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スーツの男

この作品はカクヨム、アルファポリスにも公開しています。

 次の日、大学の講義が終わった後、俺は教室を出た。


(さて、帰るとするかな……)と思いながら歩いていると、後ろの方で声が聞こえてきた。


「ねぇ、待ってよ」


 俺が振り返ると、そこにいたのは美和だった。


「何でここにいるんだ?」


「一緒に帰ろうと思ったからよ」


「そっか……、わかった」と言うと、美和は嬉しそうな表情を浮かべていた。


「じゃあ、行こうか」と俺は言って歩き出す。


 すると、「ちょっと待って」と言われて腕を引っ張られた。


「どうした?」と聞くと、美和が顔を近づけてきて小声で囁いてくる。


「昨日の事は誰にも言っていないから安心してね」


「ありがとうな」と俺は言って、再び歩き始めた。


しばらく歩くと、俺は美和に話しかける。


「なぁ、美和は俺に聞きたいこととかないのか? 何でも聞いてくれて良いぞ」


「じゃあ、遠慮なく聞かせてもらうわ」


「ああ、何が知りたいんだ?」


「あなたとユナちゃんの関係を教えてほしいの」


「関係……か……」と俺は少し考えて答える。


「簡単に言えば、俺はユナの父親から力を与えられた人間で、彼女はその娘だ。とある事情でユナは義理の娘になっている」と俺は説明を始めた。


「へぇ~、そうなんだ」


「他にはないか?」


「えっとね……」と言いかけた時、突然爆発音が響いてきた。


「なんだ!?」と俺は驚きつつ周囲を確認する。


 すると、遠くの方に煙が立ち上っているのが見えた。


「行ってみよう!」


「うん!」


 俺達は急いで現場に向かった。


 俺達が到着した頃には周りには野次馬が集まっていた。


 そして、俺達が見た光景は悲惨なものだった。


 目の前にあった建物は完全に崩壊しており、瓦礫が散らばっていた。


 そして、辺り一面に血が広がっていた。


「酷い……」


 俺も「これは酷すぎる……」と呟いた。


 すると、俺達が来た方向とは逆の方向から男が歩いてきた。


「おい!お前! そこで何をしていた!」と俺は男に向かって叫んだ。


「……」と男は黙ったまま近づいてくる。


「なんとか言ったらどうだ!」と俺はもう一度叫ぶ。


 しかし、男は無視して通り過ぎようとする。


「止まれ!」と俺は男の腕を掴んだ。


 だが、男は振り払おうとする。


「離せ……」と男が言った瞬間、男の身体が急に膨張し始めた。


「うおっ!!」と俺は驚いて手を放す。


 同時に、男の着ている服が破け散り筋肉質な肉体が露になる。


「こいつ……。まさか……」


「グオオオォッ!!!」と叫びながら、巨大化した男がこちらを向く。


「やっぱりな……」


「なっ……、なっ……。何なのよこれ……」と美和は腰を抜かしていた。


「下がってろ……。こいつは俺がやる……」


「え……。でも……」と美和が戸惑っている。


「いいから……」と言って俺は前に出ていく。


 その時、倒壊した建物の中から別の巨大化した男も出て来た。


「チッ……。仲間がいたのか……」


「グアアァーッ!!!」と2体の怪物が吠えた。


 すると、片方の男は美和の方へ向かっていった。


「しまった……」と俺は焦るが、すぐにもう片方の男を追いかけた。


「早く逃げろ!! ここは危険だ!!」と俺は大声で呼びかける。


 美和は必死に立ち上がって逃げ出した。


「くそ……。間に合ってくれ……」と俺は心の中で祈った。


 俺は急いで追いかける。


 そこに一人のスーツ姿の男が立ち塞がった。俺は男の顔を見て以前、俺とユナを襲った奴だと思いだした。


「久しぶりです……。また会えて嬉しいですよ」と男は笑みを浮かべながら言ってきた。


「邪魔だ……どけ!」と言って俺は殴りかかる。


 だが、あっさり避けられてしまう。


「おっと……危ないですね……いきなり殴ってくるなんて酷いじゃないですか……」と言って男は笑いながら避け続ける。


「うるさい……、お前は誰なんだ?」


「私は、あなたの娘の一族の敵ですよ」


「なるほどな……。そういうことか……」


「だから、その女には人質になってもらいますね」


「そうはさせない……」と俺は言い、再び走り出す。


「はぁ……。仕方ありませんね……」と言って、男は一瞬のうちに美和の元に現れ背後を捕らえた。


「キャアッ!?」


「やめろ……、美和に手を出すんじゃねぇ……!」


「さて……、大人しく捕まってもらいますか……」と男はニヤリと笑う。


「いや……いや……。助けて……」


「くそ……!」と俺は拳を握る。


(一体どうすれば……?)と俺は考える。


 その時、後ろから声が聞こえてきた。


「その人を離して!」


 振り返るとユナが立っていた。


「ユナ!?」と俺は驚く。


「おぉ、やっと来ましたね……」


「何が目的?」とユナは尋ねる。


「あなたを捕まえることですかね……」


「なら、私が相手になるわ!」


「ほう……、良いでしょう……私も以前のままではないですよ」


「ユナ! 止めろ!危険すぎる!!」


「大丈夫だよ……パパ! 私を信じて!」


「わかった……。気を付けろよ……」


「うん、任せて!」と言って彼女は構える。


「では、あなたは私が指定した場所までついて来て下さい」と言って男は飛び立った。


「待って! どこに連れて行くつもり?!」


「それは、着いてからのお楽しみということで……」


「じゃあ、パパはその2匹の怪物化した人間をどうにかして!」とユナは言って、男に付いて飛んでいった。


「ああ……」と俺は返事をして、目の前にいる怪物に目を向けた。


「俺がお前達の相手をしてやるぜ!」と俺は吠えた。

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