さすがにコッソリ商店街に戻っていたというわけではないようだが。

 花織が長机の端のほうに視線を向け、敬礼しているキャラクターのぬいぐるみを見る。

「このぬいぐるみ、まだあったんだ」

「いいから座って。今度はどんなリプ」

 言いながら誠はいちばん奥の椅子に座った。

 百目鬼が、タブレットを眺めながら誠の斜め向かいの椅子を引き、座る。

 花織がパーカーのポケットをさぐってスマホを取り出した。人差し指でスクロールして操作する。

「さっき気づいたんですけど」

「電話でもよかったでしょ。ここまで歩いてきたの?」

 誠は顔をしかめた。

御園(みその)さんに送ってもらいました」

「じゃあ良かった。いま待っていただいてるの?」

人見(ひとみ)さんたちに送ってもらうから帰っても大丈夫ですよって伝えました」

 誠は、げんなりとうつむいた。

「一日に何回送らせるの。僕たち暇じゃないんだけど」

「あ、これです」

 花織が身を乗りだし、スマホの画面をこちらに見せる。

 誠は、溜め息をついて画面に視線を移した。

 花織へのリプには、商店街の路上らしき場所の動画が埋めこまれていた。

 多い人出、通行人の秋口の服装とハロウィンの絵が描かれている街路灯フラッグ。

 ここ二、三日のものだと分かる。

 動画の上部に書き込まれている短い文。


『彼氏、警察官なの? 二人とも高熱出ちゃうかも』


「なんだ?」

 百目鬼が眉間にシワをよせる。

「カップル見て “お熱” とか、こいつ昭和か?」

 花織が動画の再生をオンにする。

 騒がしい声と、怒鳴り声。手近で「何なに?」と問う男女の声。

 動画は、昼間の商店街での逮捕劇を撮影したものと思われた。

 花織の後輩がファーストフード店のまえでピエロたちに腕を引っ張られる場面から始まっている。

 画面右の端には、連れ立って反応する誠と花織。

 誠は目を見開いた。

「おーお。知らんで見たらたしかにカップルだな」

 百目鬼が呟く。

 画面では、ピエロたちのほうに誠が駆けつけていた。即座に手際よく援護する周辺の私服警官たち。

 誠が警官だと簡単に推測できる。

「……いやでも」

 誠は顔を上げた。

「それで花織さんがこのアカウントでツイートしてた人物と同一人物だというのは、どこから特定したんでしょう」

「ツイートじゃなくてポストです」

「……ポスト」

 誠は顔をしかめた。

「カマかけてんじゃねえの? 警察の自販機とパンプス画像アップしてた女子高生、警察が捜査中の書き込みを拡散してた女子高生、私服警官と思われる男と連れ立ってる女学園の制服の嬢ちゃん」

 百目鬼が言う。

「身近なところで女子高生と警官って要素がセットで出てくるのが続いたから、もしかしてって感じじゃね?」

 誠は花織を見た。

 相当危ないことに巻きこんでしまったのでは。

「花織さん帰ろ。送って行くから。あとは電話かメールで」

 誠は立ち上がり、花織をドアのない出入口に促した。

 花織は座ったままじっと動画を見ている。

「花織さん」

「人見さん、これ確かにわたしが映ってます? モザイクかかってますけど顔が判別できる感じ?」

「ああ……えと」

 そうか。顔の区別がもともと付けられないから、ほかの人間に認識できるレベルか確認したいのか。

「……ネット見た人には、花織さんとは特定できないと思う。ただ」

 誠はいったん言葉を切った。

 迷うが、はっきり言わなければこの子は危機感を持たないだろう。

「送ったやつは、花織さんの顔を当然見たはず」

「そっか。(おとり)捜査、成功ですね」

 花織が平然と呟く。

「は?」

 誠は声を上げた。

「いやちょっと待って。いい加減にしなさい!」

「これ、あのモッズコートの人が撮影したんじゃないかと思うんです。角度的にピッタリじゃないですか?」

 花織が言う。

 誠は目を見開いた。

「 “高熱” っての、わたし一連の書き込みシリーズの一つだと思うんです。吐かせて殺す、死ぬまで踊らせる、真っ黒にして殺す、ひじき、その続きというか」

 誠は百目鬼のほうを見た。

 百目鬼が「なるほど」と呟く。

「で、わたし自宅でこれ見て思ったんですけど」

 花織がわざわざ振り向いてこちらを見る。

「わたしの顔とユーザー名がつながったのに、“何々して殺す” じゃないんだなって」

「……え」

 誠は、出入口のまえで立ったまま花織を見た。

「つまり殺害する方法は、女子高生ということは選べても、わたしをピンポイントで狙える方法じゃないんじゃないかなって」

 百目鬼が背もたれに背をあずけて、腕を組む。

 考えこんでいるように眉間にシワをよせた。

「わたしを、となるとあまり確実じゃないんです。たぶん」

 誠は、花織の少々気の強そうな目を見つめた。

 実際は気が強いというより図太いのほうかと思うが。

「おまえ、とりあえず座れ。送っていくなら深夜になってもオッケーだろ」

 百目鬼が長机をつつく。

「はい……」

 座り直してから、はたと誠は気づいた。

「深夜はダメでしょう! 未成年ですよ!」

「ちょっと待って、人見さん!」

 花織が唐突に声を上げる。

「共通点!」

 そう声を上げ椅子から腰を浮かせた。


「書き込み内容の共通点なら、いま思いついちゃったんですけど」





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