第5話「ユウトの魔力」
ユウト達が馬車で城を出ると、そこは大通りになっていて、両脇には多くの商店が並んでいた。
(なんか見たこともないものがいっぱい売っている。今度散策してみるか。)
そんなことを考えながら大通りを30分ほど進むと、門があった。
門は開け放たれており、衛兵などはいないなかった。
(多分平和なんだろう。)
門の外は、草原が広がっていて、牛や馬が放し飼いにされていた。
その先は農耕地帯になっていて、あちこちに民家が散在していた。
(門を出るといきなり田舎の風景だな。のどかだなぁ)
ユウトはのんびりとした気分になって景色を眺めていたが、草原と農耕地帯を抜けると、遠くに大きな屋敷がみえた。
「あのばかでかい屋敷は誰の屋敷ですか?」
メリル先生に聞くと、
「あそこが私たちの家よ」とアリーナが答えた。
遠目には良くわからなかったが、屋敷の前まで来ると、かなり巨大で、屋敷と言うよりほとんど城のようだった。
(これって城だよね。)
ユウトは普通の家を想像していたのに、目の前の大きなお城がメリル先生の家だと聞かされて、すごく驚いていた。
メリル先生によると、今のお城を作るまでは、ここがこの国の王城だったと教えてくれた。
城に着くと、メリル先生が、「歓迎会の前に皆に見ておいて貰いたいものがあるからついてきて。」と言って、城の裏へと向かった。
城の裏には、平原が広がっており、その先は海岸だった。
「ユウトさんはここに来るのは初めてだけど、皆さんは何をするところかわかってますね」
「ユウトさん、ここは魔法の訓練場です。」
「皆さんにここに来て貰ったのは、ユウトさんの魔法の力を知っておいて貰うためです。」
(あ、そうか、私の魔力はかなり強いんだったな。)
「今までは、依代を使っていましたが、これからは本当の肉体なので、その違いを良く認識しておいてください。」
メリル先生はそう言うと、私を見てにっこり微笑んだ。
何をするのかと思えば、ユウトの魔法の力を披露するためにここの来たらしい。
あのゲーム機でやっていたときは、皆より程極端に魔法が強いわけでは無かった。
(今までの話からすると、魔王の魔力はかなり強いらしいので、当然次期魔王の私の魔力もかなり強いんだろうなぁ。)
「それではユウトさんに、あの島の的に向かって魔法を打ち込んでもらいます。でもその前に、比較と言うことで、ヨシマサに弓で射ってもらいましょう。」
メリル先生の指さす先には小島があって、そこには大きな的が設置してあった。
「ヨシマサさん、最大魔力で、あの的を射貫いてください。」
(平原、海岸、海を越えてその先の小島の的なので、かなりの距離があるが、ヨシマサなら当たるだろう。)
「よっしゃ、いっちょう良いとこ見せますか!」
ヨシマサが、矢に目一杯魔力を込めて放つと、矢は一直線射的へと向かい、見事に的を射貫いた。
皆が拍手すると、「どや、こんなん朝飯前だぜ!」ヨシマサは自慢げに胸を張った。
「ヨシマサさんありがとう。では、ユウトさんは、火炎玉であの的を狙ってください」
メリル先生の言った火炎玉は、火の攻撃魔法の中でも威力の小さなもので、あの的まで届くかどうかと言うぐらいの魔法だった。
「メリル先生、火炎玉ではあそこまで届かないかもしれませんが良いんですか?」
「大丈夫です。今のユウトさんなら届きますから、狙ってください。ただ、魔力は極力抑えてくださいね。」
(今までいつも全力だったのに、魔力を押さえてって、難しいことを言ってくれる。)
(まぁ、考えても仕方が無いので、とりあえずやってみるか。)
ユウトは手のひらに火のボールを作って、的に投げつけた。
すると、火炎玉はものすごい勢いで的に飛んでいき、的に当たると大爆発が起こった!
「えええーー、ちょっとこれ・・・・」
的が置かれていた小島は跡形も無く吹き飛んでいた。
(マジカ・・・・)
ユウトも他の生徒達も口をぽかんと開けて目が点になっていた。
唖然としているユウトたちを見渡してから、メリル先生が話し始めた。
「私は以前、パイトス様の魔法を見ているので、その威力については知っていましたが、あなた方は初めてですね。」
「威力の小さな魔法でも、魔王の力があれが、この様に強大な魔法になります。」
「今後の学習方針なのですが、ユウトさんは、魔力を押さえる事を覚えて貰います。覚えるまでは攻撃魔法の使用は禁止です。そして、他の方は、ユウトさんが魔法を使わなくても良いように、しっかりとサポート出来るようになって貰います。」
(魔王なのに、魔法禁止ってなんなんだよ~じゃ、なんで私はここにいるの?)
ユウトはそう考えていると、心を読んだかのようにメリル先生が言いました。
「ユウトさんには、もっと他の重要なことで役立ってもらいます。しかし、それについては追々説明していきます。皆さんお腹が減ったでしょう。歓迎会を始めましょう!」