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ジェラルドとクリスのデビュタント

 ジェラルドが主役です。前話のすぐ後くらいの話です。


※ 改稿になっていますが、内容に変化はありません。


 今日は、俺とクリスのデビュタントの日で、両親と共に王宮への舞踏会に参加した。

 国王への挨拶も終わり、再び両親と歩いていた。時々同級生ともすれ違う。

 

「ジェラルド様!」


 声をかけられて振りかえると、幼馴染みのフローラ・ヒュンメルが立っていた。


「おじさま、おばさまお久しぶりです」


「まあ久しぶりね。フローラさんとても綺麗よ」


 俺もフローラの両親に挨拶した。


「ジェラルドくんも背が伸びて、正装がよく似合って素敵だわ!」


「ジェラルドくん、相手がもしいないならフローラと踊ってやってくれ」


「お父様余計なことは言わないで」


「じゃあジェラルドくんがいるから大丈夫ね。私達はあちらでお話しましょ」


 フローラの母親はそう言うと、俺の両親と共に行ってしまった。

 フローラとはお互いの親が仲良しで、子供の時は時々一緒に遊んでいた。一つ年上で学校の先輩でもある。


「久しぶりね。何かまた大きくなったわね」


「そうか?」


「ファーストダンスの相手はいないの?」


「……いない」


「じゃあ踊りましょ」


 ダンスが始まるようで皆が中央に集まり始めたので、俺は彼女に手を差し出して皆に混じる。初めはデビュタントたちが踊るのだ。

 クリスがリリアナと一緒にいるのが見えた。俺はそちらに向かう。


「こんばんは」


 俺は二人に声をかける。


「あら」「やあ」


 二人は同時に声をあげる。


「どなた?」


 リリアナが俺を見る。


「初めまして、フローラ・ヒュンメルと申します」


「1つ上の幼なじみ」と俺は付け加え、「友達のクリストファー・ロセフィットとお姉さんのリリアナさん」と紹介した。


「よろしく」「よろしくね」


 ダンスが始まったので、そのまま踊り出す。


「リリアナさん噂通りもの凄くキレイな人ね。クリストファー様もカッコいいし」


「そうだな」



 曲が終わるとリリアナの周りを男性が取り巻き、ダンスに誘う。


「彼女は約束があるので、失礼する」


 クリスはそう言うと、リリアナの手を取ったまま俺に向かってきた。そのまま俺に彼女の手を差し出す。

 俺は無言の圧を感じ「踊っていただけますか」と言いながら手を差し出す。リリアナは「ええ、喜んで」と微笑んだ。

 それを見たフローラは固まっている。

 

 クリスがフローラに向かって恭しく「私と踊っていただけますか?」と声をかけ、フローラもハッとして「喜んで」と答えた。



「もてて大変ですね」


「性格を知ると、とっとと逃げ出すでしょうけどね。中身が外見に表れてるともっと楽なんだけど、クリスにいつも詐欺だと言われるの」


「俺は中身も好きですよ」


「それって服の中身? それとも性格?」


「からかわないで下さい。もちろん性格です」


 服の中身も大好きだが、口に出しては、スケベオヤジと一緒なので、黙っておく。


「本当タラシよね?」


「えっ?」


「恋愛感情のない適齢期の女性に、安易に好きって言わないの。私だから正しく意図を汲み取るけど、修羅場になるわよ」


「はあ」


 なんで修羅場になるのかリリアナの言うことがいまいちピンとこない。


「あっ、そろそろ曲が終わりそう。やだ、どうしよう、クリスの所へお願い」


「分かりました」


 俺達は踊りながらクリスに近寄る。クリスがフローラの手を離すと、すぐにリリアナの手をクリスに差し出した。


「またなのか?」


「ええ、またよ」


「はあ」


「光栄でしょうが」


「ハイ、コウエイデス」



「なんかすごいのね」


「ああ、すごいんだ」


 クリスとリリアナのやり取りに、フローラと顔を見合わせる。



「のど乾いたし、お腹が減った」


「そうね、休憩しましょう」


 二人でビュッフェコーナーに向かいながら話す。


「彼女いるの?」


「いや、いない」


「ダンスに誰かを誘わなくていいの?」


「そこまでして踊りたくない」


「女の子に興味ないの?」


「そういうわけではないけど」


「何かさっきから、あちこちで視線を感じるわ。あなたもてるのね。誘ってあげたら? そういや生誕祭があったもんね。今年はもしかして棒術でセンターだった?」


「そうだ」


「だからなのね。悩殺しちゃたのね。あのカッコよさは反則だもの。私も見たかった!」


「なんだそれ?」


「花たくさんもらったんじゃないの?」


 学園の生誕祭でも、棒術の演舞の後に女の子達が、男の子達に花を配って寿いで歩くのだ。


「先生が花を入れるのに、かごを貸してくれた」


「そんなに女の子が殺到したの?!」


 ビュッフェコーナーで二人で黙々と食べ続けた。




「男女が二人でいるのに色気がないわねえ」


 リリアナとクリスがやってきた。


「料理美味しいよ」


「ちょっとジェラルド様。いや、なんか、様つけるの邪魔くさい。だってクリスとしゃべってるみたいなんだもん」


「呼び捨てでもいいですよ」


「姉さん、ジェラルドの扱いが雑だ」


「俺は気にならない」


「ほらね。えーと、なんだっけ。そうそう、ジェラルド、あなた何のんきに食べてるのよ。女の子の注目浴びてたじゃない」


「何か変なことしたかな?」


「学園ではどんな感じなの?」


 リリアナがクリスにジェラルドに対する女の子の態度を尋ねる。


「前は遠巻きだったけど、生誕祭以来よく話しかけられてるよ、本人は何故か、もててることに気がついてないけど」


「女タラシめ」


「ジェラルドに対する態度がひどすぎる」


「さっき私になんて言ったと思う? 私の見た目と中身が違うという話をしてたら『俺は中身も好きですよ』って言ったのよ! 戦いを挑んでるのかと思ったわ。ジェラルドに好きな人がいることを知ってる私じゃなかったら危なかったわよ」


「ジェラルド、告白する相手が違うぞ」


「違う違う。クリスに対する好きと一緒なのよ」


「ああ、なるほど」


「ちょっと、ジェラルド、好きな人がいるの? リリアナさんも知ってるの? 誰よ誰よ。言いなさいよ」


 フローラがくいついた。


「クリス、リリアナさんに言ったのか?」


「違う」


「クリスは友情に熱い男だから、口を割らなかったの。私が気がついたの。だってあなた、あんな優しい笑顔で笑いかけたりしないもの。いっつも澄ました顔してるじゃない」


「えっどういうことだ? クリス、俺なんかやらかしたか?」


「いつも女の子なんか興味ありませーんって態度の男が、甘い笑顔でありがとうと言うんだから何かあるって思うよね」


「あのタオル渡された時かな? だって生誕祭の時はタオル渡してもらえなかったから、嬉しくて」


 俺は思い出してにやけそうになり、慌てて拳で口元を隠した。


「えー、なんか見たかったなあ。ズルイ」


 フローラが頬を膨らませる。俺達はその後も皆で賑やかに笑いあった。


 この後俺が知らないところで、兄さんとリリアナさんは、二度目の邂逅を果たすのだった。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

面白かったと思っていただけたら下の☆マークを押して評価をお願いします。

 「チャラいと思った同級生は愛情あふれる王子様のような人だった」は、リリアナの妹アマンダの話ですが、その後のリリアナ達のことがほんのわずかですが、書かれています。クリスも登場します。


「私の結婚どうなっちゃうの?」(完結済)もよろしくお願いします。

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