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女神シルヴィアの生誕祭の後に

 ジェラルドが主役です。

 リリアナがジュードに助けてもらった舞踏会より少し前の話です。

 10月の終わり、女神シルヴィアの生誕祭が行われる。

 女神の生誕を祝って女の子は女神の格好をして頭に花冠をつけて踊りを踊り、町のあちこちに花が飾られ、店が沢山出てとても賑やかになる。


 王都では応募した中から選ばれた10才の女の子たちが町の広場で踊った後、舞台の周りに集まった人々に花を配りながら「祝福がありますように」と寿(ことほ)いでいく。


 祭りの1日前、俺達の学校でも生誕祭が行われ、女子生徒全員が、薄い黄色、水色、白などの衣装を来て、輪になって踊る。それが終わると男子生徒は整列して棒を持ち、棒術の型や組手を合図にあわせて披露する。

 

 棒術は入学時にすでに個人差があるし、練習しても上達に個人差がかなりあるため、1.2年生合同で実力と希望によりS、A、Bの3つのチームに分けられる。クリスはAチームだった。

 俺は家で兄達が練習するのがカッコ良くて、必死に練習し、さらにのめり込んで棒術の先生について習っていたため、去年同様Sチームに選ばれた。今年俺はその中でも一番目立つセンターに選ばれ、演武を披露した。



 生誕祭のイベントが終わった後の休み明け、朝会うとクリスが話しかけてきた。


「うちに来て棒術を披露してくれないか? 生誕祭の話をしたら、皆が見たがって大騒ぎだった。ジェラルドが来てくれないとお前の家まで皆が押し掛けそうだ」


「いや、そんなに期待されるほどのものでは」


「いきすぎた謙遜は嫌味だぞ」


「……でも恥ずかしいな」


「お前は乙女か? 乙女なのか?!」


「何だよ。じゃあ行かない」


「俺が悪かったです。ごめんなさい。よろしくお願いします。来てくれないと絶対に姉さんが家に押し掛けると思う」


「そうか、ありえるな……あきらめて伺います」


「助かる。ありがとう」


「お前のお姉さん、少々見た目とギャップがあるな」


「少々どころじゃない。あれは詐欺だよ。ほんと変なんだから……わっ、何か寒気がした。姉さんいないよな?」


 クリスが慌ててキョロキョロする。


「怖がりすぎだろ」


「いや実際怖い」




 こうして次の休みは棒術を披露する事になり、クリスの家に行った。


「前座を俺がやれって言われたんだ。恥ずかしい」


 クリスが、言った。


「この前の言葉そっくりそのままお返しするよ。お前は乙女か? 乙女なのか?!」


「お前の気持ちが良く分かった」


「着替えて少し練習させてもらっていいか?」


「もちろん。急がなくていいから。終わったら後は皆で食事しようってくらいのゆるい感じだから安心して。ただ使用人も見たがってたから来ると思うので、観客は多いと思う」


「そうか、分かった」


「じゃあ着替えは、この部屋使って、ここは1日お前専用だから」


「ありがとう」



 俺は着替えて、鏡でチェックして、クリスとともに外に出た。建物から少し離れたところに地面が露出した広いところがあり、見学者のための椅子も用意してあった。

 飲み物やタオルなども準備されている。


 早速簡単な技を練習してから生誕祭の演目を軽めにやっておく。肌寒い季節なので、ほとんど汗をかくことなくやり終えた。

 クリスと交代で練習をし終わると、皆がやってきた。


「ジェラルドくんわざわざすまないね。どうしても見たくて」


「図々しくてごめんなさいね。でも本当に楽しみにしてたの。今日はよろしくね」


 クリスの両親が話しかけてきた。


「いえ。ご期待に添えるか分かりませんが、精一杯やらせていただきます」


 最初はクリスなので俺も椅子に腰かけて観客になる。


「クリス頑張れ!」


「兄さん頑張って!」


「結構様になってるわね」


 クリスが着ている衣装を見て、リリアナが感想を述べた。


 クリスが一礼すると静まりかえる。

いつの間にか使用人たちも近くまで来ていた。10人近くいそうだ。


 クリスは落ち着いて棒を扱い、難しい型を綺麗に決めるたび歓声が上がった。失敗することなく終わった。

 皆立ち上がって拍手をした。


「ちょっとクリス格好いいじゃない? 別人?」


 リリアナが言う。


「兄さんすごい!! 格好良かった!」


 アマンダは感激している。


「いやぁ、私の息子は大したもんだ。ビックリしたぞ! 良くやったな」


「クリス。感動したわ! スゴいわ」


 ソフィアは、俺達と同じ学校に通っていて、先日すでに見ているのでニッコリ笑ってみんなの顔を嬉しそうに見ている。


「ちょっとこれよりすごいのよね。ドキドキしてきたわ。クリスでさえ格好良く見えたのに、ジェラルド様がこれ以上のものを見せてくれたらどうなるのよ。ちょっと、好きになったらどうしてくれるのよ」


 なんだ? どういうことだ? リリアナさんがおかしい。言っている意味が分からない。


「ちょっと姉さん!」


「リリアナあんたって子は本当に」


 皆がリリアナをたしなめる。


『どうも出来ませんが』


 その返事は声には出さず、心の中にとどめておく。


「でも、クリスでさえあんなに格好良かったのに、これ以上だと、まずいわ。3人ともジェラルドくんを好きになったらどうしたらいいのかしら?」


 リリアナはお母さんにそっくりだということがよく分かった。お母さんが娘に続いて血迷っている。取り越し苦労です。


「母さん、俺もすでにジェラルドに惚れてるから、4人の骨肉の争いだよ」


 クリスが引っ掻き回す。


「あなた女っ気がないと思ったらジェラルドくんに入れ込んでたのね! まあ、どうしましょう」


「お母様いい加減にして!」


 とうとうアマンダに突っ込まれた。お母さんがおもしろすぎて力が抜ける。緊張できない。


 気を取り直してチラッとソフィアを見ると、笑顔で「頑張って下さい」と言われた。

 萌え死にしそうだ。かろうじて顔を引き締めて「ありがとう」と言う。


 皆が「頑張って!」と声をかけてくれた。皆から離れたところで少しだけ棒を振り回した。それから深呼吸を繰り返してから、皆の真正面へ向かった。



 中央で再び目を閉じて深呼吸をする。空気がピンとはりつめて心地いい。五感が研ぎ澄まされているのを感じる。目を開けると一礼する。


 右手で棒を持ち上げた瞬間、左に右に棒を振りつつ回転させながら後ろにさがり右手をひきつつ、左手を前に出し、静止する。


 皆から「おー」とか「凄い」とか溜息のような声が上がっていたらしいが、全く聞こえていなかった。


 棒を回転させながら振り回し、なおかつ体重移動しつつの複雑な動きで、瞬きする間に次から次へと行うので、見る方も集中しないと見逃してしまう。少々ゆっくりにしたくらいでは、速すぎて何をやっているのか分からないくらいのスピードで動きを繰り返していく。


 回転させながら左に右に棒をふるう。さらに後ろに移動しつつ右に払い、さらに持ち替え左に払う。すぐに前に移動しながら同じ動作を行い、今度は棒を左右に回転させながら振り回した後、左に払い、そのまま突き、同じポーズを再び行い、次は右で回転させた後、頭上に振り上げ両手で回転させ左に持ち替え、また回転させる。それを何回か繰り返す。

 棒を左右に動かし、前後に動き静止するポーズをやり続ける。


 あっという間に終わりは来た。最後にピタッと決めて、ふーっと息を吐く。


 礼をすると、歓声と拍手が沸き起こった。


「スゴいわ!」


「格好良かった!」


 そう言いながら、皆が集まって来る。


「!」


 なぜか夫人に抱きつかれた。


「ジェラルドくんが素敵すぎるわ!」


 夫人は伯爵を振り返ると


「あなたごめんなさい、私も好きになっちゃったわ。5人の争いになってしまうわ」


「分かるよ、ヨランダ。私も惚れた。でも、抱きつくのはやめようね」


 伯爵は冷静に奥様の体を引き剥がした。


「もう、ジェラルド様ったら、カッコよすぎでしょ。これって反則よね!」


「感動しました!!」


「俺のジェラルドはすごいだろ」


「あんたのじゃないわ、私達のよ」


 皆がワイワイ騒ぐ。


「あの、タオルをどうぞ」


 ソフィアがタオルを差し出してくれた。頬が興奮のためかバラ色で、目が少し潤んでいる。

 ああ、なんて可愛いのだ!!


「ありがとう!!」


 満面の笑みになる。


「っ……」


 ソフィアがなぜか赤くなった。俺は渡されたタオルに顔を埋め喜びを噛み締める。


 ソフィアは赤い顔をしつつも、のどが渇いているだろう俺を気遣いレモネードをさしだした。


「ありがとう」


 さらにソフィアは赤くなり、回れ右して俺から離れた。



 ソフィアに親切にされて、浮かれまくって幸せを噛み締めている俺をよそに、周りではクリスの一家が騒いでいた。


「なるほどね! 争う前に決着はついているというわけね。真面目なジェラルド様の微笑みは凶器だわ。天然タラシだわ」


 リリアナが、納得したように頷いた。


「キュンキュンするわね! うらやましいわ!!」


「母さん興奮しすぎ!」


「えっ、何が起こってるんだい? おいソフィア、顔が真っ赤じゃないか? 大丈夫か? 冷えたタオルをすぐに持ってこい!」


 伯爵は使用人に指示をだす。


「何でもないから!」


 ソフィアは慌てて答える。


「分かるよ。私も興奮してなんだか暑いよ」


「お父様ニブイわ」


 アマンダがボソッと言う。


「それが父さんの良いところなんだよ」


 クリスがすかさずフォローした。



「ところで初めのは一体どうやってやったの? もう一回見たいわ。」


「あの連続の技はどうなってたんだ。一瞬すぎて分からなかったぞ」


 その後皆に色々やらされて、昼食は俺のお腹がなるまでお預けになったのだった。

 この話は、「月の女神」を書く前に書いていた、ジェラルドが主役のお話の一部です。その時のヒロインはソフィアでしたが、家族の個性が強すぎてソフィアが、埋もれてしまい話が書けなくなってしまいました。     


 この後、ジェラルドとクリスのデビュタントの話を投稿します。リリアナも登場します。


「私の結婚どうなっちゃうの?」の連載を明日開始予定です。こちらも大変お気に入りですので読んでいただけると嬉しいです。

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