刺客との戦い(1)
この作品はカクヨム、アルファポリスにも公開しています。
俺は目の前に現れた男を観察する。
身長は高く、年齢は二十代後半といったところだろうか? 髪は赤毛で、肩まで伸びており、顔立ちはかなり整っていて、モデルのようにスタイルが良い。
しかしよく見ると、その顔には残忍そうな表情を浮かべており眼が赤く染まっている。
服装も真っ赤に染まったジャケットを着ていた。
「お前が刺客なのか?」
俺は質問した。
「まぁ、そんなところだ……」
男は答えると、ニヤリと笑みを浮かべた。
「お前の目的はなんだ!?」
俺は再度、問いかける。
「それは……、貴様の命を奪う事さ……」
男は楽しそうに語る。
「そうか……」
俺は納得すると身構えた。
「ほう……、この状況でも戦うつもりかい?」
男は感心しながら言うと、こちらに向かって歩いてきた。
そして、次の瞬間、俺の視界から消えた。
いや、正確には高速移動したのだ。
「速い……」
男は美和の後ろに移動すると、整った顔を下卑た表情で笑いながら喋った。
「お前の友達か彼女か知らないが、このままにしておくのかい……」
そう言いながら、美和に命令した。
「こいつを殺せ……」
「はい……」
美和が返事をして振り返ると、刃物を構えた。
「待て! 美和!! 正気に戻るんだ!!」
俺は大声で呼びかけるが、無駄だった。
「無駄だ……。こいつは俺に洗脳されている。お前なら、この女をどうする?」
男は嘲笑いながら聞いてくる。
「くっ……」
俺は歯ぎしりした。
すると、広川が俺の前に立った。
「ここは僕に任せてくれよ」
彼は真剣な眼差しで言う。
「わかった」
俺は了承すると後ろに下がった。
「ありがとう」
広川は微笑むと、美和の前に出た。
「ふふふ……」
美和は不気味な笑顔を浮かべている。
「黒崎さん。今すぐ正気に戻ってくれ!」
そう言って、広川は説得を試みたが、美和は首を横に振った。
「嫌……、お前を殺す……」
彼女は淡々と言いながら、手に持っていた刃物を広川の胸に突き刺す。
「ぐあっ!!」
広川は崩れ落ちた。
「広川!!」
俺は叫ぶが、広川は起き上がらない。
「おい! 大丈夫か?」
俺は慌てて駆け寄る。
駆け寄ると、それはハリボテだった。広川のような形をしており血は出ていない。
「えっ……」
俺は驚いて、辺りを見回すと本体は美和の後ろにいた。
「残念だが、偽物だよ」
広川は、勝ち誇ったような顔で言った。
そして、後ろから美和の頸動脈に指を添えると一気に絞め上げた。
「うぅ……」
苦しそうな声を上げると、美和は意識を失ったのか地面に倒れ込む。
「黒崎さんは眠らせておいたよ……」
広川は安堵した様子で呟く。
「ありがとう……」
俺は礼を言う。
「いいんだよ。ダミーを作れる能力が役に立ったよ……」
「そうだな……」
俺は同意した。
「ところで、これからどうするつもりだい?」
広川に聞かれたので、俺は答えた。
「決まっているだろう。あいつを倒す」
「大丈夫かい?」
「やってみないと判らない……」
「それなら、僕も手伝うよ」
広川は俺の背中を押してくれた。
「行くぞ!」
俺は掛け声と共に走り出すと、男に向かって拳を振り上げる。
しかし、簡単に避けられてしまう。
「遅いぜ……」
男は馬鹿にしたように呟いた。
「今度はこっちからいくぞ……」
男はそう言うと、目にも止まらぬ速さで蹴りを入れてきた。
俺は咄嵯にガードしたが、衝撃で吹き飛ばされる。
壁に激突して、そのまま地面に倒れた。
「ははは……。無様だな……」
男は嘲笑っている。
「まだまだ……」
俺は立ち上がると、男に飛びかかる。
「何度やっても同じだ……」
呆れた口調で話すと、また蹴りで攻撃をしてきた。
俺は避ける事ができず、まともに喰らってしまう。
「ぐうっ……」
俺は苦痛の声を上げた。
その後も、一方的に攻撃される。
「弱いなお前……」
男は退屈そうにしていた。
俺は何とか立ち上がったが、既に満身創痍である。
「そろそろ終わりにするかな……」
男はそう言うと、俺の方へゆっくりと歩いてきた。
「お前には恨みはないが、死んでもらう……」
男は冷酷な表情を浮かべながら近づいてくる。
絶体絶命の状況の中で突然、広川が姿を現した。
「僕の事を忘れないでほしいね……」
そう言いながら、男に立ち向かって行った。
「ふん……、雑魚が……」
男は広川を睨みつけると回し蹴りをする。
「ぐはぁ……」
広川は悲鳴を上げて、地面に転がった。
「邪魔だ……」
男は吐き捨てるように言うと、止めを刺そうとする。
次の瞬間、地面に転がっている広川の顔を踏みつけた。
「うっ……」
苦しそうな声が漏れる。
「やめろー!!!」
俺は叫びながら、必死で男に掴みかかった。
「離せ!」
そう言って、俺を払いのけようとするが離れない。
すると、男が俺の顔面を蹴ってきた。
「ぐはっ……」
強烈な痛みを感じて、思わず手を離してしまう。
「ちっ……。面倒臭い奴だ……」
男は舌打ちをした。
「おい! 大丈夫か?」
俺は心配になって広川に近寄った。
「ああ……。僕は平気だよ……」
しかし、その体は満身創痍でボロボロになっていた。
「もうお前達は用済みだから、ここで死んどけ……」
男は冷たく言い放つと、こちらへ向かってくる。
「くそっ……」
俺は焦りを感じた。
何か策はないのかと必死で考える。
すると、広川が口を開いた。
「神谷君……、君は逃げるんだ……」
「何を言っているんだ!?」
「いいから、早く……」
広川は俺に逃げるよう促す。
「嫌だ……」
俺は拒否した。
「頼むから、言う事を……」
広川は懇願する。
「断る……」
俺は首を横に振った。
「どうしてだい?」
「お前を置いて逃げれる訳ないだろう!!」
「気持ちは嬉しいけど、このままじゃ2人とも殺されてしまう……」
広川は真剣な眼差しで言う。
確かに彼の言う通りかもしれない。
2人で戦ったところで勝てる見込みはなかった。
だが、それでも諦める事はできないのだ。
俺は覚悟を決めると、男を睨む。
「どうした? 怖くて何も言えないか……」
男は嘲笑いながら、挑発してくる。
「うるさい! 黙れ!! 」
俺は怒りを込めて叫んだ。
「威勢だけは良いようだが、所詮は無駄だ。力を与えられた者も人間だ」
男は冷静に喋る。
俺は打つ手無しと悟ると、天を仰いだ。
(もう、お終いかも……)
そう思った時だった。
突然、男の体が宙を舞って地面に落下した。
「うおっ……」
男は地面に叩きつけられると、苦しそうな声を上げる。
俺は驚いて目を見開いた。
「大丈夫?」
声のした方を見ると、そこにはアイカの姿が見えた。
「何が起きたんだ?」
俺は驚いていると、彼女は微笑んで答える。
「隆司君も下僕も惨めな状況ね……」
どうやら広川は名前で呼んでもらえないようだ。
「よくもやってくれたな……」
男は立ち上がりながら呟いた。
「あら、大したものね……」
そう言うと、アイカは男の方へ歩き出す。
「待ってくれ……」
俺は慌てて呼び止めた。
「ん……。どうかしたの?」
彼女は不思議そうに振り返る。
「危ないから、下がっていてくれ……」
俺は彼女を庇うように前に出た。
「貴方は引っ込んでなさい……」
しかし、彼女は冷たい態度で俺を押し退けた。
「邪魔よ……」
そして、男に向かって歩いていく。
「これはこれは……。お姫様の登場と来たか……」
男は、薄笑いを浮かべながら喋る。
「そうよ……。そのお姫様が助けに来てあげたわ……」
アイカは不敵な笑みを浮かべていた。
「俺の相手をしてもらおうか……」
男も相変わらず薄笑いを続けている。
「後悔させてあげるわ……」
アイカは余裕の表情で話していた。
「お前みたいな小娘には負けないさ……」
男は自信満々の様子である。
「どうかしらね……」
そう言うと、アイカは男の方へ歩いて行く。
「おい! 危ないぞ!!」
俺は彼女を止めようとした。
「邪魔だと言ったでしょう!!」
すると、彼女は強い口調で俺を怒鳴った。
「ごめん……」
俺は素直に引き下がる。
アイカは立ち止まると、男の方を向く。
「準備はできたのか?」
男はアイカに尋ねた。
「ええ……。いつでも良いわよ……」
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