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ここからはリリアナ視点に戻ります。

 次にジュードに会ったのは、友人の家で開かれた誕生日会だった。

 社交界にあまり顔を出さないリリアナだが、友人の誕生日会なのでさすがに欠席をするという選択肢はない。侯爵を若くして継いだお兄さんに、出会いの場を提供したいから協力してと頼まれていた。


「リリアナ推薦の素敵な女性を連れてきてくれると嬉しいわ。もちろんリリアナが兄さんと結婚してくれるなら大歓迎なんだけど。クリストファー様も来ていただけると女の子が喜ぶわ」


 そこで最近舞踏会で仲良くなった、ジェラルドの幼馴染のフローラに声をかけ、クリスと3人で参加した。

 会場に着くと友達に挨拶をして、お祝いを渡し、友人の兄にも挨拶をした。全員で20人ぐらい集まっているようだった。


 しばらくして、友人の兄が挨拶をした。


「誕生日おめでとう!」


 皆でグラスをかかげて言い、それから歓談の時間が始まった。

 軽食が端に用意され、中央付近は、テーブルのみで立食スタイルになっている。椅子は会場の端に2、3脚ずつ間隔をあけて並べられ、座って歓談できるようになっていた。

 


「リリアナ嬢。是非御一緒させて下さい」


 クリスは知り合いを見つけ話をしている。フローラもちょうど話しかけられており、声をかけてきた男に向き直る。

 

 男と話していると、また別の人が寄ってくる。


「私も御一緒させて頂いてもよろしいですか?」


 断る理由がないので了承すると、それを見た人が、また寄ってくる。さらに一人加わり4人に囲まれる。

 

 普段は話かけてきた人達となんとか会話を楽しもうとしていたし、楽しめることもあったのだが、今日はそんな気になれない。居るかどうか分からない人をついつい目で探してはガッカリしていた。しかし、この時間に来てないということは呼ばれていないのだろう。


 全く話を聞くことに身が入らず、適当に相槌を打ちながら微笑み、一人反省会をする。


『おかしいわ。今日は思いきって、気が強そうにきつそうに見える化粧にしてもらったはずなのに。ドレスもいつもより派手にしたし。話しかけにくいかと思ったから、恥ずかしさをこらえて頑張ったのに全く効果が見られないわ。舞踏会なのに、メイドのように髪をくくって地味な色のドレスを着るとか? うん。目立たなくていいかも』


 やはりクリスに構ってもらおうかと探すも、女の子たちと楽しそうに話している。クリスは、時折こちらをちらりと見て私が大丈夫か窺っていたものの、主催者の友人たちしかいない集まりなので、安全と判断して自分が楽しむことに決めたようだ。フローラや友人たちも、みんな盛り上がっていて途中から入りにくい。

 リリアナの気のない様子に、離れていく人がいるものの、少なくなるとまた誰かがやってくるので途切れることがない。

 いい加減疲れた。化粧室に逃げよう。

 断りを入れ立ち去ろうとすると、誰かが目の前に立った。


「えっ?何で?」


 見上げるとジュードがいた。


「仕事が長引いて遅れた。さっき来たところだ」


「そうなの」


 彼が体を屈めて近くでささやく。


「何だか作り笑いが大変そうに見えたので来てみた」


「うっ、バレてる」


 彼の声にゾクッとして、慌てて横を向いた。


 

 私たちは歩きながら話す。


「化粧室に行かなくていいのか?」


「逃げ出す口実ですから」


「ハハハ……元気そうで良かった。それにしても今日はいつもより派手だな」


「ええまあ」


 そこは、適当に流してくれないかと祈るも無駄であった。


「以前言ってた『派手な化粧と衣装でけばけばしく』をやってみたのか?」


「!! な、何でそんなに覚えてるのよ。無駄に良い頭ね」


「おっ、今日は『普通』だな」


「ちっ違う、違わないけど、違う。他の人にはここまで言わないもの」


「本当かなあ? よく分からないけど特別なのか? リリアナさんの特別か? 他の男が聞いたら喜びそうだが、これは礼を言う……必要はないな。けなされてるだけだし」


 どうでもいいことを一人で協議してるのを見て、思わず吹き出してしまった。


「それで頑張ってけばけばしくしたが、効果がなかったと」


「恥ずかしさをこらえて頑張ったけど無駄な努力だったわ」


「そうだな。いつもと違う美しさだ。これもいいな。とても似合っているし、一段と目立っている」


「えっ、褒められたの? まさか」


「むやみやたら褒めたりはしないが美しいものを、美しいくらいは言う」


「ちょっと何なのよ!」


 リリアナは真っ赤になった。


「あっ照れてる」


 ジュードはニヤリと笑った。


「もう! いい加減にしなさいよ!」


 ジュードが声をあげて笑う。


「ちょっと姉さん! 声が大きいよ」


 私が騒いでいるのが聞こえたらしく、クリスが駆け寄ってきた。


「良かったな、看板がいらなくなった」


「腹立つ! もう、知らない!」


 恥ずかしくなって化粧室に逃げようと後ろを向くと、


「ジュードさん、姉に何したんですか!」


クリスの低い声が聞こえた。


「待ってクリス、違うのよ。彼が悪いわけじゃないの。いや悪いんだけど」


「姉さん!」


「あなたが心配するようなひどいことは何もされてないから、ジュード様を責めないで。どちらかと言えば、というか私が悪いのよ」


「本当に?」


「ええ、本当。彼が褒めたりするものだからビックリして」


 最後は小声になった。


「何だよ。人騒がせな。」


「クリスくん、心配かけてすまない。ふざけすぎた」


「いえ、姉が騒ぎすぎるせいですから、こちらこそすいません」



「お騒がせしてすいません。冗談が過ぎたようで、何でもありませんでしたので」


 クリスがこちらを気にしている人達に謝ってくれる。慌ててジュードと二人、頭を下げた。

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