第12話「交流都市ハーフェン」
翌朝、ユウトが朝食を食べていると、まだ集合時間にはかなり早いが皆が集まってきた。
(皆楽しみにしているんだろうけど、早すぎるんじゃ無いか。)
ユウトとセナは慌てて朝食を飲み込むように食べると、着替えて皆を出迎えた。
「皆随分早いじゃないか。」
「楽しみで眠れなくてね。」ヨシマサがそう言うとア-クは「私は眠れなかったわけではないぞ。ただ少し早く目が覚めてだけだ。」などとそれぞれに早く来た言い訳をしていた。
「みんな楽しみなんだね。じゃ行こうか。」
その時ヘレス先生が見送りに出てきた。
「皆さん、学んだことを忘れずに頑張ってきて下さいね。」
「はい。行ってきます。」
皆が元気よく返事をすると、ユウトが移動門を開き2台の馬車に分乗してズードへと向かった。
そしてズードの街には入らずにそのまま素通りでハーフェンを目指した。
ハーフェンまでは馬車で二時間ほどの距離だが、チーム分けのこともあったので、移動門は使わないことにした。
チーム分けを決めるために、1台目の馬車には、ユウト、アリーナ、アーク、セナ、テレサ、カルマが乗っていた。
しばらく行くとアリーナがチーム分けについて話し始めた。
「チーム名はアルファとベータにしようと思います。アルファのリーダーはユウト、ベータのリーダーはアークで良いと思いますが、どうですか?」
「うん、いいね。」ユウトが同意すると、アークもうなずいた。」
「竜人族の二人は、カルマはアルファ、マルカはベータとします。」
「了解です!」御者をやっているカルマが答えた。
「次にアグネスとテレサですが、後方支援役としてアグネスをアルファ、テレサをベータにしようと思います。ただし、普段は直接攻撃に加わってもらいます。テレサは爆裂魔法もあるので、遠距離攻撃役でもあります。それからヨシマサは遠距離攻撃役でアルファに入ってもらいます。」
アグネスはスティック、テレサは杖を使っていたが、直接攻撃にも参加するため、魔法具の代わりにもなるスモールソードと投げナイフをヘレス先生から教えられていた。
「次にメインの攻撃役ですが、アルファにはユウトが居るので攻撃力は十分だと思いますが、この世界の知識がまだ浅いので参謀と諜報役を兼ねて私が入ります。そしてベータにはケイン、マリア、諜報役としてセナに入ってもらいます。」
「と言うことは、アルファは、私、アリーナ、ヨシマサ、アグネス、カルマの5人で、ベータは、シュヲルツ、ケイン、マリア、テレサ、セナ、マルカの6人だね。うん、良いバランスだと思う。」
ユウトがそう言うとアークもうなずいた。
セナはユウトと別のチームで少し不満そうだったが、基本的には一緒に行動するとアリーナから説明されて納得していた。
一時間ほど進んだところで一旦休憩して、みんなにチーム分けを知らせ、そこからはチームごとに馬車に乗り込んだ。
しばらく進むと平原が終わり、林が見えてきた。
「この平原が終わると、魔法の防壁が終わり、ここからは誰でも入ることが出来る地域となります。」
「ここからは、他国の人も居ると言うことだね。」
「はい。」
アリーナの説明では、この林では他国の人などが入ると、知らないうちに元来たところに戻るようになっているらしい。
ユウト達が30分ほど林を馬車で進むと、やがて林が終わり、平原をしばらく進むとハーフェンの北門に着いた。
「この町では、ユウトが次期魔王だということは伏せるよう国民には通達してありますので、ただの冒険者として振る舞って下さい。」
アリーナはユウトにそう説明して城門を警備している兵士に軽く手を振って街へ入っていった。
街の中はかなり賑やかで、通りの両側は商店がひしめき、多くの馬車がはしり、店を見て回る多くの人々が居た。
イーデル国の産物の他に、異国の産物も売られていて、半分以上はイーデル国では見かけない服装の人達だった。
お昼も近かったので、良い匂いを漂わせている店も多く、思わず馬車を止めたくなったが、我慢してギルドへと向かった。
ギルドは街の中心に有り、多くの人がやってくると見えて、そこそこ大きな建物だった。
ギルドに着くと、まずアリーナとアークが先に建物に入り、受付に到着を告げた。
すると直ぐにギルド長がやってきて、別室で手続きすることになり、アリーナがユウト達を呼びに来た。
ギルドの中に入ると、1階の1番奥が受付になっていて、そのほかの部分は酒場のようになっていた。
部屋を見渡すと1階の壁にはぎっしりと依頼の紙が貼り付けてあった。
ユウト達はギルド長の案内で2階に上がり、応接室に通された。
皆が中に入るとギルド長は深々と頭を下げユウトに挨拶した。
「私はギルド長のカッツと申します。ユウト様、お会いできて光栄の極みでございます。」
「ユウトです。お世話なります。」
「では早速冒険者登録をお願いします。」
アリーナは、そう言うとチーム分を書いた紙をギルド長に渡した。
「準備は出来ていますので、直ぐに手続きを致します。」
ギルド長は紙を受け取ると、一旦部屋を出て直ぐに戻ってきた。
「今手続きをやっておりますが、手続きが終わるまでお食事でも如何ですか?1階で色々食べることが出来ますので、お好きなものをどうぞ。」
皆が「おなかすいたー」と騒ぐので、昼食はギルドで食べることになった。
ケインがここの名物料理を食べたいというので、料理はギルド長に選んでもらった。
出てくる料理はどれも見たことがないものばかりだったが、とても美味しかった。
食事が終わると、冒険者登録は既に終わっていた。
ユウト達は再びギルド長と共に応接室に入った。
アリーナがギルド長にミナレ国の様子を教えて欲しいと言うと、実際にミナレ国で活動している冒険者が帰ってきているので、呼んであると言うことだった。
その冒険者が来るまでの間はギルド長から話を聞いた。
「このギルドには、イーデル国で冒険者となるための訓練を受けたものが多く登録されています。それもあって優秀な冒険者が多いと言うことで、多くの依頼が世界中から来ています。小型の魔獣は現地の冒険者や、兵士達が討伐していますが、オークやオーガなどの大型の魔物は魔獣を引き連れて襲いかかってくるので、現地の冒険者では対処出来ず、この国の冒険者が討伐へと行っています。」
「魔人出現の報告はまだありませんが、ミナレ国からも多くの魔物討伐の依頼が来ております。」
「最近は、ミナレ国やバルド帝国で発生した魔物共がこの地の森に住み着いて村を襲う事もあり、冒険者不足で対処できない状態です。」
「守備隊が居ると思いますが、それでも討伐できないのですか?」
マリアはギルド長に尋ねた。
「最近、西の国バルド帝国が国境に兵を集めており、守備隊はほとんど国境にて警備に当たっております。」
「結構大変な状況なんですね。パイトス様へはご報告してあるんですよね。」
ユウトはギルド長に尋ねた。
「はい、パイトス様がバルド帝国には対処すると言われたと聞いております。」
「魔物共については、実は・・・パイトス様がユウト様がこちらに来られるので頼むようにと言われまして・・・」
するの皆の視線がユウトに集まった。
(早速仕事を用意してくれていたんだな。)
「ミナレ国に入る前の腕試しに丁度良さそうですね。引き受けました。」
「みんな良いよね?」
もちろん皆に異存はなく、一旦この地にとどまって魔物討伐をすることになった。
「有り難うございます。では宿泊は、3階が宿になっておりますので、お部屋を準備させておきます。」
ギルド長はユウト達の部屋を用意するように伝えるために一旦部屋を出た。
みんなは、魔物の討伐が出来ると言うことで、目をきらきらと輝かせて自分の戦う姿を思い浮かべているようだった。
しばらくするとギルド長が一人の男を連れて戻ってきた。
「この者はミナレ国で魔物討伐をしている冒険者のリーダーでニールと申します。」
「ユウト様。ニールと申します。お会いできて光栄です。」
「ニール殿、わざわざおいでいただき有り難うございます。」
「さて、私に何かお聞きになりたいことがあるとのことですが、何をお話しすれば宜しいのでしょうか?」
「この地を出たら、次はミナレ国へ向かおうと思っていますので、ミナレ国の現状など教えていただきたいと思っています。」
「分かりました。では私が見てきたミナレ国についてお話しさせていただきます。」
ニールはそう言うと、ミナレ国が現在どのような状況にあるのかを話し始めた。
「現在ミナレ国は隣国ミレニア王国と戦争状態にあります。戦闘は小康状態で国境線を挟んだ睨み合いの状態ですが、多くの兵士が戦争のために国境地帯にいるため、魔物討伐はもっぱら冒険者がやっております。」
「戦争しているためか、魔物がかなり沸いていて、冒険者だけでは倒し切れていません。また魔物や魔獣が大型化してきており、更に討伐を難しくしています。」
「また街では、多くの者が兵士となって国境地帯へ行ってるため人手不足が激しく、奴隷商人達があちこちの亜人の村を襲い、亜人達をさらって奴隷として売り飛ばしております。」
「私どものチームも先日までミナレ国で大型の魔物を討伐していたのですが、仲間が大怪我を負ったため、この地に引き上げて来ました。」
「我々はこの地の周辺の魔物を討伐した後、タナンへ向かうつもりですが、あまりのんびりもしていられないようですね。ところでお仲間の具合はいかがですか?」
ユウトは負傷したニールの仲間の状態を聞いた。
「かなりの深手です。この地の治癒士では治療が難しく、イーデル国に帰って治療してもらう予定です。」
その時、アグネスがユウトの方を見ていることに気がついた。
(そうだ、アグネスなら治療できるんじゃ無いかな。)
「では、うちのチームの優秀な治癒士に治療させましょう。アグネスお願いします。」
「分かりました。それでは早速行ってきます。」
「おーそれは助かります。有り難うございます。」
ニールはうっすらと涙を浮かべてユウトの手を握った。
ニールとアグネスが部屋を出ると、ユウトはアリーナに作戦を立てるように頼んだ。
すると出て行ってからまだほとんど時間がたっていないのに、アグネスが治療を終えて帰ってきた。
「治療は無事終わったの?」
テレサが心配そうに尋ねた。
「何の問題もなく終わりましたよ。」
「さすがアグネス。世界一の治療士!」
ヨシマサがはやし立てると、アグネスが「世界一は大げさですわ、お母様が居るので、私は2番です。」と言うので、みんなは大声で笑ってしまった。
「じゃ、みんなそろったので、作戦を指示します。」
そして、アリーナが今回の作戦を話し始めた。
「ミナレ国の現状を考えると、あまりのんびりもしていられません。」
「よって、今回は、2チームに分かれて、一気にハーフェン臭h年の魔物どもを殲滅しようと思います。」
「今日は街の西側の魔物をカルマとマルカに探してもらいながら討伐します。明日は街の東側です。」
「尚、直接攻撃の訓練も兼ねていますので大規模魔法は控えて下さい。それから、防御魔法を忘れないように。」
「魔物どもは夜活動するので、出発は今日の日没。日暮れ前にここに集合して下さい。」
皆は一旦用意された部屋に入り、時間まで自由に過ごした。
ヨシマサとケインとカルマは町中の料理の匂いが気になるらしく、街の屋台を見に行った。
女性達はそろって大浴場へ行き、ユウトとアークはお腹もすいていないので、シャワーを浴びてソファーでゆっくりくつろぎながら時間が来るのを待った。
日没が近づき、ユウトが応接室へ入ると、既に全員準備を整えて待っていた。
「みんな早いな。じゃ行こうか。」
ユウト達はギルド長に魔物討伐に出かけることを伝えると、西門へ向かった。




