別エンド リリアナ 5
運命の?金曜日
リリアナは熱が下がって、今日はジュードに会うための算段をつけようとしていた。
クリスが朝早くから部屋に来た。
「姉さん、大丈夫? 起き上がれそう?」
「ええ。もう大丈夫。ありがとう。今日は学園は休みなのね。寝てるのもあきたし、ジュード様に手紙を書いて謝りに行こうかと思って」
「手紙は僕が手配するから他の人に渡したりしないでよ。そうそう、今日ジェラルドがお見舞いに来るから、ちょっとジェラルドを驚かしてやろうと思うんだ。
服は寝間着に見えそうな地味なものに着替えてもらって。化粧はせず、髪も結わないで」
クリスは途中からメイドに向かって指示を出していた。
「何でそんなことするのよ」
「いいから、いいから。ちょっと仕返し」
「嫌よ。何でそれに私が付き合うのよ」
「ジェラルドの驚いた顔見たくない? それにこれからも俺にエスコートして欲しいよね? 俺に沢山借りがあるよね?」
「私を脅すの?……酷いことしないでよ。それでどうするの?」
「今はとりあえずさっき言ったことをしといて。姉さんは何もしないのが役割だから」
「要するに病人のフリね。さすがに寝巻きのままではまずいから服は着替えるということね。何だかよく分からないけど」
「じゃあまた後で、来たら知らせるから」
そう言うとクリスは部屋を出ていった。
準備を終えしばらく部屋でくつろいでいると、メイドが戻って来た。
「クリス様から伝言です。『今から布団に入って目を閉じて寝たふりをしていて下さい。絶対に絶対にしばらくの間しゃべらないで下さい。いきなり声を出したりしたら、二度とエスコートはしない。だからよろしくね』とのことです」
メイドからもすごい圧を感じる。えらく気合い入ってるわ。なんか本当に大丈夫かしら?
少しすると複数の人の足音が聞こえ部屋の前で止まる。
コンコン。ノックの音が響く。
「目をつむって、絶対にしゃべらないで下さいね」
再び彼女は小声で囁くと布団を首までかけて、手だけ布団からはみ出させると、扉を開けに行った。
リリアナは目を瞑った。
誰かが枕元に駆け寄ってきた。
「リリアナさん!」
ジュードの声がした。リリアナは叫びそうになった。
まさかジュード様が来るなんて、油断していたわ。ちょっとクリスのバカ何やらせてるのよ! ジュード様じゃ冗談ですまないじゃない。リリアナは青ざめる。
ジュード以外誰もいないのだろうか、静まりかえっている。枕元の椅子に座ったのだろうかと思っていると手を握られた。それも両手で!!
「君がずっと寝込んでたなんて知らなかったよ。手のつけようがないと……」
ちょっとクリス、どうなってるのよ。仮病どころか死にそうな役なの?
何してくれてんのよ。あたしをジュード様に殺させたいの!!! 眉間にシワが寄る。
「リリアナさん大丈夫? 苦しいのか?」
ジュードが優しく手を撫でてくれる。
「君が居なくなったら俺はどうすればいいんだ……」
彼が私の手に顔を押し付けて泣いている?!!
どう言うこと? 何で泣くの?
「君がいなくなるなんて絶対に嫌だ。どうやって生きていったらいいんだ。
嫌いと言われ、君ともう笑って話せないかもと思うだけで、こんなに苦しくて悲しくてどうしようもないのに。
君が本気で嫌がってると思いもせず、意地の悪いことばかり言って申し訳なかった」
彼は私の手を握り締めて震えている。
私は恐る恐る目を開ける。ジュードが目の前にいた。
「どうして泣いているの?」
「リリアナさん! ……きみには嫌われているから一緒には居られないだろうが、それでも君のいない世界なんて耐えられない」
「そ、それってどういう……」
「君が好きなんだ」
リリアナは声が出ない。まさか、そんな、あんなに私に意地悪なことを言ってたのに。
「じゃあ、何であんなに意地悪なこと言うの?」
「そ、それは君の反応が可愛くて、つい」
「嫌いだからイジメてたわけじゃないの?」
「気になるから構っていたと言うか、構って欲しくて意地悪したというか、ガキみたいでごめん」
ジュード様が私のことを好きなんて夢のようだ。はにかむ顔が愛しくて美しくて彼の顔をじっと見てしまう。暖かいお風呂に入ったようなじんわりとした幸せに、身体中の細胞が喜んでいるようだ。
「リリアナさん?」
「私もあなたに謝りたかったの。この前嫌いって言ったこと。あれはあの、その、あなたが他の女の子と楽しそうにしているからか腹が立ったの」
恥ずかしくて反対を向いた。
「えっ? それって」
「嫌いと言われたあなたのショックを受けた顔を見て、私はなんてヒドイことをしたんだろうと思うと悲しくて、自分が許せなくて。謝りに行こうと思ってたのに起き上がれず寝込んでたの」
「えっ? ええ?」
「本当にごめんなさい。八つ当たりして。クリスに嫉妬だと言われたわ」
「俺が他の女の子と居るのを見て嫉妬してくれたのか?」
「ええ、そう。私もあなたのことが気になってしょうがないの」
「それはつまり?」
「好きなのかも」
小声で言う。
「本当に? 本当なのか?」
頷くとジュードが私の手に顔を押し付けた。それから手の甲にキスをした。
「リリアナさん嬉しいよ」
彼は私の頬に手を当て、愛おしそうに優しく撫でた。じっと私を見ている。彼の顔が近づいた。私は目を閉じた。
優しくキ…………
あれ????




