朱音のこころ Part①
午前6時30分。
静寂な空間に目覚まし時計のベルが鳴り響いた。
布団の中から手を伸ばし時計のベルを止めたが、自分の意思とは無関係にゆっくりと瞼が閉じていく。
暫くすると階段を登る音が聞こえ誰かがドアを開けた。
「朱音起きなさい、学校に遅れるわよ」
夢の世界に行こうとした私を母が現実へ誘う。
目を擦りながら1階に降りると朝食が用意されていた。
食パンとコーヒー。
これがいつもの朝食。
朝から食欲なんて無いけど、授業中にお腹が鳴るのは恥ずかしいから毎日意地でも食べてる。
15分程度かけて食べ終わり、身支度を済ませて学校に向かう。
午前7時45分。
友人との待ち合わせ場所である自動販売機前に着いたが、そこに友人の姿は無かった。
制服のポケットに手を突っ込んで、冷えた両手を暖める。
「今日はいつもより寒いかも……」
白い吐息を交えながら独り言を吐く。
5分程度待ってると、向から手を振りながら走ってくる女子生徒の姿が見えた。
「ごめん待った?」
と息を切らしながら謝って来たのは、高校に入学して出会った友達の葵。
「寝坊?」
いつもはお洒落に気を使っていて、男子からも人気の高い葵だけど、今日は寝不足なのか目の下に隈がある。
「あはは、昨日遅くまでTV見ちゃって……」
「もしかして、10時からやってたお笑い番組?」
「そうそう!朱音も見た?」
お笑い番組好きの葵は、私の発言に食い気味に話を被せてきた。
「うん、最後まで見てたから私も朝起きれなくて……」
そんな会話をしながら駅のホームに向かい電車を待つ。
午前7時55分。
駅のホームに電車到着を告げるアナウンスが鳴り響く。
ドアが開き電車に乗り込む。
学校までは電車で15分程度。
いつも私達が座っている特等席には他の生徒が座っていた。
「あれ? 葵じゃん」
男子生徒が葵に声を掛けた。
川上彰。
葵とは中学時代からの友人らしい。
私は余り話したこと無いけど、2人は凄く仲がいい。
「おはよう」
葵は淡白に挨拶を返して、特等席に座れなかった私達はドアの前に移動した。
あれ?
いつもは世間話とか冗談言い合ってるのに、今日はいつもと雰囲気が違う。
どこか気まずい空気が2人から漂っている。
喧嘩でもしたのかな?
私は川上君の方を見ると2秒程度目が合ったが、目を逸らされ、彼は窓の外の景色を眺め始めた。
「朱音、学校に着いたら数学の宿題見せて」
葵は下を向きながらそう言った。
「いいけど……、川上君と喧嘩でもしたの?」
川上君に聞こえないように、そっと葵の耳元で聞いてみた。
「別に、大丈夫だから」
学校の最寄駅に到着し、葵は下車した。
短編ばかり描いてたんですが、連載にも挑戦してみました。長期連載は目指して無いので、Part⑤辺りを目安に終わらせる予定です。
次回は「葵のこころ Part①」を投稿します。