別エンド ジュード 2
二人でダンスを踊る。
「ダンスが好きなの?」
「特にそういうわけではないかなあ」
「その割にはダンスの時は上機嫌にみえるけど」
「そうなのか? そう見えるのか。確かにそうかもしれない。でもそれは………」
「それは何?」
「言わない」
彼女に指摘されるなんて、俺は思った以上に浮かれているようだ。先ほどの緊張から解放されたから余計ホッとしているのだろう。
なんでこんなに浮かれているのだろう。彼女とのダンスが楽しくて仕方がない。しかし、それを言うときっと彼女が怒るので言わないでおこう。
「何か今日はそれが多いわね」
「そうだな。俺も学習してるんだ」
「何を?」
「君がどんな言葉に反応するか」
「どういうことよ」
「それも言わない」
「言いなさいよ!」
「怒らせるからなあ」
「怒らせるようなことを思わせぶりに言うのはやめて」
「ついつい、口から出るんだ」
「もう付き合ってられないわ」
リリアナに睨まれながら、ダンスを踊った。怒られそうな言葉は言わなかったのに、かえって怒らせたようだ。
ダンスが終わり再び二人で椅子に座る。飲み物を飲んでいると、フローラとジェラルドとキャロルがやって来た。5人で楽しく話し、盛り上がった。
「ジュード兄様、踊ってくださらない?」
しばらくしてから、キャロルが声をかけてきた。
「ああ、じゃあ行こうか」
後で踊ってと頼まれていたのを思い出した。
ホールの中央へ行くとキャロルと踊る。その後フローラと踊った。
リリアナはジェラルドと踊った後、また他の男性と踊っていた。彼女はまた機嫌が悪いらしい。怒っているのをごまかすことすら忘れているようだ。彼女と一緒に踊った男性がさっさと退散していた。
「何か不機嫌そうだな。怖がられてたぞ」
「あなたはご機嫌ね」
「ああ、楽しいからな」
フローラやキャロルとはリリアナの話で盛り上がって楽しかった。リリアナは女性にもモテているではないか。
「それはようございましたね」
「なんでまた不機嫌なんだ?」
「知らないわよ。あなたに関係ないでしょ」
「また突っかかるなあ」
「しょうがないじゃない。あなたのこと嫌いなんだから」
「そうなのか?」
「そうよ。ほっといてよ」
まさかそんなに嫌われているとは思わなかった。あれだけ嫌がられることばかり言っていたが、それでも彼女が本気で嫌がっているとは思わなかったのだ。
「…………そうか、悪かった……じゃあ、気を付けて」
そこから自分がどうしたかあまり覚えてない。
ジュードはあの誕生日会の日から気がつけば、ボーッとするようになっていた。
あんなにリリアナに嫌われていたなんて気がつかなかった。知らなかった。
確かに彼女には意地の悪いことばかり言っていた。彼女は俺の言葉に怒って文句を言っていたが、それでも本気で嫌われるほど怒っているとは思わなかったのだ。
彼女は俺に気を許してくれていると思っていた。好かれていると思っていた訳ではないが、一緒にいることは許されていると思っていた。
彼女と過ごした時間は本当に短かったが、それでもなぜか分かり合えているような、他の人とは全く違うつながりを感じていた。彼女といるときは楽しくて仕方がなかったし、彼女にとって俺は、本性を知られていて気を使わなくていい特別な存在なのではないかと、勝手に思い込んでいたのかもしれない。その特別感に一人で酔いしれていたのかもしれない。彼女にとっては、家族もいるしジェラルドやフローラをはじめ沢山いる気心の知れた中の一人だっただけなのだろう。
もう今までのように笑いあって話すことはできないのだろうか、ダンスをすることは二度とないのだろうか。
自分がこんなに彼女のことを思っていることにすら気が付かなかった。
せめてこの気持ちに気が付いていれば何か違ったのだろうか。
ジェラルドが何か言いたそうにしているが、聞く元気もなかった。
ちなみに、この時ジェラルドは、『(ジュードが)意地の悪さを全力で私に向けてくるのよ』と言ったリリアナの言葉を伝えて兄を諌めようとしていた。
ジェラルドは伝えなくて良かったと心から思ったのだ。これを伝えたらジュードをさらに悲しませただろうと考えると、ぞっとするジェラルドだった。
☆ジェラルド視点
クリスからリリアナとジュードの仲を取り持つために、ジュードを嵌める計画を持ちかけられた。
ジェラルドは、やるとは言ったものの恐ろしくてたまらなかった。兄を騙すことに対する罪悪感が半端ない。
兄は優しい人であるが、俺たちを許せないだろう。殴られるくらいですめばいいのだが、毎日鍛えている兄に本気で殴られるのは相当痛そうだ。
しかし、ジュードも、リリアナも二人とも助けたい。あんなに辛そうな兄さんを救うには、俺が頑張るしかない。クリスによると二人でただ、話をさせると、負のループにしかならないらしい。今以上に兄が苦しむのは見たくない。
ジェラルドは腹をくくった。




