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 俺はクリスことクリストファー・ロセフイット。ロセフィット伯爵家の長男である。

 王都にある貴族の子女のための学校に通っていて、今は2年生だ。         


 俺はジェラルド・アトキンスと親友である。

 2年生になって、俺達は初めて同じクラスになった。ジェラルドは歴史や地理が非常に得意で、追試になった俺が、勉強を教えてもらううちに仲良くなった。

 彼は王都の俺の家に遊びに来たし、領地へも遊びに来て1週間滞在したので、俺の家族も彼のことはよく知っている。


 俺には、3人の姉妹がいる。上から順にリリアナ、ソフィア、アマンダである。

 姉のリリアナは俺の2つ上で18才である。彼女は2年前に社交界デビューして、その美しさから月の女神のようだと評判になった。

 

 ブルネットの髪に紫色の瞳、赤ん坊のように柔らかそうな白い肌。形の良い眉に、ほんの少し垂れ目の柔らかな目元、鼻筋の通った高く形の良い鼻。文句のつけようがない。


 しかし、リリアナは、楚々とした外見とは裏腹に、とても強烈な個性の持ち主なのだ。


 

 今日俺は、ジェラルドに招待されたため、アトキンス伯爵邸に来ていた。招待されたのは俺であるが、リリアナが一緒に行きたいとついて来た。


 姉は、ジェラルドのことが、お気に入りである。ただし、ジェラルドが妹のソフィアのことを好きなのは知っているし、お気に入りではあるが恋愛的な意味ではない。

 

 今日の姉は普段にも増して強烈だった。

  

「行くときに見つかって、姉さんがついてきた。ごめん」


「いや、いいよ。リリアナさん好きだし。面白いから」


「また好きと言ったわね、女タラシ。それに女性に面白いと言うのは、褒め言葉じゃないわよ」


 姉はジェラルドを女タラシ認定している。彼は愛想がないタイプで無表情であるが、おっとりしている。真面目であり、女性の容姿を挨拶のように褒めることはしない。もちろん世間一般的に言う女タラシではない。ただ、無自覚に女性をドキッとさせる言葉を言う。


「そうかな? 面白いから一緒にいると楽しいけど」


「やっぱり今日も無意識のうちに私を惚れさせようとしているのね。タラシが、腕をあげているわ。これはもはや勝負なのかしら? ジェラルドがソフィアを落とすのが先か、私がジェラルドに本気になるのが先か」


「姉さん、今日も絶好調だね」


「なんかジェラルドが麻薬に感じるわ。癖になると言うか」


 姉はジェラルドのことを呼び捨てにする。彼のことは弟扱いのようで、ジェラルドも呼び捨てにされることに全く抵抗がないようである。

 ジェラルドといるとホッとするので気持ちは分かるが、もう少しましな言い方というものがあるのではなかろうか。


「じゃあ、俺の部屋行くか、あっ、それはまずいか、温室にしようか」


「部屋に行ってみたいわ!」


「珍しくもないだろうけど、いいですよ」


「ちょっとドキドキしてきたわ。私クリスの部屋にも子供の時以来入ったことないのに、初めての男性の部屋よ。興奮するわ」


「確かに。いや、ちょっと姉さん、なんか変態な感じが駄々漏れだからやめて。弟の友人の部屋で興奮するって、思っても言うなよ」


「あんたが逆の立場でも一緒でしょ。今、気がついたわ。私、ジェラルドのマニアになってしまったのよ、きっと。これはもはや趣味の域なのよ」


「姉さんならあり得るな。ジェラルド目を合わせたら駄目だぞ。とりつかれるぞ」


「クリスは本当に失礼ね!!」


 くだらない会話をしていると、ジェラルドの部屋についた。


「わあ、凄い。本がいっぱい。地図もある。なんか書斎みたいな部屋ね………」


 ジェラルドは歴史に興味があって、それらの本を読むうちに、地理を調べたり、あれやこれやいろんなことを勉強するようになったと言うだけあって、部屋には本がたくさんあり、地図が貼ってあった。


「物が多すぎるから、続きの2間を部屋にしてくれたんだ。そこの扉開けたら寝室」


「寝室には何か珍しいもの置いてないの?」


「姉さん行こうとしないでよ」


「俺は別に構わないが、珍しいものはないな」


「いや、お前も軽々しく寝室に入っても構わないとか言うなよ」


 全く、天然×天然の組み合わせは何かをやらかしそうで恐ろしい。



 しばらくして、俺達は揃って庭に出た。

 リリアナは庭に咲き乱れる花を見て歓声をあげる。


「まあ、綺麗ね」


「案内しようか?」


「あなたたちは剣や棒術の練習するんでしょ。いいわ。一人で歩いてみるわ」


「そうか。じゃあ、しばらくしたらテラスでお茶にするから、飽きたらテラスで待ってて下さい」


「分かったわ、じゃあ後でね」


 俺とジェラルドは、厩舎の近くのいつもジェラルドが稽古をするという場所へ向かい、服を稽古着に着替えると、二人で棒や剣で打ち合いをはじめた。


**********


☆リリアナの視点です。


 私は、二人と別れると歩きだした。花は好きで、家でもよく庭を散歩する。

 歩道を歩いて行く。しばらく赤やオレンジの花が咲いており、次に青や紫の花、また歩くと白や黄色に変わった。


「綺麗だわ」


 庭の中央には見事な噴水があった。

途中の東屋で、貸してもらった本を読んだりしてしばらく休んでから、再びゆっくり立ち止まりながら庭を見て回る。

 庭の手入れをしている庭師を見かけたので、話を聞いたりしながら時間をかけて一周した。


 庭の散策を終えてテラスに近づくと、男性がこちらに背中を向けて座っているのが見えた。ジェラルドの兄弟だろうか? そういえば彼に兄弟がいるかどうか聞いたことがなかった。


 紹介もされないのに男性の所に行くのもどうかと思うが、ジェラルドたちのいる方に行こうにも、彼の視線の先を通ることになるので、とりあえず挨拶することにして近寄った。すると急にその男が振り返った。


「えっ?!」


 それは私にとって、浅からぬ因縁がある男だった。

 初めはジェラルドとソフィアが主人公の話を書いていました。

家族としてただ登場する程度の脇役だったリリアナがどんどんしゃべりだして、そんなリリアナが好きすぎて、どうしてもリリアナに恋愛させてあげたくて書きました。

 

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